ゲノム機能 発現プロファイルとトランスクリプトーム ポストシークエンスのゲノム科学2, (監修)松原謙一・榊佳之 (編集)松原謙一, 中山書店, 2000年
・専門書。
― 目次 ―
第1章 発現プロファイル,トランスクリプトーム
1 発現プロファイル解析技術 加藤菊也
2 発現プロファイルとトランスクリプトーム 久原哲
3 枯草菌のトランスクリプトーム解析 藤田泰太郎
4 大腸菌のトランスクリプトーム解析 大島拓・森浩禎
第2章 多細胞生物系の発現プロファイル研究
1 発生と発現プロファイル 加藤菊也
2 ヒト癌の遺伝子発現プロファイル解析の現況と展望 竹政伊知朗・門田守人
3 in situ ハイブリダイゼーションによる発現地図 小宮透
第3章 情報の解析
1 マイクロアレイデータの解析 角田達彦
2 医学知識を機械に伝える―BOBプロジェクト 大久保公策
3 トランスクリプトームを支配する法則 大久保公策
・「ゲノム解析の究極の目標は、ゲノムDNAの塩基配列に刻み込まれている遺伝情報の完全解読である。このためにはシークエンシング、つまり構造解析のみでは十分でない。遺伝子の発現調節とその制御のネットワークの情報を読みとって、きちんとデータベース化する、つまりゲノムの機能解析プロジェクトがなされなくてはならない。」p.v
・「発現プロファイル解析技術の最大の問題点は、技術の評価基準があいまいなことである。たとえばSNPの場合は、一塩基置換が検出できるかできないか判定基準が明確なので、技術の評価は簡単である。これに対して遺伝子発現の場合は、どの程度の発現量の差が生物学的に意味があるのか、ということがはっきりわかっていないため、発現量測定精度の明確な判定基準がない。」p.2
・「ほとんどの発現プロファイル解析時技術は、定量性の問題をあいまいにしたまま開発されてきているのが現状であり、一部の例外を除いて正確な吟味はできていないと考えるべきである。また、遺伝子発現量の変化は重要視されているが、絶対量は軽視されている。そのためか、マイクロアレイを含め多くの技術は発現の絶対量を測定することができない。要するに現在の技術は、どれも遺伝子発現量の一部の側面しかみていないのである。」p.3
・「マイクロアレイの最大の特徴は、由来のわかっている配列をあらかじめ整列配置するため、他の技術で必要となる遺伝子の同定作業が不要になることである。」p.4
・「DNAマイクロアレイは、非特異的ハイブリダイゼーションを検出できないため、この点ではオリゴヌクレオチドアレイの方が優れている。」p.7
・「1980年代前半に、Lehrachのグループがゲノムの物理地図作成を目的として、メンブレンフィルター上に多数のクローンをロボットを用いて整列配置した。これが、アレイの最初の例である。 1990年代の前半スタンフォード大学のBrownらにより、DNA断片をスライドグラス上にスポットするいわゆるマイクロアレイの開発が行われた。」p.7
・「今のところスタンフォード大のBrown研究室と他のグループのデータ品質との間には大きな隔たりがあるようにみえる。また、Brown研究室でもうまくいく解析対象は出芽酵母や哺乳類の単一細胞種の実験に限られるようで、たとえば固形癌(乳癌)のデータ品質は低い。」p.8
・「PCRは現時点でハイブリダイゼーションの精度を高める最良の方法である。また、定量PCR反応はマイクロアレイよりもずっと少ないRNAでも可能なので、臨床検体の解析など、試料に制限のあるサンプルには非常に有利である。」p.10
・「これらの技術を概観するといろいろな技術革新がなされているようにみえるが、実際は、ハイブリダイゼーション、塩基配列決定法(Sanger法)、そしてPCRの3つの基本技術のバリエーションにすぎない。」p.21
・「現在の技術は相互関係の全体を明らかにするにはいまだ原始的といわざるをえず、研究者は潜在的に可能性のある相互作用の千分の一にも満たない数をチェックしているわけである。」p.73
・「研究を続けるにつれ、発現プロファイル解析で得られる膨大なデータとこれまでの生化学分子生物学の知識体系とを結びつけることが、非常に難しいことを痛感している。」p.81
・「理解とは知識とデータの多角的比較によるデータの知識化であるとすれば、極端に表現すれば、"膨大な数値データを取り込める研究者"か"医学知識のある機械"が必要である。」p.134
・「換言すれば、膨大なデータの包括的理解を阻むのは知識と観測データとのフォーマットの違いといえるかもしれない。」p.134
・「遺伝学はこれまで言語学に類似性を見出し、重要な概念の多くを転写、翻訳、メッセージ等、言語学的比喩で表現してきた。BOBでは遺伝子学的方法を機械学習に適応しようとしている。」p.142
・「仮に、言語のような純粋な情報現象が何らかの自然法則の支配を受けていると仮定すれば、生命の情報的側面も同じ自然法則の支配を受けている可能性は無視できないであろう。」p.144
・専門書。
― 目次 ―
第1章 発現プロファイル,トランスクリプトーム
1 発現プロファイル解析技術 加藤菊也
2 発現プロファイルとトランスクリプトーム 久原哲
3 枯草菌のトランスクリプトーム解析 藤田泰太郎
4 大腸菌のトランスクリプトーム解析 大島拓・森浩禎
第2章 多細胞生物系の発現プロファイル研究
1 発生と発現プロファイル 加藤菊也
2 ヒト癌の遺伝子発現プロファイル解析の現況と展望 竹政伊知朗・門田守人
3 in situ ハイブリダイゼーションによる発現地図 小宮透
第3章 情報の解析
1 マイクロアレイデータの解析 角田達彦
2 医学知識を機械に伝える―BOBプロジェクト 大久保公策
3 トランスクリプトームを支配する法則 大久保公策
・「ゲノム解析の究極の目標は、ゲノムDNAの塩基配列に刻み込まれている遺伝情報の完全解読である。このためにはシークエンシング、つまり構造解析のみでは十分でない。遺伝子の発現調節とその制御のネットワークの情報を読みとって、きちんとデータベース化する、つまりゲノムの機能解析プロジェクトがなされなくてはならない。」p.v
・「発現プロファイル解析技術の最大の問題点は、技術の評価基準があいまいなことである。たとえばSNPの場合は、一塩基置換が検出できるかできないか判定基準が明確なので、技術の評価は簡単である。これに対して遺伝子発現の場合は、どの程度の発現量の差が生物学的に意味があるのか、ということがはっきりわかっていないため、発現量測定精度の明確な判定基準がない。」p.2
・「ほとんどの発現プロファイル解析時技術は、定量性の問題をあいまいにしたまま開発されてきているのが現状であり、一部の例外を除いて正確な吟味はできていないと考えるべきである。また、遺伝子発現量の変化は重要視されているが、絶対量は軽視されている。そのためか、マイクロアレイを含め多くの技術は発現の絶対量を測定することができない。要するに現在の技術は、どれも遺伝子発現量の一部の側面しかみていないのである。」p.3
・「マイクロアレイの最大の特徴は、由来のわかっている配列をあらかじめ整列配置するため、他の技術で必要となる遺伝子の同定作業が不要になることである。」p.4
・「DNAマイクロアレイは、非特異的ハイブリダイゼーションを検出できないため、この点ではオリゴヌクレオチドアレイの方が優れている。」p.7
・「1980年代前半に、Lehrachのグループがゲノムの物理地図作成を目的として、メンブレンフィルター上に多数のクローンをロボットを用いて整列配置した。これが、アレイの最初の例である。 1990年代の前半スタンフォード大学のBrownらにより、DNA断片をスライドグラス上にスポットするいわゆるマイクロアレイの開発が行われた。」p.7
・「今のところスタンフォード大のBrown研究室と他のグループのデータ品質との間には大きな隔たりがあるようにみえる。また、Brown研究室でもうまくいく解析対象は出芽酵母や哺乳類の単一細胞種の実験に限られるようで、たとえば固形癌(乳癌)のデータ品質は低い。」p.8
・「PCRは現時点でハイブリダイゼーションの精度を高める最良の方法である。また、定量PCR反応はマイクロアレイよりもずっと少ないRNAでも可能なので、臨床検体の解析など、試料に制限のあるサンプルには非常に有利である。」p.10
・「これらの技術を概観するといろいろな技術革新がなされているようにみえるが、実際は、ハイブリダイゼーション、塩基配列決定法(Sanger法)、そしてPCRの3つの基本技術のバリエーションにすぎない。」p.21
・「現在の技術は相互関係の全体を明らかにするにはいまだ原始的といわざるをえず、研究者は潜在的に可能性のある相互作用の千分の一にも満たない数をチェックしているわけである。」p.73
・「研究を続けるにつれ、発現プロファイル解析で得られる膨大なデータとこれまでの生化学分子生物学の知識体系とを結びつけることが、非常に難しいことを痛感している。」p.81
・「理解とは知識とデータの多角的比較によるデータの知識化であるとすれば、極端に表現すれば、"膨大な数値データを取り込める研究者"か"医学知識のある機械"が必要である。」p.134
・「換言すれば、膨大なデータの包括的理解を阻むのは知識と観測データとのフォーマットの違いといえるかもしれない。」p.134
・「遺伝学はこれまで言語学に類似性を見出し、重要な概念の多くを転写、翻訳、メッセージ等、言語学的比喩で表現してきた。BOBでは遺伝子学的方法を機械学習に適応しようとしている。」p.142
・「仮に、言語のような純粋な情報現象が何らかの自然法則の支配を受けていると仮定すれば、生命の情報的側面も同じ自然法則の支配を受けている可能性は無視できないであろう。」p.144
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