夜間,膝から下がかゆくなったり,痛くなったり,あるいは虫が這うような不快感を呈するのがRestless leg syndrome(RLS)である.足を動かすと不快感は軽くなるが,じっとしているとまたぶりかえす.蹴るような格好で足が勝手に動く周期性四肢運動障害(PLMS)も合併する.夜間,症状が出現するため睡眠不足となり,日中,過眠を呈する.日本では130万人ほどの患者がいると推測されているが,実際に治療を受けている人は2万人程度と言われている.この理由としては,医師も患者もこの病気に関する知識が乏しいため受診することも診断することもできないためと考えられる.
今回,イタリアより頻度,危険因子に関する横断研究の結果が報告された.対象は北イタリアのBruneckという小さな街の全白人(久山町研究のように動脈硬化,脳,骨疾患の疫学調査が行われている街)で,年齢は50-89歳の701名を調査した.RLSの診断は1995年にInternational RLS Study Groupにより定められた最低項目の4つをinterviewで確認,4項目すべてを満たすものをRLSと診断した(①足の不快感,痛みなどにより足を動かしたい気持ちになったことはあるか?②足を落ち着きなく動かすことがあるか?③足の症状は安静で悪化し,足を動かすと改善するか?④症状は夜間に悪化するか?).重症度については,RLS severity scaleを使用した.
結果としては,患者数は74名で,有病率は10.6%と高率.性別では女性14.2%,男性は6.6%であった.重症度については軽症33.8%,中等症44.6%,重症21.6%.このなかで1例も過去に診断を受けた症例はなく,治療中の症例もなかった.RLSは鉄代謝異常が原因のひとつとして疑われているが,血清鉄,トランスフェリン,フェリチン濃度に関しては罹患者と非罹患者で有意差はなかった.しかし,可溶性トランスフェリン受容体については1.48 vs 1.34 mg/L(p<0.001)と罹患者で有意に高値であった.以上より,この横断研究では危険因子として女性であること,可溶性トランスフェリン受容体値が高値であることが分かった.RLSでは前述の通り,脳内鉄欠乏が原因として疑われている.例えばMRIで黒質,赤核の鉄濃度の減少が示されたり,黒質神経メラニン細胞における鉄代謝異常が報告されたり,髄液フェリチン濃度の減少とトランスフェリン濃度の上昇が報告されている.本研究の血清可溶性トランスフェリン受容体値高値もRLSにおける鉄代謝障害の支持する傍証となるのかもしれない.いずれにしてもRLSの治療として,dopamine agonistが有効であるので(Class Ib),この疾患が疑われた場合には積極的に診断・治療すべきである.
Neurology 64; 1920-1924, 2005
今回,イタリアより頻度,危険因子に関する横断研究の結果が報告された.対象は北イタリアのBruneckという小さな街の全白人(久山町研究のように動脈硬化,脳,骨疾患の疫学調査が行われている街)で,年齢は50-89歳の701名を調査した.RLSの診断は1995年にInternational RLS Study Groupにより定められた最低項目の4つをinterviewで確認,4項目すべてを満たすものをRLSと診断した(①足の不快感,痛みなどにより足を動かしたい気持ちになったことはあるか?②足を落ち着きなく動かすことがあるか?③足の症状は安静で悪化し,足を動かすと改善するか?④症状は夜間に悪化するか?).重症度については,RLS severity scaleを使用した.
結果としては,患者数は74名で,有病率は10.6%と高率.性別では女性14.2%,男性は6.6%であった.重症度については軽症33.8%,中等症44.6%,重症21.6%.このなかで1例も過去に診断を受けた症例はなく,治療中の症例もなかった.RLSは鉄代謝異常が原因のひとつとして疑われているが,血清鉄,トランスフェリン,フェリチン濃度に関しては罹患者と非罹患者で有意差はなかった.しかし,可溶性トランスフェリン受容体については1.48 vs 1.34 mg/L(p<0.001)と罹患者で有意に高値であった.以上より,この横断研究では危険因子として女性であること,可溶性トランスフェリン受容体値が高値であることが分かった.RLSでは前述の通り,脳内鉄欠乏が原因として疑われている.例えばMRIで黒質,赤核の鉄濃度の減少が示されたり,黒質神経メラニン細胞における鉄代謝異常が報告されたり,髄液フェリチン濃度の減少とトランスフェリン濃度の上昇が報告されている.本研究の血清可溶性トランスフェリン受容体値高値もRLSにおける鉄代謝障害の支持する傍証となるのかもしれない.いずれにしてもRLSの治療として,dopamine agonistが有効であるので(Class Ib),この疾患が疑われた場合には積極的に診断・治療すべきである.
Neurology 64; 1920-1924, 2005