人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「痛みの記憶」・・・ガイトナーの寄稿した「金融危機健忘症」

2012-03-19 08:51:00 | 時事/金融危機
 

■ ガイトナーがWSJに寄稿 ■

ガイトナー財務長官がWSJに寄稿した「Financial Crisis Amnesia(金融危機健忘症)」
なる記事が一部で話題になっている様です。

WSJの日本版に翻訳がアップされていないので、
興味のある方を英語版を探してみて下さい。

それに関連してWSJに次の様な記事が出ていました。
「【コラム】ウォール街がクラッシュする10の理由」
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Stock-Markets/node_408043/?nid=NLM20120315

内容はこのブログをお読みになられている方達には「今さら・・」といった感じです。

面白いのは、今アメリカの市場が回復しているかに見えるこの時期に
なぜ、ガイトナーやWSJ、さらにはIMFのラガルドまでが
景気に水を注す様な発言をするかです。

■ 過剰流動性の集中は危険? ■

ちょっと的外れかも知れませんが、こう考える事は出来ないでしょうか?

1) アメリカは景気回復を演出したい
2) 株式市場の相場を吊り上げて、景気回復を印象付けたい
3) 薄商いの中、株価の吊り上げには成功した

ここまでは一般論と同じでしょう

4) 各中央銀行の供給した資金が一機に市場に流入すると市場が不安定になる
5) 相場に加熱感が出てくると、ある時点で市場関係者は「売り」を意識する
6) 何かをきっかけに一旦売りが始まると「暴落」に発展する恐れががある
7) マイナス要因となる発言によって、株価の過度の高騰を抑えている

要はアメリカを始め、世界の市場は中央銀行の供給した流動性相場となっており
市場コントロールが効かなくなる事を警戒しているのでしょう。

■ 「偽りの回復」とマネー・ジャンキー ■

世界の景気が上向いて見えるのは「偽りの回復」なのですが、
マネー・ジャンキー達は、金儲けに夢中で
「回復の芽」にイナゴの大群のごとく群がってきます。

ダウの出来高を見る限りは、彼らは未だ様子見している様で、
株高を好機とばかりに、高値で売り抜けてている様です。

しかしジャンキーの脳は快楽に従順ですから、
暴落の可能性が低いと見るや、一気に儲けに群がって来ます。
そうなるとせっかく芽吹いた「偽りのグリーン・シュート」も
あっさり食い尽くされてしまうでしょう。

ガイトナーは表向きは大統領戦まで米景気の拡大を演出しようとするでしょうから、
今「景気の芽」を摘まれる事は、不本意なはずです。
ですから、アクセルと一緒にブレーキを掛ける様な行動をしています。

■ 陰謀論的には危機が続いている ■

では11月の大統領戦まで米経済が安泰かと言えば、
「陰謀論」的には、世間がそう思い込んでくれた方が仕掛けた時の効果が高い。

ロンドン五輪など世界的なイベントが控えていますが、
私は中東有事があるとすれば、オリンピックにぶつけて来ると思います。

1944年、うるう年。オリンピックイヤーであるが、
戦争により中止。開催地はロンドンであった。


歴史は繰り返すのか?



最後に日本株ですが、これは決算相場ですから3月一杯は崩れる事は無いはず。
「盗人に追い銭」状態で、海外投資家が荒稼ぎして終わるのでしょう。

「モーレツ宇宙海賊」・・「SFの教科書」と呼びたい。

2012-03-18 07:13:00 | アニメ
 


■ 科学の視覚化 ■






SF映画やSFアニメというジャンルは「科学のおとぎ話」ですが、
細かな科学的描写を丁寧に積み上げる事で
あたかも物語世界が現実に存在するかの様な錯覚を起させます。

しょせんは「ニセモノ」なのですが、それを「ホンモノ」に見せる「工夫」が
作品を名作にもすれば、駄作にもします。

スターウォーズが何故あれ程のヒットになったかと言えば
やはり1作目の視覚的衝撃が桁外れだったからでしょう。
(上の画像は別の意味で笑撃的ですが・・・)

以来SF映画も、SFアニメも様々な「映像」を生み出して来ましたが、
昨今の日本のアニメのSF描写で衝撃を受ける事はほとんどありません。
「センスオブワンダー」が宿った映像を眼にする機会がめっきり少なくなりました。

そんな最近のアニメ製作者達に、「SFアニメとはかく在るべき」とばかりに
素晴らしい映像の数々を見せ付けるのが、
今期アニメのダークホースでありながら、
今やオールドアニメファンの心をガッチリ掴んだ「モーレツ・宇宙海賊」です。

「荒唐無稽とリアルのバランス・・新しいけど懐かしい「モーレツ宇宙海賊」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/668.html


■ 女子高生で宇宙海賊船の船長?! ■

ここからはネタバレ全開、オタクモードで突っ走ります。

加藤茉莉香(マリカ)は白凰女学院高校のヨット部1年生です。
彼女の父の職業は「海賊船弁天丸の船長」。

弁天丸は政府から「私略船免状」なる免許を交付された
れっきとした公認の海賊船。
そして、海賊船船長は世襲制と決まっています。

そんな自分の立場など一切しらされず、
あまつさえ、父が海賊船船長である事すら知らない茉莉香が
父が急死で海賊船「弁天丸」の船長にならざるを得なくなります。

・・・今時こんな子供の絵本に様な設定は滅多に出会えません・・・。

その海賊行為たるや・・・宇宙客船に乗り込んで客の金品を奪い取るというもの。
まさに海賊らしい「略奪行為」ですが、何故だか乗客達は大喜び。
客船のクルー達も、海賊の登場を今や遅しと待ちわびています。

何と、奪われた金品は保険会社が補償してくれるのです。
ですから乗客たちはテーマパークのアトラクションを楽しむノリで、
海賊達の出現に胸を躍らせます。

この妙に秩序と馴れ合った海賊達のお仕事は、
しかし全てがヤラセという訳では無く、
「表に出せない物」を密輸したり、
「表に出せない作戦」を遂行したりして、国家の影の部分も担う存在です。

そして、組織としては一応「軍」に所属しており、
戦闘となれば、本気の戦闘を繰り広げます。
味方の軍と放火を交える事もあり、それはそれなりに軍の訓練にもなっているのです。

これだけ書けば全くもって子供騙しの様な内容に思えますが、
細かな科学的ディテールを積み上げる事で、
手に汗を握るSFスペクタクルに変容するのですから、
もうSFオタクにはたまらない喜を味わう事になるます。
正にSFの教則本の様な内容です。


■ 序盤の山場は電子戦 ■


船体を取り囲む光は「凹面鏡の虚像」、こんな科学的な映像はアニメで見た事が無い・・。

序盤は女子高のヨット部の練習航海に謎の宇宙船が攻撃してくるという設定。
丸腰の練習船と女子高生達が攻撃にどう対処するのか、時系列で追ってみます。

1) ドック停泊中にハッキングを受ける
2) 危険性の低いハッキングに迎撃を開始
3) 電子戦システムでハッキング元を逆ハッキングを試みる
4) ドックからの外部電源のブレーカが過負荷で落ちる

ここまでは電子戦の説明的内容でした

5) 練習戦の定時連絡に通信妨害を受けた形跡を発見
6) 周囲の船の認識コードに不審船らしきものは見当たらない
7) 砲撃管制用の高周波レーダーを全天スキャン
8) スキャン結果、戦艦クラスの船影を補足
9) 2回目、3回目のスキャンでは補足されない
10) 「幽霊船」の正体は多分敵と判断する
12) ヨット部員達が先生に内緒で敵に対抗する事を決める

ここからが実線

13) 敵が攻撃してくるタイミングを練習船が惑星の影に入った所と想定
14) 敵の位置をレーダーの死角となる太陽の方角と想定
15) 敵のハッキングに備えて、練習船のメインシステムのコピーを作成

敵が案の定、練習船にハッキングを開始します

16) 船内カメラにダミー映像を流して敵を欺く
17) 敵がシステムをハッキングしている間に敵のメインシステムをハッキング
18) 敵からの連絡「貴艦のコントロールを掌握した、降伏されたし」

・・・女子高生艦長の返信は「バカめ」・・・沖田艦長ですか!!
さあ、女子高生ヨット部の反撃開始です



なつかしの「宇宙戦艦ヤマト」。「バカめ」で狂喜乱舞するのはオールドファン。


19) 敵のメインシステムに攻撃開始
20) 敵のコントロールを制圧。最低限の動力を残すのみとする。

すると、

21) 敵は自鑑のメインシステムをシャットダウン

・・敵は実戦に長けている様です。

22) 敵艦の砲撃が始まります。しかし光学照準では50万キロの砲撃は不正確
23) 丸腰の練習艦では応戦のしようがありません。

窮地に追い込まれて、主人公のマリカはひらめきます。
練習船オデット二世は、太陽風を利用して航行する宇宙帆船です。

24) 太陽反射パネルの照準を敵艦に定めます。

「迎撃出来なくても、敵の眼を一瞬でも潰せればいい」
ピカー!!
これはタマリマセン。光学照準のディテクターは確実に焼ききれます。
裸眼で覗いていれば、一瞬で失明です。

そこに駆けつける2隻の海賊船。
一隻はマリカの船。弁天丸。
そして一隻は、謎の黒髪メガネ転校生のチアキの船。海賊船バルバローサ。
そして、宇宙軍の艦船も駆けつけます。

イヤー!!渋い。そして痺れます。
何という地味な戦闘。
そして何と言う中身の濃い戦闘なのでしょう。

かつて様々な作品が宇宙での戦闘のリアリティーを追及してきました。
しかし、砲撃に至るまでの心理戦、電子戦でコレほどまでに酔わせる作品はありません。
映画で言うならば、ナチスのUボート(潜水艦)とアメリカの駆逐艦戦いを描いた
「眼下の敵」に匹敵する緊張感です。


「眼下の敵」 1957年 20世紀FOX

本質的に「アニメなど子供騙し」なのですが、
この手の「ハッタリ」は大歓迎です。

■ 「黄金の幽霊船」探しと王家のお家騒動 ■

現在「弁天丸」は「さまよえる黄金の幽霊船探し」という、
いかにも海賊船らしい仕事に取り掛かっています。

セレニティー王家の第7皇女グリューエル・セレニティを、
とある理由で乗船させた弁天丸は、
王女の依頼で「さまよえる黄金の幽霊船」探しの真っ最中。

グリューエルはどうやら、セレニティーの後継争いに巻き込まれている模様。
「さまよえる黄金の幽霊船」がどうやら争いのカギを握っている様です。

「さまよえる黄金の幽霊船」とは超光速航行が実用化される以前、
セレニティーで建造された大型移民船です。

全長24Kmもあるこの大型船は、密閉循環型の環境と、
コールドスリープ装置を備えた、言わば眠れるスペースコロニーです。

こんな物が、何故か宇宙を彷徨っています。
それも、通常空間ではなく異空間を彷徨っているのかは真相は伏せられています。

グリューエルとその妹グリュンヒルデは「黄金の幽霊船」をめぐり敵対しています。
その理由が明らかになっていませんが、
弁天丸は単艦、セレニティーの艦隊と嵐の宇宙で戦闘する事になります。

1) 弁天丸は観測用のポットを多数射出
2) 敵艦隊やかつての調査隊の観測ポットも多数この宇域に存在
3) セネニティーの艦隊を弁天丸が補足
4) 空間の歪みを観測ポットが補足

ここまでは普通の展開

5) 弁天丸が超光速航行を敢行
6) ゴミの多い空間に遷移する為、反物質ミサイルを先行させ着地点を事前に掃除

ウワー、こんなゲイコマなアニメ今まで見た事がありません。
普通は、ゴミだらけの空間に遷移する宇宙船の映像に、
「出現空間に物質が存在すると危ないよ!」と視聴者がツッコミを入れるシーンです。

そして、この一連の複雑なSF的設定を、
「説明調」になる事無く緊張感のあるシーンの中にさらりと挿入しています。
 
「よくもまあ、こんな荒れた空間に降りられたなぁ~」

「無事じゃない、船体表面で極小規模だが融合爆発の反応が出ている。
 船の中に食らってらただじゃ済まないぞー!!」

「先行させたミサイルの爆発が弁天丸のタッチダウンの地点と少しズレタ・・・
 次は大丈夫だ、修正用のデータを取った」


セリフは「融合爆発」と「先行させたミサイル」としか言っていません。
そこから、超光速飛行に着地点を掃除する為に「反物質ミサイル」を先行させ、
反物質と通常物質の反応により、空間のゴミを消失させたのかと視聴者に推測させます。
・・・・こういう脚本、なかんか書けないですよね。
視聴者が「反物質」の概念を持っていなけばチンプンカンプンですが、
それを一々説明して、シーンのテンポを落とさない所が素晴らしい。
視聴者がもし疑問を感じたならば、視聴者はネットでいくらでも質問できる環境は整っています。


7) 敵に包囲される弁天丸
8) 敵護衛艦2隻の間を強硬突破
9) ビーム砲を広角斉射して、敵のレーダーを潰し追跡を妨害する作戦に出ます

10)  敵の追撃のビームを撹乱する為、ビーム撹乱材(アルミ箔みたいなもの)を
   散布しながら弁天丸は逃走。



敵艦のビーム砲の追撃をビーム撹乱箔(チャフ)で拡散させて離脱

うーん、痺れます。
攻撃は一撃離脱。
さらに、装甲の厚い護衛艦の撃沈などは最初から狙わず、
敵の目であるレーダーや観測器を、広角ビームで焼く尽くす作戦。
とても女子高生船長とは思えない姑息でいた効果的な作戦です。

■ 空間を引き裂いて出現する「さまよる黄金の幽霊船」 ■

今週はいよいよ「黄金の幽霊船」の出現です。

弁天丸は空間の歪みを追跡しています。
それこそが、「黄金の幽霊船」なのです。

すると、巨大な重力波のリングが船体を揺さぶります。
次いで、巨大な空間の裂け間が現れます。
これは、さながら小型のブラックホールか超新星爆発です。



弁天丸は船首を衝撃波に向けます。
木の葉の様に翻弄されながら、それを乗り切った弁天丸の前に現れたのは
長さ24Kmにも及ぶ、巨大な「黄金お幽霊船」

・・・・うーん、ラピタだ。

幽霊船は「弁天丸」を収容すると、再び異空間に没して行きます。



セレニティー王家と「黄金の幽霊船」の謎が次週と明かされるのか!!!
一週間なんてとても待てそうにありません。

本日は「モウレツ宇宙海賊」を題材にして、
SF作品における「ディテール」の重要性について検証しようと思いましたが、
単なるオタクトークと成り果てました。失礼しました・・・・。


最後にお詫びでは無いですが、オマケ。

キャラクターデザインを担当した「アキマン」こと、
カプコンの天才絵師、安田朗の筆によるマリカとシュニッツァー。

痺れます。







哺乳類・厚皮目・新聞科・サンケイシンブン・・・要はツラの皮が厚いのです

2012-03-17 07:27:00 | 分類なし
 

■ 厚皮動物? ■

18世紀の動物分類学では厚皮目という分類が提唱されていました。
象やサイなどの動物を総称す分類です。
この分類は現在では採用されておらず、象は長鼻目に分類されています。
「まんまじゃネーかぁーーー!!」と思わず突っ込みの一つも入れたくなりますが、
どうやら「厚皮目」なる種族は現存している様です。

それは「産経新聞」。

■ 菅直人が東電の原発からの撤退を防いだ ■

「幹部は死んだっていい。俺も行く」 原発危機的状況に菅元首相 東電が発言詳細記録
2012.3.15 08:43 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120315/dst12031508470009-n1.htm

<全文引用>

水素爆発が相次ぎ福島第1原発事故が危機的状況に陥っていた昨年3月15日未明、菅直人首相(当時)が東京電力本店に乗り込んだ際の「60(歳)になる幹部連中は現地に行って死んだっていいんだ。俺も行く」などとの発言を、東電が詳細に記録していたことが15日、分かった。

 記録によると、本店2階の緊急時対策本部に入った首相は、政府・東電の事故対策統合本部の設置を宣言。「このままでは日本国滅亡だ」「プラントを放棄した際は、原子炉や使用済み燃料が崩壊して放射能を発する物質が飛び散る。チェルノブイリの2倍3倍にもなり、どういうことになるのか皆さんもよく知っているはず」と強い危機感を示した。

 さらに「撤退したら東電は百パーセントつぶれる。逃げてみたって逃げ切れないぞ」と迫った。

<引用終わり>

録画されていた! 菅前首相の叱責映像、東電は「公開ない」2012.3.14 23:10
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120314/dst12031423130025-n1.htm

<引用開始>

東京電力福島第1原発事故で、昨年3月15日に菅直人前首相が東電本店を訪れて東電幹部らを激しく叱責する映像を、東電が録画していたことが14日、分かった。国会が設置した事故調査委員会(委員長・黒川清元日本学術会議会長)が国会内で開いた会合で明らかにした。東電は同日の記者会見で「公開は考えていない」としている。

 事故調によると、東電本店や第1原発の免震重要棟をつなぐ、社内のテレビ会議システムの映像がDVDに録画されていた。

 音声つきの映像もあるが、菅前首相が東電本店を訪れた際の映像の部分には、音声はついていなかったという。

 映像には、菅前首相の叱責を画面越しに注視する第1原発の吉田昌郎所長(当時)も映っており、叱責の最中に4号機が水素爆発した際、ヘルメットを取り出してかぶる姿も残っているという。

<引用終わり>



今更事実を知った振りをしていますが、
一年前に彼らが何を書いていたか?

人力でGOの次の記事で振り返ってみましょう。

「国民を救ったのは菅総理・・・メディア・リテラシーという視点」
人力でGO 2011.04.11

http://green.ap.teacup.com/applet/pekepon/postmsg

<全文引用>

■ 産経新聞の記事を読んで下さい ■

長いですが全文引用させていただきます。

<産経新聞 4/10より引用>

首相執務室は開かずの間 「何かあったらお前らのせい」

首相官邸に「開かずの扉」がある。5階の首相・菅直人の執務室。3月11日の東日本大震災発生後しばらくは早朝から深夜まで怒号が響いていたが、震災から1カ月を迎える最近はトンと静かになった。中の様子はどうなっているのか。

【写真をみる】菅首相、外国人からの献金を返還

 ◆官僚の足遠のく

 「やっと精神的な安定期に入った」「気力がうせているのではないか」-。そんな臆測が乱れ飛ぶ。各国外交官も政府関係者に「首相は本当に大丈夫なのか」と真顔で問い合わせてくるという。

 なぜ扉が開かないのか。理由は一つ。よほどの緊急時でない限り、誰もノックしようとしないからだ。官僚であろうが、政務三役であろうが、誰かれかまわず怒鳴り散らす。ある官僚は、東京電力福島第1原子力発電所の事故の最新状況の報告に入ったところ、菅から頭ごなしに、こう言われた。

 「そんな話は聞いていないぞ」

 日本の官僚は「首相がすでに知っている話を報告したら恥だ」と教育されてきた。マスコミに政策をスクープされることを嫌う最大の理由はここにある。ところが菅には通用しない。

 官僚の訪問は絶えた。4月に入り、官僚が首相執務室を訪ねたのは7日まででわずか8組。ある官僚は吐き捨てるように言った。

 「民主党政権であろうと大連立であろうと何でもいい。とにかく首相だけは代わってほしい。もう官邸を見るのも嫌だ…」

 さすがの菅もまずいと思ったらしい。3月26日、前国土交通相・馬淵澄夫を首相補佐官に起用したあおりで首相補佐官を外された衆院議員、寺田学の机を首相秘書官室に置かせ、「開かずの扉」の“開閉係”を命じた。34歳の寺田は64歳の菅と親子ほど年が離れているせいか、腹も立たない。腰が軽く頭の回転が早いところも気に入っているようで妻・伸子と並ぶ「精神安定剤」となっている。

 もう1人、頻繁に首相と会っている男がいる。内閣情報官・植松信一。官邸の裏通路を使い首相執務室に出入りするので新聞などの「首相動静」に載ることはないが、週に2~3回は報告に入っているという。

 植松の報告で菅がもっとも神経をとがらせているのは政界の「菅降ろし」の動き。次に気になるのは内外メディアが自らをどう報じているかだという。

 ある官僚は執務室に山積みされた新聞や雑誌の切り抜きを見て愕然(がくぜん)とした。記者団のぶら下がり取材に応じないどころか、災害対策基本法に基づく中央防災会議さえ開こうとせず、執務室に籠もって一人で新聞や雑誌を読みふけっていたとは…。そこに未曽有の国難にどう立ち向かおうかという発想はない。

 ◆「現場見てないだろ」

 「どんなことがあっても原発の異常を食い止めるんだ。みんな覚悟はできているだろうな!」

 3月11日午後4時25分すぎ。東電福島第1原発の異常を伝え聞いた菅は、首相官邸地階の危機管理センターから執務室に移ると、官房長官・枝野幸男ら官邸スタッフを前にこう命じた。鬼のような形相に一人はこう感じた。「死者が出ることを覚悟しているな…」

 東工大応用物理学科卒で「ものすごく原子力に強い」と自負する菅はさっそく執務室にホワイトボードを持ち込み、原子炉の格納容器への海水注入などを次々に指示。午後10時に経済産業省原子力安全・保安院から炉心溶融の可能性を指摘されると菅は12日午前1時半に炉内の蒸気を排出するベントを急ぐよう指示した。

 ところが、東電の反応は鈍かった。しびれを切らした菅は午前6時14分、陸上自衛隊のヘリに乗り込み第1原発の視察を強行。「こっちは人命を考えてやっているんだ。早め早めにやらなきゃダメだ」と東電副社長・武藤栄に詰め寄った。

 「東電の見通しは甘い。どうなってるんだ!」

 菅の意気込みはますます空回りし、秘書官らに当たり散らした。保安院幹部らの説明にも「お前たちは現場を見てないだろ!」。面識もない官僚に突然電話で指示を出し「何かあったらお前らのせいだぞ」と責任をなすりつけた。

 そして東電が第1原発からの撤退を検討していることを聞きつけると15日午前4時15分、東電社長の清水正孝を官邸に呼びつけた。

 菅「清水さんだったらどうしますか?」

 清水「残ります…」

 菅は言質を取ったとばかりに5時35分に東京・内幸町の東電本社に乗り込み、「撤退などありえない。撤退したら東電は百パーセント潰れる」と恫喝(どうかつ)した。

 感情まかせの行動にしか見えないが、菅は「原発問題は官邸主導でやれる」と確信したようだ。政府と東電の統合連絡本部を設け、東電本店に経産相・海江田万里と首相補佐官・細野豪志を常駐させた。主要官庁の閣僚不在により政府機能はますます失われた。


 ◆説明に逆ギレ

 「助けてくれないか!」

 3月16日夜、元防衛政務官、長島昭久の携帯電話に細野の悲痛な声が響いた。

 長島「何を?」

 細野「『何を』なんて次元じゃないんですよ…」

 菅は自衛隊にヘリからの放水を指示したが、自衛隊は放射線量を気にしてなかなか応じない。地上からの放水のオペレーションも自衛隊、警察、消防の調整がつかないという。

 その間も菅からは「早く放水させろ」と矢のような催促が続き、細野はすっかり参っていた。

 原子力災害対策特別措置法を適用すれば、首相はいろいろな指示が出せる-。これを説明すべく2人は17日に菅と面会した。

 「指示はとっくに出した。なぜ進まないんだ!」

 菅は逆ギレした。ところが菅の「指示」とは口頭で個別の官僚に命じただけ。これでは官僚組織は動かない。長島らは慌てて指揮系統を自衛隊に一元化させる関係閣僚への「指示書」を作成させた。これがその後の放水作業につながった。

 それでも菅は納得しなかった。18日に官邸を訪ねた元連合会長で内閣特別顧問・笹森清にこんな不満を漏らしている。

 「現場の意思疎通がうまくいっていないんだ…」

                    ◇

 ■高飛車、淡泊 伝わらぬ指示

 首相・菅直人の官僚機構と東電への不信は深まるばかり。東工大教授で原子炉工学研究所長の有富正憲らを次々と内閣官房参与として官邸に迎えたことは証左だといえる。

 その数はすでに6人。「セカンドオピニオン」を背後に付け、菅はますます高飛車になった。東京電力や原子力安全・保安院などが自らの指示に抵抗すると「俺の知ってる東工大の先生と議論してからこい」と言い放った。

 ところが、3月末になると菅はすっかり淡泊になった。首相補佐官・細野豪志が、日課となった東電福島第1原発の状況を報告しても「そうかあ…」「それでいい」-。どうやら事態の長期化が避けられないことを悟り、気合を持続できなくなったようだ。

 菅は4月1日の記者会見で「専門家の力を総結集しているが、まだ十分安定化したというところまでは立ち至っておりません」と長期化をあっさり認めた。

 淡泊になったのは理由がある。東日本大震災の発生後、菅の頭は原発でいっぱいだったが、ようやくガソリンや物資供給など被災者支援が後手に回っていたことに気づいたようだ。

 ◆政務三役も「無言」

 実は首相官邸の指示がなくても各省庁は阪神・淡路大震災を先例にさまざまな被災者支援や復旧策をひそかに準備していた。ところが政務三役の「政治主導」が障害となった。

 ある局長級官僚は「官邸も動かないが、政務三役も何も言ってこない」といらだちを隠さない。

 民主党政権になり、政務三役に無断で仕事をやってはいけないという「不文律」ができた。「勝手なことをやりやがって」と叱責されるのを覚悟の上で官僚機構は黙々と対策を練ったが、実行のめどは立たない。政治不在がいかに恐ろしいか。官僚らは思い知った。

 ◆自衛隊に多大な負担

 自衛隊も官邸の機能不全の被害者だといえる。

 「遺体の搬送や埋葬まで自衛隊が背負わされているんだぞ!」

 3月23日、防衛相・北沢俊美は厚生労働省に怒鳴り込んだ。自衛隊の本来任務は行方不明者の捜索だが、遺体を発見すれば市町村に渡す。ところが市町村は被災で動けず葬儀業者も見つからない。やむなく遺体安置所から埋葬地までの遺体搬送や埋葬までも自衛隊が請け負った。救援物資輸送やがれき撤去などの任務にも影響が及んでいた。

 北沢は3月18日に官房長官・枝野幸男に調整を求めたが、官邸の最終的な返答は「関係省庁でよく協議してほしい」。そこで北沢は埋葬を所管する厚労省との直談判を試みたのだ。

 厚労相・細川律夫も「確かに自衛隊ばかりにお願いするわけにはいかないな」と応じ「官邸抜き」の調整が始まった。結局、事務レベルの関係省庁連絡会議が開かれたのは4月1日。運輸行政を担う国土交通省の協力を得て民間業者による遺体搬送態勢が整ったのは4月5日だった。

 「政治家だけじゃなくてあらゆる者を総動員させるべきだ。要は役人をどう使うかなんだ」

 国民新党代表・亀井静香は2日、こう忠告したが、菅はのんきに返答した。

 「まあ役人を使えるのは一に亀井さん、二に私、三に仙谷さんだな…」(敬称略)

<引用終わり>

「坊主憎けりゃ袈裟まで」とは、まさにこの様な記事の事を言うのでしょう。


■ 菅総理の指示は的確 ■

私は今回の原発事故を大規模な再臨界事故から救ったのは、格納容器(圧力容器ではありませんよ!)への海水注入だったと考えています。

圧力容器の表面温度400℃・・・空焚きという選択肢
http://green.ap.teacup.com/applet/pekepon/20110321/archive

福島原発は原子力塩田となったのか?・・・矛盾するデータの意味するもの
http://green.ap.teacup.com/applet/pekepon/20110324/archive

現場に余程の切れ者が居て、現場判断で格納容器への海水注入やベントを行っているものと思っていまいた。

① 圧力容器の本体、あるいは配管の損傷により地震直後より圧力容器の冷却は機能不全
② 圧力容器内の水位低下で、早い時点から燃料棒の溶融は始まっていた。
③ 官邸はこの情報を早期に掴んでいた
④ 東電は現場作業員を50人しか残しておらず、メルトダウンを覚悟していた

⑤ 菅首相が直接指揮して、格納容器に海水を注入させた
⑥ 原子炉温存の為、海水注入をいやがる東電を首相が恫喝した

⑦ 東電は現場から作業員を退避させようとした
⑧ 東電の清水社長を菅首相が恫喝して、東電が逃げる事を許さなかった

⑨ 4号機の使用済プールの温度上昇を重視して自衛隊にヘリからの散水を指示
⑩ 被曝を理由にイヤがる自衛隊を説得

⑪ 消防庁のハイパーレスキューに放水させる

さて、菅首相の指示の何処に誤りがあったでしょうか?
結果的に首相の指示は的確で、スリーマイル島事故の対処と同じ対処を行っています。(格納容器に注水による冷却維持)

ただ、福島原発では地震によって冷却循環系が損傷していたので、高濃度汚染水が大量に漏出する事と、電気系統の完全喪失により、原子炉建屋の換気が出来ずに水素爆発が起きたという不運が重なりました。

■ トップダウンこそが正しい選択肢 ■

現場では東電、自衛隊、消防という監督官庁が異なる組織が活動していました。
縦割りの弊害で、これらの組織を一括して機能させる為には、官邸の指示は不可欠だったでしょう。

産経新聞の記事では、「原子力災害特別処置法」を発動すれば、対策はもっとスピーディーであったろうと書かれています。

はたして、どうでしょう。他官庁の干渉を嫌うそれぞれの官僚達の意地の張り合いに終始したのではないでしょうか?

自衛隊員や消防職員の「死亡事故」を恐れる官僚達は、思い切った対策が打てない事は、ヘリの放水の現状を見ても分かると思います。

いつ、再臨界を起こすか分からない使用済燃料プールに散水するのに、ヘリの床にタングステンの板を敷くなどという時間を費やした挙句、ヘリをかなり上空で飛ばせ、さらに通過させながら散水したので、いかに腕の良いヘリのパイロット達でも、効果的な散水とはなりませんでした。

ヘリのパイロット達は自衛隊でも有名な程、度胸が据わっているそうです。防衛庁幹部は年間被曝量100(mSv)という数字に縛られていたのでしょうが、ヘリパイ達は、たとえ1000(mSv)の被曝をしたとしても任務を遂行する勇者達です。(最前線でのヘリコプターでの作戦遂行は非常に危険な任務です。普通の神経では出来ないでしょう。)

■ 菅首相がベントを遅らせたのでは無い ■

世間では「菅首相が原発を視察したから、初動のベントが遅れた」と騒いでいます。

産経の記事では、ベントを指示したのは菅首相です。

ベントを遅らせたのは、首相視察に気を遣った現場の判断か、保安員でしょう。

もし、首相の視察がベントの妨げになるならば、彼らはその趣旨を官邸に告げれば、菅首相は現場視察を行わなかったはずです。

責められるのは首相では無いハズです。

■ 一人ぼっちの対策室 ■

菅首相の最大の問題点は、「他人に任せられない」点にあります。

小泉首相の秘書官だった飯島勲は、「官邸に10人の少数スタッフの対策室を設置して、官邸主導で超法規的な指示を出さなければ、官僚組織は動かない」と言っています。

今回、菅首相をサポートする人材が見当たりません。
首相自らが、発電機の大きさや仕様を電話で確認して、空輸出来るかを問い合わせる必要が何処にあるでしょうか?

本来は首相は決断と責任を負うだけの存在のはずです。

■ 地震への対策も問題無かった ■

上記記事を読むと、首相が原発対策に集中するあまり、震災対策が二の次になったと書かれています。

阪神大震災の時、当時の村山首相は、社会党出身の首相であったために、自衛隊の災害派遣に二の足を踏み、結果として自衛隊の初動投入が送れた為、救えるはずの多くの命を犠牲にしてしまいました。

今回、菅首相は、自衛隊の10万人派遣をトップダウンで指示すると同時に、即応予備自衛官と予備自衛官の投入指示しています。

即応予備自衛官と予備自衛官は自衛隊OBなどで組織される、非常勤の自衛官達で、今回の派遣で初めて実働しました。

防衛省制服組は、即応予備自衛官と予備自衛官が前例の無い事から投入に二の足を踏んだと言われていますが、菅首相がこれを強行しました。

自衛隊内では、素人の首相に命令される不満があるでしょうが、結果的に首相の自衛隊大量投入によって、東北地方は救われています。

■ メディア・リテラシー ■

日本には様々なメディアがあり、インターネットも含め、山の様な情報が飛び交っています。

この情報の中から、価値のある情報を集め、分析して、真実を知る行為を「メディア・リテラシー」と呼びます。

震災後の菅首相の行動に対する評価でも、産経新聞と「人力でGO」ではこれ程違う評価をします。

どちらが正しいかは、皆さんが判断されれば良いでしょう。

ただ、私は亡国の危機に際して、首相の足を引っ張って、政争に明け暮れる永田町の住人や、それを煽り立てるマスメディアとは異なる視点がある事を、皆さんに知って欲しいと思っています。

<終わり>



■ 産経新聞・・・「逝ってよし」 ■

昨年4月11日の記事は、
「東電に怒鳴り込むなど菅首相が官邸主導で空回りして事故を深刻化させた」
と私には読めます。

ところが、最近の産経新聞の一連の報道は
「菅元首相に抵抗した東電の責任は重い」
に変化している様に感じられます。

いずれにしても国家の一大事に首相や政府の足を引っ張り、
今度は息絶え絶えの東電を叩く・・・。

東電を叩くのも良いですが、東電が破綻したら株価はどうなりますか?
三井住友を筆頭に兆円単位の損失が発生すれば、銀行株だって無事では済みません。

そもそも東電とて被害者だと私は思っています。
原発は国家事業ですからリスクを考えたら原発は国営であるべきです。
それを民間企業の電力会社に押し付けた事から全ては始まっています。

事故時の電力会社の保障に制限を儲け、過大な保障を国家補償としているのも、
そもそも原発事故のリスクなど民間会社には負いきれない事は分かっていいるからです。

確かに現場を放棄しようとした東電の責任は万死に値します。
しかし、それ以前に、旗色一つでコロコロと意見を変えるマスコミは
100万回死んでも、死に足りません。

私は産経新聞に次の言葉を送りたい。

「逝ってよし」

・・・あ・・でもそろそろ経営が危なくなるのでは?

「頑張れベアー!」・・・ゴールドマンをぶっとばせ

2012-03-16 18:35:00 | 時事/金融危機
 



■ この人が出てくると応援したくなる ■

「頑張れベアーズ」ではありません、
前連邦預金保険公社FDIC総裁、シーラ・ベアーであります。

http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090811/mr_bailoutより引用

<引用開始>

「シーラ・ベアは最低だ。まあ、それは今に始まったことではないが、それでもウェッセルの本は、ベアが本当に不愉快な規制当局者であることを改めて納得させてくれる。彼女はバーナンキ、ガイトナー、そしてポールソンの金融システムを救おうとする努力を、あらゆる機会を捉えて駄目にしようとした。それ以前に彼女は、ワシントンミューチュアルの債券保有者にパニックの真っ最中に巨額の損失を蒙ることを強いるという途轍もないミスをしでかした。他の規制当局者が、すべての救済計画から彼女を締め出そうと躍起になったのも無理はない。彼女の銀行での業務経験はなんと合計0年であり、彼女は一つのことしか気にしていない:彼女のイメージだ。この歩く列車事故がFDICから去るのは早ければ早いほど良い。」

<引用終わり>

前連邦預金保険公社FDIC総裁であたシーラ・ベアー氏は、
どうやら大変「煙たい」存在の様です。

リーマンショックで破綻する地方銀行を、
粛々と処理していった彼女には強い意志の様な物を感じました。
ブッシュ政権からオバマ政権と、彼女はFDICを率いて孤軍奮闘しました。

そして彼女の頑な姿勢は、多分金融業界を甘やかす勢力からは邪魔に写るのでしょう。

一方で彼女を賞賛する声もありました。

<上記ブログより引用>

「シーラ・ベアはウェルズからワコビア買収のより良い提案を引き出したが、その前にはシティと有利な交渉を進めていた。
彼女はワコビアとワシントンミューチュアルの債券保有者に損させることを厭わなかった。
彼女はガイトナー/ポールソンの救済の努力に反対し、PPIPを葬った。
彼女は銀行での業務経験が0年である。
私に言わせれば、神よ彼女を祝福したまえ、それはまさに我々が規制当局者に必要とする資質だ。米国民よりは債券保有者に損を負わせる意志。米国の銀行業界を助成するのではなく、規制しようとする意志。気骨。>」

<引用終わり>

という事で何が言いたいかと言うと、
私は彼女の勇ましいお姿が大好きなんです。
・・・ただそれだけ。

■ ゴールドマンサックスに噛み付いたベアー ■

FDIC総裁を退いた後、あまり噂を聞かないな・・そう思っていたらこんな記事が。

「米ゴールドマンの資本還元拡大は禁止を-前FDIC総裁」(Bloomberg 2012.03.16)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0YRHH6JTSE901.html

<引用開始>

3月16日(ブルームバーグ):米投資銀行ゴールドマン・サックス・グループは米連邦準備制度理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)でレバレッジが過剰であることが示されたため、増配や自社株買い戻しを禁止されるべきだと、ベアー前連邦預金保険公社(FDIC)総裁は指摘した。

FRBが今週発表したストレステストの結果によれば、ストレステストのシナリオでは金融機関4社のレバレッジ・レシオが4%を下回った。そのうちシティグループとメットライフの2社はFRBから増配や自社株買い戻しを禁じられたが、残りの2社であるゴールドマンとモルガン・スタンレーは資本計画の承認を受けた。

ベアー氏は15日のインタビューで「レバレッジ比率を4%割れの水準に押し下げるような配分は承認されるべきではない」と述べ、「レバレッジが1対25なら、危機に陥れば、これらの銀行は取り付け騒ぎに見舞われるだろう」と語った。

同氏は昨年7月のFDIC総裁退任前に、レバレッジ比率が国内外の銀行規制でより重視されるよう働き掛けていた。同氏の主張は当初はバーゼル銀行監督委員会に受け入れられたものの、欧州連合(EU)がその後難色を示してきた。

レバレッジが高いと資産価格の少しの変化でも資本が吹き飛び支払い不能になる恐れがある。FRBはストレステストでレバレッジ比率の基準を米国の法律で最低限とされる3%とした。ゴールドマンとモルガン・スタンレー、シティグループは3%のグループに入っていた。

2008年のベアー・スターンズとリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻の際に両行の単純なレバレッジは1対33強(レバレッジ比率で3%未満)だった。ベアー氏によると、市場の混乱時に投資家が注目するのはリスクベースの資本指標ではなく、レバレッジ比率だと指摘した。

<引用終わり>

良くぞ言ってくれました。
スカっとします。


■ ゴールドマン帝国に立ち込める暗雲 ■

最近ゴールドマンの旗色が悪いようです。
業績も振るわないようですが、
要職の社員が次々に退社しているという噂です。

そして昨日はワシントンポスト紙が、元ゴールドマン社員の投稿を掲載しました。

「米ゴールドマン退社社員が経営陣を批判、NYT紙に寄稿」(ロイター 2012.03.15)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE82E00220120315?feedType=RSS&feedName=topNews

<引用開始>

[ロンドン/ニューヨーク 14日 ロイター] 米金融大手ゴールドマン・サックス(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)を退社する社員が、14日付のニューヨーク・タイムズ紙に経営陣を批判する手記を寄稿した。同社の社員が新聞紙上で経営陣を批判するのは極めて異例。

寄稿したのは同社の株式デリバティブ部門に勤務していたグレッグ・スミス氏。

同氏は手記のなかで、ゴールドマンが「かつてないほど有害で破壊的になっている」と指摘。「容赦なく顧客を食い物にする姿を見て気分が悪くなる。この1年で5人のマネジングディレクターが自分の顧客を『muppet(操り人形、英国では「愚か者」を意味する俗語)』呼ばわりしていた」と批判した。

ゴールドマンは短い声明を発表し「今回表明された見解は、当社の経営手法を反映したものではなく、同意できない。顧客が成功しなければ当社の成功もないというのが当社の見解だ。当社の行動の根幹にはこの根本的な事実がある」と反論した。

金融規制改革法の成立に尽力したバーニー・フランク下院議員はロイターに対し、金融規制改革に反対している金融業界に「大きな影響」があるだろうと指摘。「ゴールドマン・サックスなどは、顧客と経済全体にどのような貢献をしているのか説明する責任がある」と述べた。

この日のゴールドマン株は3.3%安で終了した。

スミス氏のゴールドマンでの肩書きはエグゼクティブ・ディレクターだったが、同社には約1万2000人のバイスプレジデント、エグゼクティブ・ディレクターがおり、従業員約3万3000人の36%がスミス氏と同様の肩書きを持っている。

スミス氏のコメントは取れていない。

<引用終わり>

この記事は世界中で注目されています。

リーマンショック後も一人勝状態にあったゴールドマンに対て
急に風当たりが強くなってきた様に思えます。

この事が何を意味するのか?
シティーバンクもストレステストに不合格だった様ですし、
アメリカの金融界で何か大きな変化が起きているのでしょうか?

JPモルガンあたりへの非難が高まれば、
何となく傾向が見えそうです。

そして、アメリカの国民銀行のバンカメが擁護され、
バンカメにメリルリンチやカントリーワイドを押し付けた
ガイトナーやバーナンキの責任追求が始まれば、
ちょっと面白い事になるかも知れません。


この様な事態に発展すれば、一部で噂される
デービット・ロックフェラー(シティーバンク)や
ジェイ・ロックフェラー(ゴールドマンサックス)の失脚の情報も
信じられる様になるかも知れません。


真相は闇の中ですが、ゴールドマンの動向に要注意です。



<追記>2012.03.18

出ましたね。
今度はJPモルガンの現役社員から
米国商品先物取引委員会(CFTC)へ、内部告発!
但し、CFTCのホームページからは直ぐに削除された様です。

http://americankabuki.blogspot.jp/2012/03/jp-morgan-chase-whistleblower-tells.html

「ゴールドマンサックス同様詐欺的な手法が行なわれている」
「1兆ドル以上のデリバティブを隠し、ギリシャ危機による金融崩壊を恐れている」
「バランスシート上の負債が調査対象になっていないのはおかしい」
「私は正直に全従業員に上記の内容を告発し、弁護士と連絡を取ります」

ってな内容の様です。

・・・なんだかなー。
何かが起きていそうだけれど、フェラ組の悪あがきという線もあるし・・・。



<追加版>市場の真実の姿・・・ダウの出来高が激減している  

2012-03-16 18:21:00 | 時事/金融危機
 

■ ダウ平均13000ドル回復の裏で激減する出来高 ■


ケンミレ株式情報より
http://www.miller.co.jp/chart.cgi?code=0200&div=I

アメリカではダウ平均が13000ドル台を回復したと大喜びです。
そこでダウ工業株化のチャートを見てみましょう。

確かに株価は2008年のリーマンショック前に戻りつつあります。

問題は出来高です。
出来高が株価の上昇と反比例するかの如く日に日に落ち込んでいるのです。
(但しグラフの最後は今週なので、週半ばの出来高合計なので、
 最終的にはもう少し高い出来高になるでしょう)

1) ダウ工業株の出来高が顕著に減っている

2) 株価はウナギ上り

3) 市場参加者が減っている中で一部の買いが価格を吊り上げている

株をやられている方は当然ご存知かと思いますが、
これから、高い相場に釣られて出来高が持ち直すのか、
それとも、最後の上昇相場で皆さん売り逃げて、
そして誰も居なくなるのか・・・・。

アメリカはQE3待望論が出るほどに、資金が逼迫してきています。
それでは、ダウを押し上げているのは誰か?
昨年末から大量供給された、ヨーロッパの資金なのか?



<追記>

■ 高頻度取引(HFT)を差し引くと出来高は恐ろしく低い? ■

ここで一つ気になるのが、「HFT=ハイ・フリックエンシー・トレーディング」の存在です。

現在、大手の証券会社やアメリカのかつての大手投資銀行は
コンピュータープログラムによるアルゴリズム取引を取り入れています。

これは、取引所のメインサーバーの中に自社のプログラムを常駐させ、
売り買いの情報をいち早く察知して、
誰かの取引の間に自動的的に自分の売り買いを何回も介入させるシステムです。

投資銀行はほとんど、自動でこの取引を大量に行います。
これは一般投資家にしてみれば詐欺の様な行為ですが、
證券取引所事態が、自身のサーバーの中に彼らの領域を確保しているのですから
いわば取引所公認の詐欺行為と言えます。
昔で言えば「場立ち」の證券マンが、売り買い情報を取引所で盗み見ている様な行為です。

ところでHFTが何故許されるかと言えば、
取引金額が格段に増えるからだと予想されます。
證券取引所の利益は売買手数料ですすから、
取引回数は多い方が、利益が上がります。

一方、HFTは證券取引の出来高に影響を与えます。
売り買いが高速で繰り返されるのですから、
当然「出来高」はかなり水増しされるはずです。

そうした視点で上のグラフの出来高を見てみると、
NYダウの出来高はHFTによって水増しされていると思われ、
その影響を除けば、市場にまともばプレーヤーは
ほとんど残っていないのではないかと危惧されます。

東京證券取引所も同様なシステムを取りれ、
巨額の投資をして回線を高速かしました。
そうしなければ外人投資家達が東京市場から去ってしまうからです。

現在では国内の證券会社もこれに対抗する為に、
東証との回線にスピードを目安に事務所の場所を決めています。

この様に、金融市場は既にまともな状態では無く、
自動取引のプログラムが狂ったように売買を返す場となっています。

■ 暴落を引き起こすアルゴリズム取引 ■

リーマンショック後、ディーラーの入力ミスで大量の売りが発生し、
各社のFHTのシステムがそれに過剰に反応し、
NY市場が暴落するという事件がありした。

これをきっかけとして、FHTが過剰に反応しすぎた場合は、
自動的に取引を抑制して暴落を防ぐ
サーキット・ブレーカーなるシステムが導入されました。

ただそれは、大幅な暴落が発生した場合で、
100ドル、200ドルの下げに対しては発動しないようです。
ですから、世界経済に不安要因が生まれ、
リスク回避から株式市場から資金が流出するきっかけが発生すれば、
100ドル、200ドルは一気に暴落します。

それ以上は暴落しない様にプログラムされているのでしょうから、
株価は底を打った様に見え、
またぞろ、買いが入って、株価は徐々に上昇し始めますが、
これをアルゴリズム取引が感知して、大量の買いを入れるので、
株価は直ぐに持ち直した様に見えます。

・・・ところで本当の危機が発生した時はどうなるのでしょうか?

各社売り逃げて、自社が逃げ遅れるなどという事は考えられませんから、
多分、サーキット・ブレーカーは本当の暴落局面では機能しないのではないでしょうか。
LAST EXITなるスイッチをポンと押すと、
サーキットブレーカーが解除されるという、
一種ヤーターマン的なイメージが脳裏に浮かんで来ます・・・。

あるいは、暴落させも禁じられた異様な世界が
現在の株式市場なのかも知れません・・・。