ニコニコ動画で、ブニュエルのジャンヌ.モロー主演「小間使いの日記」を観る。昔観ているのだが、今回観てみて殆ど覚えてないのにちょっと愕然とする。ブニュエルは好きな監督なのだからもう少し覚えてても良さそうなのに、あまりにひどい忘れようだった。
ただ、映画としては今でも十分面白い。社会的にもそれなりの地位のある人たちの、一見まともそうな、しかし実際はそうとうヘンタイである姿を容赦なく描くブニュエルの姿勢は不変である。これは後の「ブルジョワジーの密かな愉しみ」「自由の幻想」へと続く系譜である。尤も、この監督のヘンタイ視線は、全ての作品に通じる欠かせない魅力でもある。そしてジャンヌ.モロー。パリから田舎の貴族の館に小間使いとしてくるわけだが、それに至る説明は一切ない。あんな妖艶な小間使いがいること自体、すでに普通ではないのだが、話もあれよあれよと普通ではない方向に進んでいく。
他のブニュエル作品の多くに出演しているミシェル.ピッコリも良いヘンタイぶりだ。ジャック.リヴェットの「美しき諍い女」やマノエル.デ.オリヴェイラの「家路」などにも出演している言わば名優であるが、彼を見てるとどうしてもクリストファー.リーを思い出してしまう。あのドラキュラ俳優の。今思ったが、もう一人の怪奇スター、ピーター.カッシングにもちょっと似ている。この二人をを足して二で割ると丁度ミシェル.ピッコリ、何て話はどうでも良かったが、そんな怪奇俳優にどこか似ているいかがわしさも俳優の魅力ではある。