「そして、いよいよ最後の五枚目だ」(私)
「えっ、最後ですか」(T君)
「一応、五枚位にとどめないと、際限なくなるから」
(私)
「で、何ですか」(T君)
「<無伴奏チェロ組曲>」(私)
「いきなり、クラシックですか」(T君)
「唐突に思うかもしれないが、バッハは、自分にとっ
てはクラシックの入り口でもあるし、イーノからミニマ
ルミュージックに行くと、意外にもバッハなどのバロッ
クとの共通点があることが分かり、バロックの良さを理
解する事となったわけだ」(私)
「ロックからクラシックに到達、ですか」(T君)
「そして記念すべき、初めて自分で購入したアルバム
が<無伴奏チェロ組曲>だったというわけだ」(私)
「なるほど」(T君)
「となると、もう一つ記念すべきジャズのアルバムを入
れたくなるんだよね、マイルスの」(私)
「<Bitches brew>ですね」(T君)
「そう、ジャズというよりフュージョンの不朽の名作だ
けど」(私)
「じゃあ、六枚ということで」(T君)
「となると、女性ヴォーカルでも誰か入れたいよね」(私)
「こういうことですね、際限がなくなるというのは」(T君)
「That's right」(私)
「ということで、T君の三枚目は?」(私)
「そうですね、<ソフトマシーン><can><ジョン.ケ
イル>のどれかですね」(T君)
「<ボンゾドッグ ドゥーダーカフェ>は?」(私)
このとんでもない名前のグループは、何を隠そうT君か
ら初めて教えられたのだ。
「中々決められないですよ」(T君)
「それじゃあ今回は特別に、全部合わせてで許しましょ
う、お客さん今回だけですよ」(私)
仮想番組で何をやってるんだか。
「でも、最後の一枚は決まってます」(T君)
「何?」(私)
「ピンクフロイドの<Meddle>邦題は<おせっかい>」
(T君)
「ほー、そう来ましたか」(私)
邦題は今一だが、ブッチャーの入場曲で有名になったあ
れが入ってるアルバムだ。
「ピンクフロイドの中では、一番好きなんですよ、曲は
最後の<エコーズ>で」(T君)
「<Meddle>が一番だったとは意外だね」(私)
「<狂気>とかも良いんですけど、何故かこれなんです
よ」(T君)
個人的な思い入れは、傍からははかり知れないものがあ
る、というほどの大袈裟なことではないが、どこまでも
プログレ一筋のT君ではあるようだ。