料理研究家でYouTuberであるリュウジさんが書いた本です.とても勉強になりました!リュウジさんのレシピにはよく「味の素」が出てきます.自分も料理するのが好きですが,なんとなく使わないほうが良いと思っていました.しかしこの本をきっかけに考えが変わり,かつ料理について考え方が深まりました.以下,勉強したメモです.
◆代表的なうまみ成分は,グルタミン酸(昆布,チーズ,トマト),イノシン酸(鰹節,肉,煮干し:核酸系),グアニル酸(干しシイタケ)の3つである.
◆うま味を強くするためには,量を増やすのではなく,グルタミン酸にイノシン酸を組み合わせるなど,「うま味の相乗効果」を使う.
◆食品にグルタミン酸ナトリウムと書かずに「調味料(アミノ酸)」と記載してよい.同様にイノシン酸ナトリウムなど核酸系を使用する場合,「調味料(核酸)」,グルタミン酸ナトリウムに核酸系なども含まれる場合,「調味料(アミノ酸等)」として記載できる. → 調べてみると非常に多くの食べ物にグルタミン酸ナトリウムが添加されていて驚いた!
◆1908年,池田菊苗博士が昆布だしの正体がグルタミン酸塩であることを発見し,その味をうま味と名付けた.しかしこの業績が世界的評価を得たのは1990年代に入ってからである.2000年代になって,舌の味蕾にうま味の受容体が存在することが判明し,うま味が第5の基本味であることは誰もが認める事実になった.
◆うま味の受容体は,味覚受容体T1Rファミリーの2つのタンパク質による二量体,すなわちT1R1/T1R3で(図),面白いことにグルタミン酸に対する活性がリボヌクレオチド(核酸)によって増強される特性を持つ.
◆米国で1968年,中華料理店で食事をした人が健康被害(原著の主徴は後頸部のしびれで,次第に両肩から背中へ広がり,全身の脱力感と動悸が伴う)を訴えるChinese restaurant syndrome(CRS)がNEJM誌に報告され(1),さらに翌年,マウスにグルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate;MSG)を大量皮下注すると視床下部に損傷がみられたという研究が発表された(2).しかしCRSになったことがある被験者にMSGを大量に含む食事を与えても症状が再現されず,その後の追試でも,通常の料理に使う量では人間に対する毒性が確認されず,現在では学術的には否定された(3).
◆脳神経内科で有名な懸念は,MSGが血管収縮作用を介して片頭痛の引き金となるという説であるが,最近の総説を読むとMSGが頭痛の発生率を増加させるか否かは相反する結果が報告されており,かつ多くの研究では平均消費量よりも高用量を使用していたり,食品中のMSG量の評価が不正確であったり,まだ証明されたとは言えないらしい(4).
ということで,早速,「味の素」「あじしお(食塩+MSG)」「ハイミー(MSG+イノシン酸+グアニル酸)」を買い揃えました.たしかに美味しく感じます.ちなみに私のお気に入りのレシピ本は,ひと口で人間をダメにするウマさ!の「悪魔のレシピ」と,材料,手間が最低限で美味しいものが作れる「虚無レシピ」です.
1) Kwok RH. Chinese-restaurant syndrome. N Engl J Med, 278:796, 1968
2) Schaumburg HH, et al. Monosodium L-glutamate: its pharmacology and role in the Chinese restaurant syndrome. Science, 163:826-828, 1969
3) Walker R & Lupien JR. The safety evaluation of monosodium glutamate. J Nutr, 130:1049S-1052S, 2000
4) Ahdoot E, et al. Unraveling the MSG-Headache Controversy: an Updated Literature Review. Curr Pain Headache Rep. 2023 Dec 11.
◆代表的なうまみ成分は,グルタミン酸(昆布,チーズ,トマト),イノシン酸(鰹節,肉,煮干し:核酸系),グアニル酸(干しシイタケ)の3つである.
◆うま味を強くするためには,量を増やすのではなく,グルタミン酸にイノシン酸を組み合わせるなど,「うま味の相乗効果」を使う.
◆食品にグルタミン酸ナトリウムと書かずに「調味料(アミノ酸)」と記載してよい.同様にイノシン酸ナトリウムなど核酸系を使用する場合,「調味料(核酸)」,グルタミン酸ナトリウムに核酸系なども含まれる場合,「調味料(アミノ酸等)」として記載できる. → 調べてみると非常に多くの食べ物にグルタミン酸ナトリウムが添加されていて驚いた!
◆1908年,池田菊苗博士が昆布だしの正体がグルタミン酸塩であることを発見し,その味をうま味と名付けた.しかしこの業績が世界的評価を得たのは1990年代に入ってからである.2000年代になって,舌の味蕾にうま味の受容体が存在することが判明し,うま味が第5の基本味であることは誰もが認める事実になった.
◆うま味の受容体は,味覚受容体T1Rファミリーの2つのタンパク質による二量体,すなわちT1R1/T1R3で(図),面白いことにグルタミン酸に対する活性がリボヌクレオチド(核酸)によって増強される特性を持つ.
◆米国で1968年,中華料理店で食事をした人が健康被害(原著の主徴は後頸部のしびれで,次第に両肩から背中へ広がり,全身の脱力感と動悸が伴う)を訴えるChinese restaurant syndrome(CRS)がNEJM誌に報告され(1),さらに翌年,マウスにグルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate;MSG)を大量皮下注すると視床下部に損傷がみられたという研究が発表された(2).しかしCRSになったことがある被験者にMSGを大量に含む食事を与えても症状が再現されず,その後の追試でも,通常の料理に使う量では人間に対する毒性が確認されず,現在では学術的には否定された(3).
◆脳神経内科で有名な懸念は,MSGが血管収縮作用を介して片頭痛の引き金となるという説であるが,最近の総説を読むとMSGが頭痛の発生率を増加させるか否かは相反する結果が報告されており,かつ多くの研究では平均消費量よりも高用量を使用していたり,食品中のMSG量の評価が不正確であったり,まだ証明されたとは言えないらしい(4).
ということで,早速,「味の素」「あじしお(食塩+MSG)」「ハイミー(MSG+イノシン酸+グアニル酸)」を買い揃えました.たしかに美味しく感じます.ちなみに私のお気に入りのレシピ本は,ひと口で人間をダメにするウマさ!の「悪魔のレシピ」と,材料,手間が最低限で美味しいものが作れる「虚無レシピ」です.
1) Kwok RH. Chinese-restaurant syndrome. N Engl J Med, 278:796, 1968
2) Schaumburg HH, et al. Monosodium L-glutamate: its pharmacology and role in the Chinese restaurant syndrome. Science, 163:826-828, 1969
3) Walker R & Lupien JR. The safety evaluation of monosodium glutamate. J Nutr, 130:1049S-1052S, 2000
4) Ahdoot E, et al. Unraveling the MSG-Headache Controversy: an Updated Literature Review. Curr Pain Headache Rep. 2023 Dec 11.