体内にあるクレアチンのほとんど(95~98%)は骨格筋に貯えられており,残りの数パーセントが心臓,脳,精巣に貯えられている.生体内のクレアチンは約6割がクレアチンリン酸の形で存在し,ATP供給に関与している.このため,エネルギー代謝に異常のある疾患でクレアチン投与が有効ではないかと考えられ,ミトコンドリア脳筋症や糖原病などの代謝性疾患,筋ジストロフィー,筋萎縮性側索硬化症などでその効果が検討されている(ただし有効性が確立した疾患はないようである).ハンチントン病のモデルマウスR6/2でも発症前からの経口投与で生存期間の延長,運動機能障害の進行抑制,体重減少・脳萎縮の抑制が報告されている.すでに臨床試験も開始されていて,placebo-controlled pilot study(1日5gのクレアチン内服1年間の内服,患者数26名)で効果は見られなかったものの(Neurology 61; 925-930, 2003),1日10gのクレアチン内服(マウスに投与した用量に相当する)にて行った1-year open label pilot studyで,実際に脳内のクレアチン量が増加し,かつ内服1年後に運動機能,高次機能検査にてベースラインと比較し明らかな進行を認めなかったと報告された(Neurology 61; 141-142, 2003).
今回,内服2年後の結果が短報として報告されている.当初13名の患者と4名の配偶者に対して始まったstudyだが,血清クレアチン値の上昇(1名)とコンプライアンスの問題で,8名の患者と1名の配偶者の評価に減少している.結果として10g使用にて臨床上問題となる副作用はなく,UHDRSによる評価でも運動機能,高次機能ともベースラインと比較し,若干の増悪傾向を認めるものの有意差を認めるほどではなかった.また患者間で効果にばらつきがあり,ある患者に対しては有効であった.結論としては症状の進行を抑制しているのかについては分からないという結果となった.
クレアチンはサプリメントとして購入可能であるが(運動選手の筋力アップなどに使われるらしい),今のところopen label pilot studyでも効果がはっきりしないのであまり積極的にクレアチン治療を勧める気にはなれない.現在,8gクレアチンを用いたcontrolled double-blind studyが進行中であり,その結果を待ちたい.
Neurology 64; 1655-1656, 2005
今回,内服2年後の結果が短報として報告されている.当初13名の患者と4名の配偶者に対して始まったstudyだが,血清クレアチン値の上昇(1名)とコンプライアンスの問題で,8名の患者と1名の配偶者の評価に減少している.結果として10g使用にて臨床上問題となる副作用はなく,UHDRSによる評価でも運動機能,高次機能ともベースラインと比較し,若干の増悪傾向を認めるものの有意差を認めるほどではなかった.また患者間で効果にばらつきがあり,ある患者に対しては有効であった.結論としては症状の進行を抑制しているのかについては分からないという結果となった.
クレアチンはサプリメントとして購入可能であるが(運動選手の筋力アップなどに使われるらしい),今のところopen label pilot studyでも効果がはっきりしないのであまり積極的にクレアチン治療を勧める気にはなれない.現在,8gクレアチンを用いたcontrolled double-blind studyが進行中であり,その結果を待ちたい.
Neurology 64; 1655-1656, 2005