島根のむかし話/島根県小中学校国語教育研究会編/日本標準/1976年
あるところに、だらじ(ばか)の若者がいて、婿入りすることになった。わかもんのかかさんは、「よめさんのところでカニがごちそうにでるかも知れん。そしたら、ふんどし(カニの殻)はずいて、ぜんの先へやっちょいてくわしゃいよ」と、教えてやったげな。
婿入りして、ほんに、大きなカニがぜんの上にでちゃげで、かかさんからいわれたように、ゴソゴソ、自分のふんどしをはずいて、ぜんのうえにすえおいて たべたげな。
よめごさんが、「おまえ、なにするか」ときいたら、かかさんがおしえてくれたことを話した。
おどろいたよめさんが、「お前のふんどしではない、カニのふんどしのことだがね」というと、ふんどしをごそごそ自分でして、なにもなかったように、カニのふんどしをはずいて、クワったと。
”ばか”というと、どうにも抵抗があるが、”だらじ”といわれると、すんなりはいってくる話。