この間、十年ぶりくらいに、所謂「コーヒー専門店」に入った。「コーヒー専門店」というのは、今流行りのカフェなどではなく、外観はちょっと重厚で、外からはあまり中を窺うことができないような入り口、中は、カウンターと重そうな作りの椅子テーブルで、こげ茶と壁などの白が色の基調。飾る絵は、印象派あるいはそれに順ずる日本のなんちゃって印象派。メニューは、コーヒー中心のブレンドとストレート。そしてこれは重要なポイントだが、店主はコーヒーの拘りが表情に表れているちょっととっつき難そうな人。BGMはジャズ。勿論フュージョン以前。とこんなところになる。
で、今回入った所が、ほぼその条件に合致していた。店主は60ちょいくらいで、定年を期に、今まで趣味としていた本物のコーヒーを出す店を遂に始めた、と言った感じ。BGMはジャズ。この手の店にあまり入らないのは、そんなコーヒーに対する拘りなどが店全体に変な緊張感を生み、重厚な内装とともにあまりリラックスできないからだ。こういう店にありがちな常連などがカウンターに陣取り、入ってきた客を品定めするのも相当感じ悪いし、要するに全て含めて好みではないのだ。今回は常連もいず他に誰もいなかった。これはこれであまり喜ばしい状況ではない。テーブルは4人席ばかりで仕方なくカウンターに座った。初めての店でもカウンターに座りたがる人間がいるが、あれは大体店の人と何か話したくてしょうがない人達で、ちょっと鬱陶しいタイプが多い。私の場合、店主とコミュニケーションをとりたい訳ではなかったので、持ってた冊子をずっと読んでいた。注文ごとに豆をひき、ドリップで淹れたブレンドは、焙煎深めのそういう味だった。
時間調整が目的だったので、飲み終わったらそそくさと店を出た。やはりこの手の店は、店の人とのコミュニケーション含め拘りを楽しむ店なのだろう、と思った。