カナリア王子/イタロ・カルヴィーノ・再話 安藤美紀夫・訳/福音館文庫/2008年初版
まま母から森の奥の城にとじこめられた王女。立派な部屋、好きなものをすきなだけ食べたり飲んだりはできるのですが、城の外に出ることは禁止されていました。
王女の楽しみは窓からみえる光景だけ。
ある日、森の小道を王子がとおりかかり、窓にたたずむ王女を見つけます。二人はお辞儀をしたり、手を振ったりしてあいさつ。
そのあとも王子は、城にやってきますが、二人の間ははなれすぎていて、ことばをかわすことができないまま。
でだしはグリムの「ラプンツェル」です。二人の距離がどうやって縮まっていったのか?
二人を結びつけたのは、魔法使いのマスカがくれた古い本。本は「あたりまえに前からめくると人は鳥になり、うしろからくっていくと鳥は人になる」という魔法の本。
王子がきて、本をめくると王子はカナリアに。すぐに二人は意気投合します。
それでもまま母の女王の目はだませません。女王は一計を案じ、王女がいつも座る出窓の座布団に、何本ものピンをうずめます。
それとはしらずにカナリアになった王子が、座布団の上にとまると、カナリアの胸にはピンが突き刺さり、きいろい羽が血で真っ赤にそまります。カナリアは、どうやらこうやら風にのって、ふらふら外に飛び出しますが、すぐに土の上のおちてしまいます。
人間にもどった王子でしたが、おきあがることもできず、たんかにのせられて城にはこびこまれます。 医者がさじをなげた王子。王さまは王子の傷をなおした者に、どっさり宝物をやろうと、おふれをだしますが、そんな人は誰も見つかりませんでした。
一方、王女は、敷布を細く切り開き、それをつなぎ合わせて長い長い一本の綱をつくり、高い塔の窓から、下へおります。
真っ暗な夜に、どこから口笛がきこえてきて、四人のマスカの話から、王子を助ける方法をきいた王女は、古い医者の服とメガネを買って、王さまの館にでかけます。
粗末な身なりでしたが、王さまは「わしのむすこが、これ以上悪くなることはないだろう」と、診察するのをゆるします。
王女は、マスカから聞いたように王子の部屋のすぐはずれる床板をさがし、その中にあった小さな瓶の薬を王子の傷口にぬると、王子のからだはもとどおりになります。
ここで王女は、すぐに正体をあかさず、王家の門のついた王子の盾、王子の旗、胸のところに血のついた王子の服をもらって、立ち去っていきます。
それから三日後、王子が城をとおりかかったとき、王女が本のページをめくると王子はまたカナリアに。
死ぬほどひどいめにあった王子は、カナリアから人間にもどると、王女をののしります。
しかし、盾や旗、血のついた服を見せられ、ピンをさしたのは、女王のせいだと知った王子は、王女の足元にひざまづいて許しをもとめます。
身分が違うと二人の結婚を許さなかった王さまでしたが、二人の堅い決意を知って結婚を許すと、結婚式には王女の父の王さまとまま母もやってきます。
さてまま母の仕打ちを知った父の王さまはどんな態度をとったでしょうか?
じつは、訳では王女がむすめと訳されています
タイミングよく魔法使いが出てきて、二人の仲立ちをしたり、王子を治す方法を知ることができるのは昔話の世界です。
鳥や人間にかわるのは王子だけ。城から抜け出すとき王女が鳥になるという選択肢はなかったのでしょうか。そして、昔話で、鳥といえばカラスが多いような気がしますが、カナリアというのははじめてです。
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