ベイウィンドウのある部屋

2024-10-25 23:16:29 | 梅ヶ丘の家


家のなかに、寄る辺となるような居場所があるといいなあと思っています。
「梅ヶ丘の家」のリビングには、そんなイメージの場所があります。

ベイウィンドウのある窓辺がほしい。クライアントからそんな話があったのは、設計も終盤に差し掛かっていた頃のことでした。
このリビングは中庭に面していて、もともとの設計ではメインの窓は中庭に大きく開かれたようなデザインで考えていました。
でもある時、クライアントから伝えられたのは、かつて海外で暮らしていたときに過ごした家や、地域の家に備わっていた、弓なりに窓が連なり、ベンチが設えられたベイウィンドウのある窓辺のイメージでした。
そこからデザインを練り直してできあがったのが、この窓辺の空間です。

クラシックな雰囲気のインテリアデザインのなかに、ベイウィンドウの窓辺が立ち現れ、どこか象徴的な趣きをまとった佇まいになりました。そしてその窓からは静かに光が降り注いでいます。
この後、中庭にはシンボルツリーが植えられ、ベイウィンドウの大きな窓から緑が見えることになります。

このインテリアは、クライアントの思い出をきっかけにしてできあがったものです。

記憶を拠りどころにして居場所をつくる。

不思議な存在感と、離れがたい引力をもった場所になりました。
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リッキー・リー・ジョーンズを聴きながら。

2024-10-16 23:11:07 | 旅行記


10月中旬の今の時期になると、学生時代に初めて海外旅行に行ったときのことを思い出します。
スペインとフランスへの旅。
バルセロナから入ってガウディの作品に出会い、カタルーニャ地方でロマネスク美術を浴びつつピレネー山脈越え。
くるくると回りながら走るかわいい登山電車に揺られながら国境を越え、南フランスからパリへ向かう旅。
ヘッドホンでRickie Lee Jonesの曲を聴きながら、写真以上にスケッチを描き続ける旅でした。

フランスでは建築家ル・コルビュジェが設計した作品「ロンシャンの教会」を訪れました。

光、闇、色、量感。
そんな目に見えるものを必死に目で追い、
そのなかに巨匠が込めた「時間」や「記憶」といった目に見えないものの象徴や暗喩を、必死に嗅ぎつける。
若い時だからこそ夢中でできた、純粋無垢な建築の味わい方でした。

この旅で買い求めた、ロンシャンの教会の作品集と、パリの文房具店で見つけたペンケース。
こうしたカタチあるものを通して、かつて自分が夢中になったことに想いを馳せる時間も、楽しいものです。
作品集は今でもページをめくり、ペンケースは建築現場に連れていく。
そう、過去のものではなく、僕にとってはまさに今、共にあるものなのです。
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階段の光景

2024-10-04 22:29:40 | 梅ヶ丘の家


今年の初夏にできあがった「梅ヶ丘の家」。大きな2世帯住宅で、クラシカルなイメージの住宅を、というご要望を受けて設計をした家です。
見どころも盛りだくさんなので、ぜひいろいろご紹介したいのですが、その最初の写真がこれ。

階段の光景。特に変わったところのない階段で、使っている材料も手に入りやすいものばかり。
にもかかわらず、なんともいえない趣きがあるように思います。
ちょうど家の裏側に、緑が見えるはず。そんなイメージを頼りにそっと開けた小窓。

大きな壁のなかに穿たれた、小さな窓。

うんうん、ロマネスクだ、これは! そんなことを胸に秘めながら、設計しているときから楽しみにしていた場所でした。
そして本当にロマネスクの建築のように、仄暗い空間のなかに印象的に光が差し込み、外の緑が垣間見えて。
ある意味で、建築のいちばん初源的な光景なのだと思います。

そんな光景が、ぼくはとても好きです。
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