下記の記事には大きな間違いがあります。
アメリカのマネタリーベースにはFRBの銀行融資は含まれません。
さらにFRBの銀行への貸し出し16兆ドルは
1年間に短期融資で複数回融資「ノベ」の貸し出し量で、
実質は1兆ドル程度だそうです。
さらに、これらの資金はきちんと返済されている様です。
不確かな情報を拡散してしまった事を、お詫びいたします。
■ FRBの16兆ドルはマネタリーベースに反映さえれている ■
FRBの16兆ドルの低利(無利息?)融資は、
額があまりに大きいので、ビックリしましたが、
よく考えたら、アメリカはサブプライム危機後、
マネタリーベースを3倍に膨張させていますので、
16兆ドル以上をばら撒いても、おかしくは無いですね。
という事でアメリカのマネタリーベースの推移を見てみます。
2007年前が約8兆円で推移してきましたが、
2007年から急拡大して、2010年末には約20兆ドルになっています。
先日の16兆円のFRBの融資からアメリカ分を抜き出すと
約10兆ドルになり、TARPなどで増刷された分を足せば
FRBがデータを偽っていたという事では無いようです。
さらにグラフを見ると、QE2の実施時期にも急拡大しており
この額もQE2の額の6000億ドルを大きく上回っています。
■ QE1、QE2と言って報道される額は一部である ■
アメリカのマネタリーべースがサブプライム以前と比べて
3倍という情報は私も知っています。
ところがQE1が約1.7兆ドル、QE2が6000億ドルという数字が
一般的に報道されるので、16兆ドルという数字との間に違和感を感じて
FRBの不正融資かと、思わず勘ぐってしまいました。
QE1やQE2はFRBが債券などを買い入れて、
自身のバランスシートを肥大化させながら市場に資金を提供する額で、
その他に通常の資金供給を行っている額が16兆円(世界全体)という事の様です。
アメリカの発表するマエンタリーベースはM2で、
海外のドルを含むM3では無いので
16兆ドルの内、10兆ドルがアメリア国内でのドルの増加分となるのでしょう。
ロンポールが議会のFRBを査察する様に要求して、
その結果提出された数字なので色眼鏡で見てしまいますが、
要はサブプライム危機以降、FRBは米ドルをジャンジャン供給しているという事です。
■ QE3が待ち望まれる訳 ■
アメリカの金融界ではQE3の実施が待ち望まれています。
これも、QE3の額として報道されるのは、
FRBが国債や債券を市場から買い上げる額だけで、
その裏ではそれを何倍も上回る資金供給が行われるのです。
ですからQEに合わせて、金融市場や商品市場の価格が上昇するのは当たり前です。
一方、異常なのは、それらの市場がQEが終了すると下落する事で、
結局数兆ドルという資金供給でも景気を活性化できていない事に問題があります。
■ ドル安は当たり前 ■
ユーロは昨年12月以来、マネタリーベースを急拡大させています。
それでも、マネタリーベースの増加量ではドルの圧勝です。
日銀は例によって口ではインフレターゲットと言っていますが、
資金供給量は50兆円そこそこです。
ですから、ドルは円やユーロに比べて供給量が圧倒的に多いので、
1/2や1/3に減価してもおかしくは無いのです。
「超円高」と言われていますが、
75円で「円安」だと言って差し障り無いでしょう。
マネタリーベースから見たドルの価値は、1ドル50円でも不思議では無いのです。
それが80円台という事はやはり「腐ってもドル」という事でしょうか?
■ 通貨安に取り付かれる世界 ■
特にアメリカは輸出では無く、
海外資産による所得収支で生きている国です。
強いドルの時代に投資した回収は、
弱いドルで行えば、為替差益が拡大します。
この様に通貨安の要求は、海外資産を大量に保有する国では常に発生します。
イギリスが良い前例でしょう。
1940年には1ポンド=4ドル3セントでした。
現在は1ポンド=1.6ドル程度です。
ポンドは下落するドルに対しても40%に切り下がっています。
■ 円高で海外資産に投資して円安で設ける ■
日本が貿易赤字に陥った事は記憶に新しいと思います。
貿易黒字を溜め込んだ日本円が高くなる事は避けがたい事です。
しかし、これは輸出産業の空洞化を招き、
貿易収支はある時点で赤字に転換する事も避けがたい事実です。
これはかつてアメリカやイギリスが辿って来た道です。
彼らはポンドやドルが強かった時代に海外投資しています。
そして、現在、自国通貨安を利用して、
回収額で為替差益を発生させています。
■ 対外債務国にはインフレの誘惑が付きまとう ■
さらにアメリカなど対外債務国はインフレの誘惑も付きまといます。
アメリカ国債や、自国内の債券を商品化して世界に売り歩いています。
当然、返済額は少ない方が良い。
そこで借金返済が相対的に楽になるインフレを望む傾向があります。
「弱い通貨が国益?」かとも思いますが、
「機軸通貨」だからこそ、自国通貨安やインフレを利益に変化できます。
ところが、この政策を普通の国がやると、通貨安に歯止めが掛からなくなります。
アルゼンチンやジンバブエが良い例でしょう。
アメリカとアルゼンチンの間には、
「機軸通貨」という大きな違いが存在するのです。