音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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■モーツァルト演奏の大家・ギーゼキングの和声 ~ 吉田秀和著『現代の演奏』より

2011年10月09日 | モーツァルト W.A.Mozart
吉田秀和著 『現代の演奏』新潮社より抜粋


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ギーゼキングは、
ドビュッシーと並んで、モーツァルト演奏の
大家でもあった。

~~中略~~

私は、ここではただ、
彼のモーツァルト演奏の要諦は、
テンポの適正、響きの清澄といった比較的表面的な点ではなくて、
あのモーツァルトの透明な旋律をひいて、
あくまで、背後の和声の流れの充実を感じさせずにはおかない点にある
ということに気づいたとだけいっておこう。

モーツァルトでは、
旋律に半音階的な隈どりがふんだんにあるが、
それはE.P.バッハのいったように、
経過音的に考えて扱うべきものであるよりも、
和声上の機能をもったものである場合が少なくない。

その時、彼のあの
要点だけでかかれているような簡潔極まる和声の流れの中で
その旋律音を捕え、それに応じたフレージングとダイナミックの
明暗をつけた演奏の様式を完成したところに、
ギーゼキングが数あるヨーロッパのモーツァルト弾きの中でも、
とくにモーツァルトの大家としての名声を得たゆえんであろう。

これには、私の好きなK511のイ短調ロンドの冒頭など、
最も手近で明らかな例として上げられよう。



ついでながら、
こういう曲をじっくりきいていると、
いかにギーゼキングが、画一的で動かない機械的イン・テンポとは、
しばしば逆行するくらいに、音楽を躍動的に捕えていたかが、
はっきりする。

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