吉祥寺北町の家

2015-12-05 19:37:26 | 吉祥寺北町の家


武蔵野市で建てている住宅のお話です。

東京都武蔵野市の北部に位置する住宅地は、ゆったりとした広さの敷地の家が多く並びます。
落ち着いた雰囲気の界隈。
碁盤の目できっちりと直角に道路が交差する平坦な街並み。どこか、僕の生まれ故郷の京都とイメージを重ね合わせながら、建設現場によく足を運びました。

偶然にも、施主のご夫妻も京都で大学生時代を過ごしたとのこと。かといって、「京都風で」という注文があったわけではありませんが、僕の心の奥底には、そんなイメージが少し芽生えたのかもしれません。
以前にこのブログでも書いたことがあるのですが、僕にとっての京都のイメージとして「秘められた」ものへ思いを馳せる文化があるように思います。
それは、小中学校への登下校途中に、街並みから肌で感じたことでもありました。

秘めやかな佇まい。ゆったりとした敷地でありながら、どこかそんな印象の佇まいの家になりました。
その奥にある庭木と明るい空間の広がりが、道路から少し垣間見える。そのさじ加減が、僕にとって大事でした。





居心地のよい窓辺を。
いつも設計で大切にしていることを、この住宅にも盛り込みました。
自然の光に照らし出される、ごく身近な事物の趣を大切にしたいと思っています。
植栽は、お供え物のように植わっているのではなく、生活のなかで身近に感じられるようにしたいと思っています。
主張の少ない控えめなデザインのなかに、寸法と配置と質感にこだわって、丁寧につくった住宅です。

家の工事は終わり、いよいよ植栽の工事に向けて準備が始まります。





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重心のある場所

2015-07-22 21:30:53 | 吉祥寺北町の家

ずいぶんとブログの更新が滞ってしまったのですが、その間に、いくつかの現場が進行しています。
上の写真は吉祥寺で進行中の住宅。棟上げをし、暑い中、大工さんを中心に下地工事が進んでいます。

週に1回の定例打合せの際には、僕も三時の休憩に寄せてもらいます(笑)
不思議なことにどの現場でも、その住宅の一番居心地が良いところに、職人さんたちの車座ができるような気がします。
吉祥寺のこの住宅ではこの窓辺の場所。すでにダイニングテーブルらしき台が置いてありますが、ここは実際にダイニングになります。

まだ更地の状態の敷地は、すべての場所が同じに見えますが、よく観察すると、敷地のなかにもいろいろな特徴があることがわかります。
それらに身をゆだねるようにして居場所を築く。
そんな「発見型」の設計が、僕の性には合っているようです。

この窓には木製の網戸など、窓辺で心地よく過ごすための質感と機能がこれから造作され、この場所にぴったりと合ったダイニングテーブルとベンチもオリジナルにデザインする予定です。
いつもながらのスタンダード・デザインのなかに、質感と使い勝手を込めて。

吉村順三が「重心のある場所」という話をしていましたが、そんなような考えにはとても共感をおぼえますし、30年経った後でも、そんな風に感じてもらえる場所をつくりたいのです。
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