大阪「第5波」で懸念される中等症の増加、医師「人生で一番苦しい」…8月下旬に5千人超予測
2021年8月2日 (月)配信読売新聞
新型コロナウイルス感染の「第5波」で懸念されるのが中等症患者の増加だ。海外では重症扱いされることもあり、専門家は「甘く見てはならない」と警鐘を鳴らす。大阪府では最悪のペースで感染者が増え続けた場合、8月下旬には入院が必要な軽症・中等症の患者が、府の確保病床をはるかにしのぐ5000人超に達するとの予測もある。府は病床の積み上げを目指すが、先行きは不透明だ。
「大阪は『第5波』のまっただ中。ワクチンがほとんど行き届いていない40、50歳代に感染が広がり、中等症病床が埋まりつつある」。7月30日の大阪府の対策本部会議で、吉村洋文知事は危機感を訴えた。
大阪府の1日の新規感染者は890人で先週の日曜日(471人)の2倍近くに増えた。患者は重症が77人と1か月前に比べて20人の増加だった一方、軽症・中等症は1028人と2.8倍に急増している。
「第4波」(3月1日~6月20日)では、軽症・中等症の患者は60歳以上が6~8割を占めたが、高齢者へのワクチン接種が進むにつれて若い世代が目立つようになり、7月下旬には50歳代以下が6~7割になっている。
「『重症以外は怖くない』と思うのは大きな間違いだ」。専門医らは警告する。
コロナの症状は「軽症」「中等症I」「中等症2」「重症」に分類され、中等症Iは呼吸不全はないが、息切れや肺炎が見られ、入院が必要となる。中等症2になると呼吸不全で肺炎が広がり、酸素マスクでの酸素投与を要する。悪化した場合は、口から気管に管を入れて酸素を送る人工呼吸器の装着が検討される。
医師でりんくう総合医療センターの 倭正也・感染症センター長によると、中等症2の一部は米国などでは重症扱いという。「医者の立場でわかりやすく言い換えれば、中等症2は重症。重症は重篤のイメージだ」。倭医師は説明する。
米ジョージタウン大の安川康介医師はツイッターで、一般の人と医師で症状のイメージに 乖離かいり があるとし、中等症は「多くの人にとって人生で一番苦しい」と表現している。
後遺症も報告されている。治療が遅れると、肺が硬くなって呼吸機能が落ちる「肺障害」となり、退院後も息苦しさが数か月続く。他に全身 倦怠けんたい 感や味覚・嗅覚障害、脱毛などが確認されている。 三鴨みかも 広繁・愛知医大教授(感染症学)は「後遺症になるメカニズムの多くは未解明だ。中等症を決して甘く見てはいけない」と訴える。
倭医師は「発熱やせきの症状があればすぐ検査を受け、感染が判明したら早期に治療を始めることが重要だ。ワクチン接種できる環境にある人は、接種を前向きに検討してほしい」と話している。
大阪府は軽症・中等症の入院患者のため、1日時点で2510床の病床を確保しているが、今月上旬にも不足する可能性があり、増床を急いでいる。
府の試算では、医療崩壊を招いた「第4波」と同じペースなら、入院を要する患者のピークは今月23日に2474人。感染力が強いインド型(デルタ型)の流行を加えた最悪のケースでは、同5日に2637人、同24日にピークの5123人に達する。
しかし病床の追加は容易ではない。府は6月以降、計3000床を目標とし、改正特措法に基づいて呼吸器内科などのある病院に要請しているが、断られるケースが多いという。増床を求められた堺市内の総合病院は「もう限界。これ以上追加すれば、他の患者が入院できない」と話す。
府は今後、病院名を公表できる改正感染症法での要請を検討するが、吉村知事は「それでも病院は拒否できる。お願いベースでしかないのが実態」と難しさをにじませる。入院が困難な場合、療養先のホテルから医療機関に点滴治療を受けに行く対応も検討している。