ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

東京物語

2011年04月05日 | 映画

 

BSで「東京物語」をやっていたのでまた見てしまった。これで5回目くらいだろうか。それにしても見る度に、原節子には泣かされる。実の子供の現金さとは対照的な、戦死した息子の元嫁の優しさにほろっとさせられるのだ。ただ、この映画、そんな情緒的な世界を描いているからだけで良いという訳ではない。

戦後の家族崩壊(今で言えば無縁社会の到来)を予見しているという点については、細部に全てが宿るという小津監督の製作姿勢でがあれば自ずとそういうことになると思う。それなりのセンスがあっての話であることは言わずもがな(それが一番重要な点だが)。そしてこの映画の欠かせない魅力は(他の小津作品にも共通)、「単なる風景」の力強さだろう。普通の港に船が動く風景、蒸気機関車が走る姿、唯の路地、煙突がある風景、或いは海岸に佇む老夫婦の姿、何故これほどそれらが魅力的なのだろう。ふっと訪れる沈黙の時間、間、或いは余韻の美学とでも言おうか。そこに少々の情緒を加え、全体的に傑作映画として成り立っている。

筋書きを追うというのは、物語を読むときには当然の正しい態度だと思うが、「東京物語」の場合、物語と言う名前がついているがそんな一般的な意味の物語とは大分遠いところにある。そこが、この映画が良いと思うかそうでないと思うかの分かれ道である。

 

 

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