家のなかに、寄る辺となるような居場所があるといいなあと思っています。
「梅ヶ丘の家」のリビングには、そんなイメージの場所があります。
ベイウィンドウのある窓辺がほしい。クライアントからそんな話があったのは、設計も終盤に差し掛かっていた頃のことでした。
このリビングは中庭に面していて、もともとの設計ではメインの窓は中庭に大きく開かれたようなデザインで考えていました。
でもある時、クライアントから伝えられたのは、かつて海外で暮らしていたときに過ごした家や、地域の家に備わっていた、弓なりに窓が連なり、ベンチが設えられたベイウィンドウのある窓辺のイメージでした。
そこからデザインを練り直してできあがったのが、この窓辺の空間です。
クラシックな雰囲気のインテリアデザインのなかに、ベイウィンドウの窓辺が立ち現れ、どこか象徴的な趣きをまとった佇まいになりました。そしてその窓からは静かに光が降り注いでいます。
この後、中庭にはシンボルツリーが植えられ、ベイウィンドウの大きな窓から緑が見えることになります。
このインテリアは、クライアントの思い出をきっかけにしてできあがったものです。
記憶を拠りどころにして居場所をつくる。
不思議な存在感と、離れがたい引力をもった場所になりました。