コロナ感染「制御不能な状況」も、政府はロックダウン導入に慎重
Isabel Reynolds、広川高史 - 2 時間前
(ブルームバーグ): 東京五輪が閉幕した日本では新型コロナウイルスの感染が過去最悪のレベルで拡大している。自治体や自民党内などから欧州各国が行ったロックダウン(都市封鎖)のような強制措置を伴う対策の検討を求める動きもあるが、有権者の反応が不透明なこともあり、衆院選を目前に控える菅義偉首相は現時点で慎重な姿勢を崩していない。
昨年からのパンデミック(世界的大流行)で欧州各国が私権制限を伴う対策に踏み切ったのに対し、日本は不要不急の外出自粛を呼び掛けるなど強制力のない方法で臨んだ。人口が半分(6753万人)の英国は死者13万人、感染者600万人余りを記録しているのに対し、日本(1億2686万人)の死者数は約1万5000人、感染者数は約100万人だ。
局面が変わったのは各国で猛威を振るうデルタ株の感染拡大だ。東京に4回目の緊急事態宣言が発令されてから1カ月が経過したが、13日の新規感染者数は5773人、重症者数も227人といずれも過去最多を更新した。全国の感染者数も1万人超の日が続いている。
東京で5773人の新型コロナ感染確認、過去最多-重症者も最多更新
最大級・災害級の危機
国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、モニタリング会議で、「制御不能な状況」と指摘。小池百合子知事も13日の記者会見で「今まさに最大級、災害級の危機を迎えている」と話した。
政府は一連の緊急事態宣言で都道府県知事に対し事業者を規制する権限を与えたが、個人の活動を縛る仕組みはない。最近は飲食店に対し、アルコールの提供停止と午後8時までの営業時間短縮に重点的に取り組んできた。命令に違反した場合は30万円以下の過料を科す罰則規定もあるが、従わない飲食店も続出した。
全国知事会は1日にまとめた緊急提言で、デルタ株による感染再拡大が全国の多くの地域で急速に進んでいると指摘。徹底した対策を行うため、緊急事態宣言の機動的な発動や運用改善、さらに強い措置となる「ロックダウンのような手法のあり方」についても検討するよう求めた。自民党の下村博文政調会長も4日、BSフジの番組で緊急事態宣言について「だんだん効果がなくなりつつある」として、罰則を伴う外出禁止令の法制化を検討すべきだとの認識を示した。
JNNが7、8両日に行った世論調査によると、4回目となる現在の宣言について「あまり効果はない」「全く効果はない」との回答は合わせて76%。東京都などで実施している措置は「緩すぎる」とした人は49%、「妥当だ」が41%だった。
憲法の制約
占領下に制定された憲法が第22条で移転の自由を保障していることも、日本で強制的な措置に踏み切る障害とされてきた。一方で憲法は、国が公衆衛生の向上および増進に「努めなければならない」とも規定している。弁護士の永井幸寿氏は現行憲法下でもロックダウンの導入は可能だが、強い措置であることから法律の制定も必要となり、最後の手段として残すべきだと指摘する。他の方法をまずは模索すべきだとの考えだ。
政府は当面、現行法の枠組みで対応する方針だ。菅首相は7月30日の記者会見で、欧州など行われたロックダウンに関して解除後に見られる再度の感染拡大で「なかなか出口が見えなかった」と指摘し、日本では同様の手法は「なじまない」と語った。「ワクチンが明確に効くというのは日本でも結果が出ている」として、一日も早く、一人でも多くの国民が接種できるような体制を組むことが「一番大事だ」と話す。
新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は12日、東京の人流を2週間で7月前半の約5割に削減するよう呼び掛ける提言を発表した。具体的にはデパートの地下食品売り場(デパ地下)やショッピングモールの人出を強力に抑制することなどを挙げた。コロナ治療に関わっていなかった医療機関に協力を求めるよう国や自治体に促した。
(東京の新規感染者数を更新しました)
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