突然の右手の痛み,しびれ,灼熱感で発症した31歳男性.神経学的には第5指,および第4指の外側の全感覚脱失を認めていた(まさに教科書的な尺骨神経パターン).しかし運動麻痺は一切なし.神経伝導速度,SEP(尺骨神経,正中神経),CT,脊髄MRI,いずれも異常なし.さあ,解剖学的診断はどこか?
実はこの患者さん,発症時,数分間の失語症も認めていた.また発症3日目に撮った頭部MRIで,post-central gyrusに小梗塞を認めた.若年性脳梗塞として原因検索が行われた結果,large PFO(patent foramen ovale)が認められた.
これまで上肢単麻痺を呈した脳梗塞症例の責任病変に関しては多数の症例報告があり,中心前回内のprecentral knob(中心溝へ突出した部分)と呼ばれる領域が手の運動に関して重要であることが知られている(逆にprecentral knobは中心溝の同定方法としてとても有用).ちょうど今回の梗塞巣はこの precentral knobの後縁に沿うような感じで認められている.
この症例からの教訓は以下の2つ.
① 運動麻痺を合併しないpseudo-ulnar palsyが存在しうる;これまでもpseudo-ulnar palsyの報告はあるが,いずれも運動麻痺を合併していた(病変は視床か大脳皮質).
② 尺骨神経領域の純粋感覚障害の責任病変として,post-central knobも考慮すべき.
それにしても第4指の半分を含むパターンは完全に尺骨神経麻痺と区別がつかない.逆に考えると尺骨神経のあの特有な支配領域パターンは,末梢神経レベルで決定されるものではなく,すでに大脳皮質レベルで決定されていると考えても良いのかもしれず,非常に興味深い.
Neurology 64; 1981-1982, 2005
実はこの患者さん,発症時,数分間の失語症も認めていた.また発症3日目に撮った頭部MRIで,post-central gyrusに小梗塞を認めた.若年性脳梗塞として原因検索が行われた結果,large PFO(patent foramen ovale)が認められた.
これまで上肢単麻痺を呈した脳梗塞症例の責任病変に関しては多数の症例報告があり,中心前回内のprecentral knob(中心溝へ突出した部分)と呼ばれる領域が手の運動に関して重要であることが知られている(逆にprecentral knobは中心溝の同定方法としてとても有用).ちょうど今回の梗塞巣はこの precentral knobの後縁に沿うような感じで認められている.
この症例からの教訓は以下の2つ.
① 運動麻痺を合併しないpseudo-ulnar palsyが存在しうる;これまでもpseudo-ulnar palsyの報告はあるが,いずれも運動麻痺を合併していた(病変は視床か大脳皮質).
② 尺骨神経領域の純粋感覚障害の責任病変として,post-central knobも考慮すべき.
それにしても第4指の半分を含むパターンは完全に尺骨神経麻痺と区別がつかない.逆に考えると尺骨神経のあの特有な支配領域パターンは,末梢神経レベルで決定されるものではなく,すでに大脳皮質レベルで決定されていると考えても良いのかもしれず,非常に興味深い.
Neurology 64; 1981-1982, 2005