大人と子どもための世界の昔話17 アメリカのむかし話/藤井健夫・編訳/偕成社/1991年初版
アフリカ系アメリカ人の昔話というのですが、ヨーロッパに多く見られるタイプです。
アメリカ南部の大きな農園の美しい娘、マリエッタ。
求婚者が次から次へとやってきますが、両親は自分よりもっとお金持ちでなければと、いつもノーという返事。
マリエッタの家は、宮殿のようで宝物にあふれ、家にある品物はすべて金銀でつくられたものばかり。
そこへあらわれたのは、金と宝石でできた馬車に乗った、ハンサムで金持ちの紳士。
この紳士、じつは・・・。悪魔の王サタン。
マリエッタの両親があまりによくばりなので、それならばというので、結婚を申し込みにやってきたのでした。
やがて結婚式をおえて、悪魔のところにいくのですが、悪魔の家は、山の中。
悪魔の妻はみにくい老婆で、美しい娘をみて、追い出そうとします。
やがて、老婆にいうとおりにして、悪魔のところから逃げ出すマリエッタ。
逃げ出す方法もいろいろで、この話では、牛にのって逃げ出します。
途中レンガのかけらを投げると黒々した壁があらわれ、シチメンチョウのたまごをなげると川があらわれます。
なんとか逃げ出し、家に帰りついたところに悪魔が追いついてきて、なぞなぞのやりとりがはじまります。
「雪より白いものは何だ。
雪より白いものは何だ。
つめたい井戸におちたのはどいつだ。」
「どんな井戸よりふかいのはどこだ。
どんな井戸よりふかいのはどこだ。
つめたい井戸におちたのはどいつだ。」
「草よりあざやかなみどりはなに。
草よりあざやかなみどりはなに
つめたい井戸におちたのはどいつだ。」
マリエッタはこの問いに見事にこたえるのですが・・・。
悪魔のところには、足の速い牛と、おそい牛がいるのですが、足の速い牛は見張りがきびしく、、マリエッタは足の遅い牛にのって逃げ出すので、足の速い牛に乗った悪魔に追いつかれます。
娘の結婚が親の考え次第というあたりが、時代を反映しています。
見かけだけで判断すると本当のことが見抜けないことをやんわりと皮肉っているようにも思えます。