Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ハンチントン病の一卵性双生児では発症年齢は同じになるか?

2005年06月20日 | 舞踏病
個人的に興味のあるCAG repeat病の発症年齢ネタを一題.これまでにハンチントン病の一卵性双生児は少なくとも12組の報告があるが,症状の程度に差はあることはあるものの,発症年齢の違いは1年以内であった.このことはハンチントン病の発症年齢が遺伝的要因(CAG repeatのみならず,その他の修飾因子も含む)によって強く規定されていることを示唆している.事実,殺虫剤など環境因子が影響するといわれるパーキンソン病と異なり,CAG repeat病における環境因子の関与はあまり指摘されてはいない.
今回,新たなハンチントン病の一卵性双生児が報告されている.症例は現在,71歳の女性で6年前から歩行障害と記銘力障害にて発症.神経学的には全身性の舞踏運動,腱反射亢進,失調歩行を認めた.双生児のもう片方は少なくともその翌年まで健康.遺伝子検査で一卵性双生児が確認され,CAG repeat数は同じく39であった.すなわち同じCAG repeatでも発症年齢に少なくとも7年以上の隔たりができたことになる(当然,片方は発症しない可能性さえある).ではなぜ同じCAG repeatでこのような違いが出たのであろうか?著者らは環境因子の影響を考え,姉妹の生活歴・病歴を比較している.結果として,発症者のほうは喫煙歴が長く(閉塞性肺疾患も合併した),産業廃棄物へのより長い曝露があった.しかしながら喫煙・産業廃棄物とハンチントン病の関連に関する報告はなく,説得力は弱い.
この姉妹で問題になるのはrepeat数である.一般にハンチントン病はIT15遺伝子エクソン1のCAG repeat数が36以上で発症しうるが,36から39 repeatでは浸透率が低下し,グレーゾーンと呼ばれている.本症例はこのグレーゾーンに含まれており,一般のハンチントン病の発症パターンとは異なる可能性もある.すなわち,遺伝的要因の影響が弱まり,環境因子が関与する余地が出てくるのかもしれない(もちろんspeculationだが・・・).いずれにしても遺伝性変性疾患の双生児研究はその疾患への環境因子の関与があるのかどうかを判断する材料になるということが分かり興味を引いた論文である.

Arch Neurol 62; 995-997, 2005
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