ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】怒らぬ若者たち

2007年09月23日 23時27分40秒 | 読書記録2007
怒らぬ若者たち, 森清, 講談社現代新書 566, 1980年
・生産現場(工場)で働く著者から見た、"イマドキの若者" 論。自ら勤務する工場、キック・ボクシングのジム、ポプコン(ポピュラーソングコンテスト)の会場、街の盛り場、禅道場などに若者をたずねて、そこで語り合った内容を基に構成されている。
・現在と置き換えて考えてみても、そう違和感の無い内容。
・「働いている日本青年の国際比較によるきわ立った不満が「労働時間や休暇」にあるという現実は、日本の若者たちが企業(職場)に囚われ過ぎていると感じていることのあらわれであると同時に、もうひとつのことが言える。日本の労働倫理は「働きすぎること」をよしとする。この既成の倫理と順応して働きながら、そのことに強い不満を抱いているために若者たちは内心焦ら立ち、その反動で無気力になってしまうのである。」p.11
・「「自分の時間をもっと持ちたい」という叫びが、この怒らぬ若者たちの内奥の声として私には聞こえてくる。あらためてことわっておくけれども、ここでいう<怒らぬ若者たち>は、<怒れぬ若者たち>ではない。怒りを押し殺しての<怒らぬ>若者なのである。」p.12
・「社会人になるためのモラトリアム、それが大学の四年間である。」p.24
・「青年たちが結婚を延期しようと考えるのは、相手を尊重しようとするからではなく、重い人生を生きようとせず、人生をできるだけ軽く生きたいと思うからなのではないか、と私は疑う。重荷を負うことで<経験>は深まるのに彼らは、と私ははがゆく思う。(中略)<自分らしさ>をつかんでから、あるいは35歳になってからでも結婚などはいいのだ。ただ、そうすれば君のそれからの苦労は倍加するし、もし子供をもうけるとすれば子供にとっても苦労が重なる。それだけは承知しておかないといけない。それがわかっての話なら、ゆっくりしたまえと、私は言いたい。」p.27
・「早婚願望の青年は、母と妻のふたつの役割を満たしてくれる女性を自分のものとして所有し、そのことによって仮象の<自分らしさ>を得られたと思いこむ。」p.29
・「結婚しようと思わないのも、結婚したいと願うのも、そのどちらもがそうすることで<自分らしく>なれるのではないかと考えてのことである。」p.30
・「これからこの本でも青年と若者の二語をおりまぜて使う。<若者>と呼んだ時は、若い人びとを<青年>と呼ぶ不幸から私が脱せられたか、あるいは脱出の希望をこめて書いていると察して頂きたい。」p.36
・「現代人は子供が生まれ、徐々に自分の子供を介して社会と関係を保つようになる。被保護者から保護者への意識変化がはじまる。」p.39
・「心理学でいうアンビバレンス(ambivalence)、両面価値のなかで生きているのが<怒らぬ若者たち>=現代青年のきわ立った特徴だといえる。」p.42
・「青年たちが、自らのアンビバレンスに気付き、その上で<自分らしさ>を築く努力をしながら、また、時には<ひき裂かれ>もするという、強いやさしさを生きる時、彼は若者となるのだ。」p.43
・「もっともY君にかぎらず、学生・社会人・家庭人としてのペルソナ以外の裸の顔は、なかなか見せないのが現代青年の特徴である。」p.60
・「人間社会の日常は、さまざまな雑事や目立たない仕事で構成されている。(中略)ところで雑用といっても、そのひとつひとつは意味を持ち、重要な仕事を積み重ねていく上での接ぎの役目を果たすものだ。仕事らしく見える仕事は、雑用としか見えない仕事に支援されていなければ、まとめあげることができない。職人社会での修行は雑用をこなすことを第一歩としていた。  仕事のベテランとは、雑用に埋もれてしまわず、雑用を負担と思わずにうまく処理して本来の仕事を成功させる人である。(中略)それでも、仕事のできるベテランは雑用の処理が上手で、すべてを部下に任せきりにはしない。それは、雑用と思われるような仕事にも大事なことがしばしばひそんでいるのを知っているからである。」p.69
・「語学力だけではない。営業マンが市場分析力を持つとか、経理マンが金融の専門家、あるいは国際経済に通暁しているというように、個別技術の他にひとつ別の技術を持たないと現代の組織では死せる専門家となってしまう。」p.84
・「八ヶ月という、日本の企業人としては大型のモラトリアムを体験したQ君は、休職していた会社に戻った。会社へそのまま戻っていいのだろうか、他にすることがあるのではないかと考えもしたが、ともあれ復帰した。「今までは逃げることばかりで、自分のやっていることを考えてみることは少なかった。これからは、そのあたりをきちっとしたいと思っています」」p.94
・「仕事は人間をおとなにする。しかし現代の仕事は、人間が成熟しておとなになるのを助けるのではなく、組織に従属させるために人間を老化させる働きをしてしまうのである。」p.108
・「人間にとって大事なものは何かと問われてフロイトは、「愛することと働くこと」と答えたといわれる。その「愛することと働くこと」の大事さを知り、その充実について悩むのが青春の大きな課業(task)である。」p.132
・「私は、たとえ自分の本心を偽ってでも、その時々の愛を生きるのが人間らしいと考える。人間は、もともと偽りの世界を生きているのだから。」p.137
・「しかし、自分と対峙することの少ない人間は、自己への厳しさも他人への思いやりも薄くしか持てない。人間の内側への旅が人間の洞察力と寛容を養ってくれるのだ。坐禅とは、普通の人たちには人間の内なるものへのトリップ(小旅行)なのだといえよう。」p.196
・「「からだを根源的にとり返す」とは、人間が人間らしくなるということである。  禅もまた同じ試みである。本当のラディカリズムは、身体を自分で取り戻すことからはじまるのだ。  若者たちよ、背をのばせ。」p.204
・「「問題は『男ざかりを一日八時間くだらないことについやす』そういうことのためにおとなになるとは、どういうことなのか?」(ポール・グッドマン」p.207
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