どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

きたかぜとたいよう

2016年04月08日 | 絵本(外国)

 有名なだけに絵本も多いようで、イソップの他の話ものっている絵本も含めると相当数になりそうです。
 アマゾンにのっているいくつかをみてみました。



きたかぜとたいよう  

         きたかぜとたいよう/作:イソップ童話 絵:バーナデット・ワッツ 訳:もきかずこ/西村書店/1993年初版

 バーナデット・ワッツ絵とありますが、絵だけでなく、文もご本人が手をくわえています。
 イソップを直接訳したものは短いのですが、大型の絵本をまるまる一冊つかって、北風の吹き付ける様子や太陽がてらす様子が丁寧に展開されて、文もふくらんでいますから、語るとすると適当な長さです。

 のどかな田園風景がひろがり、お城があり、かもめの飛ぶのを見上げているうさぎがでてきて、海には船がみえます。

 年中、年長さんなら十分楽しめそうです。      


春の日や庭に雀の砂あひて

2016年04月06日 | 絵本(外国)


    春の日や庭に雀の砂あひて/作:リチャード・ルイス 絵:エズラ・ジャック・キーツ 訳:いぬい ゆみこ/偕成社/1999年初版


 俳句絵本?  なに?
 と思ったら、英訳された俳句の一部をアメリカの作者が選び、絵もアメリカ人がかいた絵本なのですが、絵は日本的なコラージュにできあがっています。

 知らない俳句が多く、外国の方から俳句の面白さを教えられました。

 俳句の英訳があり、さらにそれが翻訳されているのですが、英語にも興味がもてそうです。

 例ですが・・・

 (一茶)おれとして にらむくらする 蛙哉(かわずかな)

 (英訳)The frog Is having a staring match With me.

 (英訳の訳)かえるが ぼくと にらめっこ

 生き物を通じて季節感がでている俳句が選ばれているようです。

 かたつむり、きりぎりす、かえる、こがも、すずめ、ひばり、ふくろう、こうもり、犬、ちょうちょう、さぎ、ほととぎす、ほたる がでてきます。         


ラプンツェル

2016年04月04日 | グリム

 グリムの「ラプンツェル」は、魔女、娘、王子がでてきて、あまり長くもなく、語られる人も多いようです。

 語り手による楽しさもありますが、ぜひ聞いてみたいのは矢川澄子訳のもの。矢川訳は味がある訳という感じです。

 例えば、冒頭の子どもがいない夫婦に子どもがさずかるところ.

 「やっと子どもをさずかることになり、妻のおなかがだんだん大きくなってきました。」佐々木田鶴子訳・岩波少年文庫
 「神さまもようやくのぞみをかなえてくださるおつもりか、おかみさんは身重になったのだった」矢川澄子訳

 王子が塔のなかに、髪をのぼって、娘にあいにいくと、そこにいた魔女がいうセリフ。
 「ラプンツェルは、もういないのさ。おまえのようなわるいやつは、もう二度と会うことがないだろうよ」佐々木田鶴子訳

 「いとしい奥方をつれにおいでかね。ところがきれいな鳥さんはもう巣にゃいない。もう唄もうたわない。猫にとられちまったのさ。お猫さんたら、あんたの目玉をほじくりがっててねえ。ラプンツェルはもう手に入らない。二度とふたたびあの子にゃ会えるものかね」矢川澄子訳

 矢川訳では「ラプンツェルというこまかいサラダ菜の青々と生えているのが目にとまった」と話の流れでラプンツェルを説明しています。「おはなしのろうそく」の「チシャ」、こぐま社版は、ラプンツェルをそのまま使い、注釈をそえていますが、矢川訳が一番しっくりきそうです。
 
 ラプンツェルが、塔の下にたらす髪の毛の長さ、矢川訳では13m、「おはなしのろうそく」では9m、こぐま社版では、20エレとして注釈を、また40フィートとしているものもあります。
 語るということからすると、メートルとした方がわかりやすいと思いますが、どうでしょうか。

 筑摩書房の野村訳に「エレ」は、人間の腕の長さをもとにした尺度で、60~80㎝という注釈がありますから、髪の長さは12mから16mということのようです。

 さらに矢川訳に、「ゴテルばあさんよりよりもあたしを大事にしてくれそうだと思ってね」という場面があって、このゴテルばあさんというのが突然でてきて、違和感がありましたが、野村訳に、ゴテルというのは固有名詞ではなく「女の名付け親」をさす普通名詞と注釈があって、疑問が解消されました。
 グリムの訳はたくさんあるので、あたってみることいろいろ発見があります。
  
 2000年に発行されている東京子ども図書館の愛蔵版「おはなしのろうそく」のなかに、「王子はまったくのめくらとなり、もりの中をあちこちさまよいあるきました」というシーンがあります。めくらは放送禁止用語。少し(大分?)気になっていましたが、その後に訂正されていることがわかりました。

      
   ラプンツェル/ねずの木 そのまわりにもグリムのお話いろいろ/L・シーガル M・センダック選/矢川澄子・訳/福音館初書店/1986年初版 
   ラプンツェル/ついでにペロリ 愛蔵版おはなしのろうそく3/東京子ども図書館編/2000年初版    
   ラプンツェル/子どもに語るグリムの昔話3/佐々梨代子・野村 ひろし 訳/こぐま社/1991年初版
   ラプンツェル/グリム童話集1/相良 守峯 訳/岩波少年文庫/1997年
   ラプンツェル/完訳 グリム童話集1/野村 ひろし 訳/筑摩書房/1999年初版


 絵本版の「ラプンツェル」では、ラプンツェルと王子が塔から落とされる順番が逆で、さらに魔女がどうなったかにもふれられています。(髪の長さは15m)
 そして、ラプンツェルが双子を産んだこともでてきません。 

ながいかみのラプンツェル  


 ところで、矢川澄子訳で何回か読み直しています。
 場面をイメージしながら覚えなさいというので、いろいろと妄想。

 昔話ではこまかな描写がないので、想像するしかありませんが、ラプンツェルが閉じ込められた森と塔はどんな様子だったろうか。高さは地上にたれる髪の長さがヒントになります。

 ラプンツェルが閉じ込められた塔のなかの灯りは、トイレは?

 魔女がラプンツェルをさらっていったのはなぜ? 一人暮らしの魔女がさびしさをまぎらわすため?
 魔女がラプンチェルを塔に閉じ込めてしまったのは、下世話に言うと虫がつかないようにするため?
 でも、この魔女、子育てに失敗しています。

 魔女が、髪の毛をつたってのぼっていくのは、ラプンツェルの様子をみにいくことだけなのか、はたまた、食事をもっていってあげたのか。

 この魔女、わざわざ髪をつたわって塔にのぼるというは、魔法は使えないようなので、どんな怖さがあったのか想像するしかなさそう。

 ラプンツェルは王子の最初のよびかけに髪をたらすが、魔女と区別がつかないのは不自然なので、もしかして魔女以外の誰かを期待していたのではないか。

 しかし、この話、「成熟の過程を描いたもの」というわりには、簡潔で、もう少し別な展開があってもよさそうな話。長ければいいというものでもないが。

 イギリスのルース・マニング=サンダース著(ラプンゼル/世界の民話館 魔女の本/西本鶏介・訳/ブッキング/2004年初版)は、この話が大分ふくらんでいるのが特徴。

 魔女が、ラプンチェルを連れ去る場面で言うセリフ。
 「これかからも子どもはたくさんうまれるのだから」とあって、この夫婦には、子どもが次々に生まれるという場面がでてくる。
 ラプンチェルが絹のはしごを編んでいるはずが、グリムでは、この梯子はでてこない。サンダースは、この梯子を発見する場面をくわえている。
 王子が塔から身を投げ、茨で目が見えなくなる場面では、枯葉の山に落ちるとあります。

 ところで、「ラプンツェル」は、17世紀末のフランスの女流作家の恋愛小説を18世紀のドイツの作家が翻訳したものが採用されているという(昔話入門/小澤俊夫編著)。

 また、太宰治の「ろまん燈籠」は、五人の兄弟が共同して小説を完成させていく話ですが、このなかでラプンツェルが素材となっていました。太宰治の想像力みたいなものがでていて、両方を読みくらべてみると楽しい。


フェリックスの手紙 小さなウサギの世界旅行

2016年04月03日 | 絵本(外国)
フェリックスの手紙 小さなウサギの世界旅行  

    フェリックスの手紙 小さなウサギの世界旅行/作:アネッテ・ランゲン 絵:コンスタンツァ・ドロープ/ 訳:栗栖 カイ/ブロンズ新社/1994初版

 

 ソフィ大事にしていたうさぎのぬいぐるみフェリックスが夏休みにいなくなってしまいます。
 赤ちゃんのときから、大きくなってベッドで眠るようになっても、ずっとずっと一緒だったフェリックス。

 悲しみにつつまれていたとき、ソフィあて封筒がとどきます。
 裏返してみるとフェリックスからの手紙でした。
 ロンドンから届いたものでした。
 封筒をあけてみると、へたくそな字(でもあったかい内容です)で、変な帽子をかぶった男の人のことをかいていました。多分、お城を警備している警察官のことです。

 封筒は実物大のものが、貼り付けられています。
 図書館からかりてきたとき、職員の方が、封筒をあけて中身を確認していたので、きになっていたのですが、手紙を読んで納得しました。

 このあとパリ、イタリア、カイロ、ケニア、ニューヨークの各地から手紙がとどきます。

 いずれも、実物大の封筒が貼り付けられていて、凝った絵本です。

 いろいろな絵本を見てきて、大抵のことには驚かなくなりましたが、封筒を貼り付けるのは大変そうです。

 封筒をあけて、手紙を読まなければいけないのですが、楽しい作業です。      


悪魔の花よめ・・アメリカ

2016年04月02日 | 昔話(北アメリカ)

   大人と子どもための世界の昔話17 アメリカのむかし話/藤井健夫・編訳/偕成社/1991年初版


 アフリカ系アメリカ人の昔話というのですが、ヨーロッパに多く見られるタイプです。

 アメリカ南部の大きな農園の美しい娘、マリエッタ。
 求婚者が次から次へとやってきますが、両親は自分よりもっとお金持ちでなければと、いつもノーという返事。
 マリエッタの家は、宮殿のようで宝物にあふれ、家にある品物はすべて金銀でつくられたものばかり。

 そこへあらわれたのは、金と宝石でできた馬車に乗った、ハンサムで金持ちの紳士。

 この紳士、じつは・・・。悪魔の王サタン。
 マリエッタの両親があまりによくばりなので、それならばというので、結婚を申し込みにやってきたのでした。
 やがて結婚式をおえて、悪魔のところにいくのですが、悪魔の家は、山の中。
 悪魔の妻はみにくい老婆で、美しい娘をみて、追い出そうとします。

 やがて、老婆にいうとおりにして、悪魔のところから逃げ出すマリエッタ。

 逃げ出す方法もいろいろで、この話では、牛にのって逃げ出します。
 途中レンガのかけらを投げると黒々した壁があらわれ、シチメンチョウのたまごをなげると川があらわれます。
 なんとか逃げ出し、家に帰りついたところに悪魔が追いついてきて、なぞなぞのやりとりがはじまります。

   「雪より白いものは何だ。
    雪より白いものは何だ。
    つめたい井戸におちたのはどいつだ。」

   「どんな井戸よりふかいのはどこだ。
    どんな井戸よりふかいのはどこだ。
    つめたい井戸におちたのはどいつだ。」

   「草よりあざやかなみどりはなに。
    草よりあざやかなみどりはなに
    つめたい井戸におちたのはどいつだ。」

 マリエッタはこの問いに見事にこたえるのですが・・・。

 悪魔のところには、足の速い牛と、おそい牛がいるのですが、足の速い牛は見張りがきびしく、、マリエッタは足の遅い牛にのって逃げ出すので、足の速い牛に乗った悪魔に追いつかれます。     

 娘の結婚が親の考え次第というあたりが、時代を反映しています。

 見かけだけで判断すると本当のことが見抜けないことをやんわりと皮肉っているようにも思えます。


春よこいこいホーホケキョ

2016年04月01日 | 創作(日本)
春よこいこいホーホケキョ  

    春よこいこいホーホケキョ/作:宮川 ひろ 絵:渡辺 有一/ポプラ社/2004年初版

 

 山の村のちいさな小学校。

 七人の一年生が、かわるがわる風邪をひいて、ようやく顔をそろえます。
 今日は節分、1年生だけに、うれしいことのある日です。

 山の村では、ずっと昔から豆に家族の顔をかいて、節分の日に「かぜかみさま」をおくって、春をむかえてきました。
 みんなは、自分や弟、おじいちゃん、犬のタロー、ハムスターなど顔を豆にかきます。
 そして、籠にいれて、お地蔵さまの前に送ります。
 それから鬼の面をかぶって、「鬼の宿」にでかけます。
 けん一お爺さんの鬼の宿で、餅つきし餅をほおばり、豆腐田楽を夢中になってたべ、帰りにはポップコーンにするトウモロコシをもらいます。
 みんなは、フライパンで、ポップコーンを作ります。
 そして、先生がもってきた梅の枝に、ポップコーンをボンドでつけて、花を咲かせていきます。

 「鬼の宿」は、村の家が毎年交代でつとめますが、呼んでもらえるのは一年生だけ。

 小学校では、立春には村のおじいさんやおばあさんをお招きして給食を食べます。


 すこし時期がすぎましたが、節分の村の素敵な行事です。

 宮川さんの作品は、どれも子どもと先生の距離が近くて、理想的な教育のありかたを考えさせてくれるものばかりです。語るのはむずかしそうですが、一度、読み聞かせしたいものです。