学生講義に使いたいと思い,以前より古書店にお願いしていた標題の本(初版・3刷,1955年)が手元に届きました.有名なホムンクルス(ラテン語: Homunculus: 小人の意)の図をはじめ,美しい図や写真が掲載されています.この本はWilder Penfield教授(マギル大学)と共同研究者Theodore Rasmussen教授(シカゴ大学)により書かれたものです.ホムンクルスによって人間の脳機能を客観化しようとした科学者は他にもいたそうですが,2人は感覚機能と運動機能を区別し,別々にマッピングした最初の科学者でした.この結果,2つの異なるホムンクルスが生まれました.
The Cerebral Cortex of Man: A Clinical Study of Localization of Function. By Wilder Penfield, C.M.G., M.D., B.Sc., Professor of Neurology and Neurosurgery, McGill University, Montreal, and Theodore Rasmussen, M.D., Professor of Neurological Surgery, The University of Chicago, Chicago. Cloth. $7.00. Pp. 248, with 121 illustrations.
Penfieldは最初,思考実験としてホムンクルスを考え,ホムンクルスが生きる架空の世界を思い描き,それを「if」と呼んだそうです.そしててんかんを治療するために開頭手術を受けた400例の患者(1928~1947)のさまざまな脳領域を電気刺激する実験を続け,脳地図とそれに対応するホムンクルスを作り出しました.
本書を眺めてみますと,10章から構成され,大脳皮質刺激の効果,大脳皮質切除の影響,てんかん発作の放電の影響を検討しています.大脳皮質刺激では,客観的効果(運動)と局所麻酔下の患者の主観的効果を記録しています.2人が発見した最も興味深い現象は,側頭葉を電気刺激すると,錯覚,幻覚,夢のような状態が引き起こされること,側頭葉が記憶に重要な役割を果たしていることを示したことと言われています.また本書は明確に結果と考察を分けて書かれており,最後の章で大脳皮質の機能についてまとめ,さらに仮説の提示をしています.年末年始に楽しみに読み進めたいと思います.ご興味のある方には,岐阜大学にお越しの際,宝物のCharcot先生の手紙などとともにご覧いただきたいと思います.
モントリオールのマギル大学Neuroで研修をさせていただいた際,撮影したPenfiled教授の肖像画
参考ブログ:新しい「ホムンクルス」の脳地図
The Cerebral Cortex of Man: A Clinical Study of Localization of Function. By Wilder Penfield, C.M.G., M.D., B.Sc., Professor of Neurology and Neurosurgery, McGill University, Montreal, and Theodore Rasmussen, M.D., Professor of Neurological Surgery, The University of Chicago, Chicago. Cloth. $7.00. Pp. 248, with 121 illustrations.
Penfieldは最初,思考実験としてホムンクルスを考え,ホムンクルスが生きる架空の世界を思い描き,それを「if」と呼んだそうです.そしててんかんを治療するために開頭手術を受けた400例の患者(1928~1947)のさまざまな脳領域を電気刺激する実験を続け,脳地図とそれに対応するホムンクルスを作り出しました.
本書を眺めてみますと,10章から構成され,大脳皮質刺激の効果,大脳皮質切除の影響,てんかん発作の放電の影響を検討しています.大脳皮質刺激では,客観的効果(運動)と局所麻酔下の患者の主観的効果を記録しています.2人が発見した最も興味深い現象は,側頭葉を電気刺激すると,錯覚,幻覚,夢のような状態が引き起こされること,側頭葉が記憶に重要な役割を果たしていることを示したことと言われています.また本書は明確に結果と考察を分けて書かれており,最後の章で大脳皮質の機能についてまとめ,さらに仮説の提示をしています.年末年始に楽しみに読み進めたいと思います.ご興味のある方には,岐阜大学にお越しの際,宝物のCharcot先生の手紙などとともにご覧いただきたいと思います.
モントリオールのマギル大学Neuroで研修をさせていただいた際,撮影したPenfiled教授の肖像画
参考ブログ:新しい「ホムンクルス」の脳地図