どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

「ブレーメンの音楽隊」と類似する昔話

2016年12月01日 | 昔話(日本・外国)

 グリムの「ブレーメンの音楽隊」は歳をとって役に立たなくなったロバ、イヌ、ネコ、オンドリがブレーメンの音楽隊に入るため一緒にでかけますが、結局はブレーメンの町にはいかず、泥棒の家にいすわります。

 木下順二訳のジェイコブスのイギリス民話選(ジャックと豆のつる/木下順二訳/岩波書店/1986年第11刷)の中に「ブレーメンの音楽隊」と内容がおなじ「ジャックの運さがし」があります。

 「ジャックの運さがし」には、ねこ、犬、やぎ、牡牛、おんどり、そしてジャックという男の子がでてきます。
 ジャックが運だめしにでかけ、動物たちと次々にであい、一緒に泥棒の家になだれ込みますが、なだれこみのシーンやそのあとに様子をみにきた泥棒を動物たちがこっぴどくやっつける部分は、ブレーメンの音楽隊と同様です。
 
 木下訳は、現在の時点で少しひっかかる部分もありますが、味のある訳になっています。
 ジェイコブスはグリム晩年のころに活躍したと紹介されています。
         

 ベルギーの「ブラッセルの音楽隊」という話が(子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎編/実業之日本社/1964年初版)にあり、「ブレーメンの音楽隊」を思わせるお話という注がつけられていますが、そのものです。
     

白いヒツジとなかまたち(世界むかし話8 イギリス編 おやゆびトム/三宅忠明・訳、絵・クエンテイン・ブレイク/ほるぷ出版/1988年)は、イギリスの昔話ですが、白いヒツジ、雄牛、イヌ、ネコ、おんどり、ガチョウがクリスマスのごちそうにされそうになってにげだし、泥棒の家に入り込んでいついてしまうことに。

 泥棒の家にはいるとき、6匹もいるので、叫び声が楽しい。

 「ギャオーガーモーワンコケッーガーガー ギャオーガーモーワンコケッーガーガー」。  
 
 これだけ賑やかだと、たしかに泥棒もびっくりして逃げ出すのがよくわかります。     

 これはスコットランドの話。2014年独立住民投票で話題に。この際、イギリスはイングランド、ウエールズ、北アイルランドとともに4つの地域で構成されていることが認識させられたところである。

 「ブレーメンの音楽隊」にでてくるブレーメンは、ドイツ10番目の都市で、市庁舎横に音楽隊の銅像があり、写真でみることができました。

 ところで、品川弥二郎の生涯をえがいた「志士の風雪」(古川薫 文芸春秋)の中に、青木周蔵がプロイセン貴族の長女エリザベート・フォン・ラーデとブレーメンで結婚式(1877年)を挙げたことが紹介されています。

 青木周蔵は長州藩の藩医の養子となってプロイセンに留学。その後、駐独公使や外務大臣、駐米大使を務めた外交官。日本が近代国家として歩み始めた明治時代、日本人と外国人との結婚は極めて少ないながらも存在し、1872年に行われた長州藩のイギリス留学生南貞助とイギリス人女性ライザ・ピットマンとの結婚が、国際結婚の第一号であるとされる。

 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が、1891年に、松江士族の娘・小泉セツと結婚しているが、これにくらべても青木周蔵の結婚は当時珍しかったであろう。

 もうひとつ、 ブレーメンには、現在大迫勇也が所属するサッカーチーム「ブレーメン」がある。「ブレーメン」は、サッカーだけでなく、ハンドボール、陸上競技、チェス、卓球、体操部門などの総合スポーツクラブ。 

 これとは別に、ブレーメンが登場する昔話に、「陽気なぺてん師」(オクスフォード世界の民話と伝説5 ドイツ編/塩谷太郎・訳/講談社/1978年改訂第一刷)がある。

 陽気で大ウソつきで、ペテン師というテイルという男の物語。ドイツの昔話で、地名がでてくるのは当たり前であるが、ほかの昔話に登場する地名がでてくるのは、それだけで親近感がある。


 日本にも「あてのない旅」(日本の民話1 動物の世界/瀬川拓男・松谷みよ子・編著/角川書店/1973年初版)という「ブレーメンの音楽隊」に にた話があります。

 飼い主から役にたたないと目をつけられた馬が、飼い主のところから逃げ出します。
 途中あったのは、これも飼い主から見放された犬、猫、鶏。

 「ブレーメンの音楽隊」では泥棒の家を占領して、そのまま居座りますが、先の展開はやや違っています。

 日本版では、馬の背に犬、犬の背に猫、猫の背に鶏が乗って歩いていると、泥棒にであい、お金をせしめます。
 ところが、一行はにわかに大金持ちになったので、これからも馬の背に犬、犬の背に猫、猫の背に鶏が乗って歩くにかぎるとそのまま旅を続けます。

 すると、途中旅の見世物師につかまって、それからはろくなものも食わされず、毎日毎日見世物にされてしまいます。

 グリムが日本で翻訳されたのは1887年が最初といいます。
 話し手の方が、どこかでグリムの話を翻案したもののようですが、オチが少しつらいものになっています。                


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