ジェネリック品薄、薬局悲鳴 新潟県内 医療現場、感染禍で二重苦
2021年8月16日 (月)配信新潟日報
ジェネリック医薬品(後発薬)が全国的に品薄となっている。後発薬メーカーの不正などで供給が減っていることが原因。新型コロナウイルス禍の陰で影響が広がり、県内の薬局や医療現場は対応に追われている。
「次は骨粗しょう症の薬を出せないかもしれません」。乳がん患者会「あけぼの新潟」代表の内藤桂子さん(64)=新潟市西区=は8月初め、薬局でこう告げられた。4週間分を処方されたものの、次は薬をもらえない可能性がある。
乳がん患者は、がん治療に使うホルモン剤の副作用で骨粗しょう症になることがある。内藤さんも3年前に診断され、後発薬を服用してきた。「代わりの薬も足りないと言われた。骨粗しょう症が進んでしまうのでは」。がん治療をやめるわけにもいかず、不安を募らせる。
メーカーでつくる日本ジェネリック製薬協会(東京)によると、不正により一時、業務停止命令を受けた大手の日医工(富山市)などで現在も後発薬の供給が滞っているほか、他社の生産も追い付いていないという。
ある県内調剤薬局の担当者は「全般的に品薄状態」と話す。他社の後発薬や先発薬に切り替えているが、先発薬は割高で患者の負担額が増す。後発薬は同じ成分でもメーカーごとに見た目が異なる場合がある。担当者は「ちょっとした変化でも不安になり、飲まなくなる人がいる。患者に説明が必要で、仕事が一つ増えた」と語る。
一部で品薄が解消されつつある薬もあるというが、安定供給にはほど遠い。特に骨粗しょう症の薬は日医工以外のメーカーの生産トラブルも重なり、先発薬まで不足する状況に。「薬局がどう工夫しても、ないものはない」と早期の供給増を望む。
製薬業界の事情もある。これまでの取引先を優先し、新規の注文は断らざるを得ないという。関係者は「生産しようにもすぐにはできない。(限られた量の中で)やり繰りするしかない」と苦しげだ。
影響は医療現場にも広がる。下越地方のある病院では高血圧や胃潰瘍の薬、下剤や抗菌剤などが十分にそろわない。長引く新型ウイルス対策と合わせて「二重苦だ」と担当者。「卸会社から急に欠品の連絡が来る。多くの病院も不安で、早めに発注して買い占めのような状態になっているのでは」とみる。
県薬剤師会の荻野構一会長は「不足する薬の手配など、薬剤師は普段の業務以外に時間を割かざるを得ない。解消のめどが立たず、疲弊している」と強調。ジェネリック製薬協会に対し、早期の安定供給と情報提供を強く求めている。◎厚労相「代替薬活用を」
ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーで不祥事による業務停止処分が相次いだ問題で、田村憲久厚生労働相は13日までに、薬の生産が止まった影響で各地の薬局などで在庫不足が目立っているとして「いつもと違う薬ということで医療現場では混乱はあるだろうが、代替薬を有効活用するなどの周知をしていく」と述べた。
記者会見で田村氏は、一部メーカーで製品出荷を長期的に停止、縮小していることに関し「しっかりと製造工程、安全性が確認できれば随時生産していただきたい」と話した。
<後発薬メーカーの不正>小林化工(福井県あわら市)で昨年12月、爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分の混入が判明。各地で健康被害が相次ぎ、因果関係は不明だが2人が死亡した。日医工(富山市)でも国の承認外の手順による製造が明らかになった。両社は今年2~3月、それぞれ福井県と富山県から業務停止命令を受けた。