Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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パーキンソン病Practice parameter(その2)―神経保護療法と代替療法―

2006年06月18日 | パーキンソン病
パーキンソン病に関する米国神経学会ガイドラインを取り上げる2回目.今回は,神経保護療法と代替療法についてのevidence reviewである.臨床的疑問点として以下の2つを提示している.

質問1.パーキンソン病と診断された患者において,病状の進行を遅らせる薬物療法があるか?
質問2.標準的ではないが,パーキンソン病の運動機能の改善をもたらす薬物療法,ないし非薬物療法があるか?

方法は前回と同様に,選択したキーワードを用いてデータベースから論文を抽出後,エビデンスレベルを判定し,その結果から勧告のレベルを決定している.たとえば質問1では,37論文がreviewされ,11論文がinclusion criteriaを満たした.質問2では22論文がreviewされ,いずれもinclusion criteriaを満たしたという具合である(これら論文の少なさは,評価に耐えうる論文を書くことがいかに難しいか容易に想像させる).

さて,質問1で対象となった薬剤は,vitamin E,riluzole,coenzyme Q10,Levodopa,Pramipexile等である.結果としては,
vitamin E;おそらくlevodopa治療開始を遅らせることはできない(Level B).
riluzole,coenzyme Q10,Pramipexile;神経保護作用はない(Level U;ただしriluzoleとcoenzyme Q10についてはstudyのパワーが十分でなく,効果が軽微な場合,検出できていない可能性もある)
Levodopa;ひとつのClass I studyの結果から,病初期の治療として有用で,病状の進行を促進させることはない(Level B).しかしこの神経保護作用は9ヶ月までの検討であり,長期的神経保護作用は証明されていない(Level U).

質問2では,食品,ビタミン,鍼,manual therapy(カイロプラクティックなど),運動療法,言語療法が対象になった.エビデンスを判定するだけの十分な数のstudyが行われているわけではないが,勧告は以下のとおり.
ビタミンE(2000 units);対症療法としても薦められない(Level B).
鍼,manual therapy(カイロプラクティックなど);十分なエビデンスなし(Level U).
運動療法・言語療法;おそらく運動ないし言語機能の改善をもたらす(Level C).

以上の結果から,パーキンソン病に対し,長期的に神経保護作用を有する薬剤は現在ないということになってしまった.またリハビリの重要性に関しては,個人的には,その効果を繰り返し教えてくださった先輩がいたので,それが正しかったことを再確認することになった感じだ.結論としては,神経保護は現状では難しいが,薬物療法とリハビリを組み合わせて治療を行っていく必要があるということになろう.

Nuerology 66; 976-982, 2006
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