習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『死にゆく妻との旅路』

2011-12-24 23:48:31 | 映画
 これはなんとも辛い映画だ。見ていて暗澹たる気分にさせられる。映画自体は、このストレートなタイトルそのままの内容なのだが、詩的で美しいだけの映画ではない。ちゃんとシビアな現実を突きつけて来る。そこがしんどいのだ。  借金を抱えて、行き場のない夫婦が、住む場所、働く場所を求めて車に乗って日本中を旅する。だが、50代後半の男にはどこにも仕事はない。ハローワークに通い詰めるが、どこでも断られる。しかも . . . 本文を読む
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『メタルヘッド』

2011-12-24 23:38:47 | 映画
 摑みどころがない映画だ。孤独な少年の姿を追う。彼の内面の軌跡を見せて行く。彼の今ある姿を、ただ何の説明もなく見せるから、よくわからない。状況はわからないまま、ただ、彼が行動する後を追いかける。人間関係もわからない。だいたいこの『ヘッシャー』(これがこの映画の原題だ)って何者なのか? 最後まで見てもわからない。だが、最初の出会いのインパクトは大きいし、その後彼が少年につきまとい、家ま . . . 本文を読む
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堂場瞬一『ヒート』

2011-12-24 23:14:56 | その他
これは『チーム』の続編だ。前作は箱根駅伝の学連選抜チームを描いたが、今回は神奈川県知事の肝いりで開催される東海道マラソンを舞台にして、世界新記録に挑む運営サイドの物語。 知事からの特命を受け、かって箱根に出たという経験を持つだけの一介の県職員である音無が、大会全体の企画運営を任され、さらには、そこで、日本人ランナーによるマラソン世界新記録の樹立の達成も任される。そのためなら、どんな方法を使っ . . . 本文を読む
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演劇集団よろずや『バイバイ』

2011-12-20 23:38:34 | 演劇
 劇団結成15周年記念作品である。しかも「構想17年。結成前より、あたため続けてきた劇団にとっては念願の作品」(チラシによる)とある。寺田夢酔さんがずっとやりたいと願い続けたけど、時期尚早と断念してきたこの夢の企画を、今回満を持して実現する。万全の準備で贈る超大作。  だが、えてしてこういう企画は、肩に力が入り過ぎて空回りすることも多い。しかも、この企画は難しい。実在した人物の伝記物であり、闘病 . . . 本文を読む
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劇団きづがわ『歌わせたい男たち』

2011-12-20 23:01:07 | 演劇
見始めてしばらくして、この題材はもう古いのではないか、と思ってしまった。君が代問題なんてもう学校では問題視すらされていない。歌って当たり前。(まぁ、誰も歌わないけど)立って当たり前。もう誰も疑問視しないし、教員側も当然のこととして、それを受け入れている。抵抗するまでもないことになっている。  この芝居を見て、今頃こんなことで、ドタバタしている姿を描くなんて、時代錯誤も甚だしい。だから、なんかと . . . 本文を読む
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第2劇場『パラダイス・ガラージ』

2011-12-20 22:39:10 | 演劇
 これは思いがけない拾い物だ。いつもの、ちょっと緩い感じの新人公演のつもりで、見に行ったのだが、そのスタイリッシュな舞台に驚かされる。この緊張と緩和の絶妙なブレンド感。堪能させられた。まるでいつもの2劇の芝居ではない。もちろん阿部さんも音間さんもいない2劇である。若くて新鮮なキャストとスタッフが自分たちオリジナルの芝居を作る。作、演出は水町紫さん。凄い才能の誕生だ。  カフェ公演というスタイルの . . . 本文を読む
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『管制塔』

2011-12-19 21:47:40 | 映画
 この世界の果てまで行きたい、と願う。もう、どこにもいたくはない。どこにも自分の居場所なんかないからだ。少年は、ずっとこの北の街で暮らしてきた。両親と弟と、4人家族だ。別に何の不満もない。いい家族だ。両親は理解があるし、弟はかわいい。だけど、彼は誰にも心を開かない。部屋の押し入れの中で寝る。まるで幼い子供のようだ。もう15歳で、もうすぐ高校生になる。学校でも、いつもひとりで、どこにもつながっていな . . . 本文を読む
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『サラエボ 希望の街角』

2011-12-19 21:34:56 | 映画
 内戦が終わり、なんとか平和が戻ったはずのボスニアを舞台にして、戦後を生きる人々のドラマが描かれる。戦争の傷跡は目に見えるところにだけあるのではない。本当はそんなとこより、目には見えないところにこそ、深い傷みを残す。  最初は、明るい恋愛劇のように見える。恋人たちの現実をスケッチする。空港を舞台にして、キャビンアテンダントの女性と、その恋人の管制塔で働く彼が繰り広げるドラマだ。彼が勤務中酒を飲ん . . . 本文を読む
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『君を想って海をゆく』

2011-12-19 21:24:28 | 映画
 とてもいい映画だ。こういう映画が見たい。見知らぬ風景、見知らぬ人々。彼らの生きる現実と映画を通して自分と、世界が一瞬クロスする。そんな瞬間に胸ときめく。僕は彼ではないし、彼のように強くはない。だけど、彼の生きる現実に映画を見ることでシンクロする。これが映画を見る快感だ。よくこんなことがある。いい映画を見たときだ。  彼は4000キロを歩いてここまで来た。一途に彼女のことを想い、この長い旅を続け . . . 本文を読む
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濱野京子『トーキョー・クロスロード』

2011-12-17 22:46:48 | その他
 これでなんと5冊目になる。濱野京子の作品はいつも同じパターンなのだが、それがなんとも心地よくて癖になる。この1ヶ月で5冊も読んでしまった。たぶん、これでめぼしいものは、ほぼ制覇できたのではないか。5冊目にしてこれが最高傑作であろう、と思われる作品に出会えた。読みながら、こんなにもワクワクすることに興奮した。  しかも、今回は今までの(と、言ってもこの小説の後に書かれたものがほとんどなのだが)パ . . . 本文を読む
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濱野京子『フュージョン』

2011-12-17 22:36:29 | 映画
 たかが縄跳び、されど縄跳び。ダブルダッチ(二本の縄を使う縄跳び)というらしい。こういうものがあるなんて、この小説で初めて知った。  今回もまた全くいつもと同じ設定だ。うまくみんなに溶け込めない主人公が、期間限定で、「何か」と出会う。それが今回は縄跳び(ダブル・ダッチ)である。それに夢中になり、そこで出来た普通なら付き合うはずのない仲間と心を交わす。そして、成長する。濱野京子の小説はみんなこのパ . . . 本文を読む
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『海炭市叙景』

2011-12-17 22:31:20 | 映画
5話からなるオムニバス・スタイルだ。そうとは知らなかったから、最初のエピソードが終わったところで(30分程)メインタイトルが出たので驚く。しかも、その後、別の話になり、兄を待ち、駅の待ち合いでたたずむ谷村美月の姿を置き去りにしたまま、映画は別の話になる。2つ目の話が始まってしばらくしても、オムニバスとは気付かなかった。僕はこの後、谷村美月がいつ出てくるのか、あの後どうなるのか、そればかりが気にな . . . 本文を読む
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『源氏物語 千年の謎』

2011-12-15 23:28:34 | 映画
 これもまた、酷い映画だ。『ワイルド7』同様期待の大作だったのに、これはあんまりではないか。正攻法で『源氏物語』を映画化するのは困難を極めることはわかる。だが、絡め手であっても、もう少しちゃんとした仕掛けを作って欲しい。中途半端はタチが悪い。  鶴橋康夫が『源氏物語』に挑む、という大事件のはずが、出来上がったものは、目を覆いたくなるようなぶざまな映画だ。主人公であるはずの紫式部(中谷美紀)と藤原 . . . 本文を読む
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『ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男』

2011-12-15 23:17:48 | 映画
 見逃していた今年公開された映画からまた1作思いがけない拾い物を発見した。ラッセ。ハルストレムの新作である。というか未公開だった旧作だ。こんなにも面白い映画が今の日本ではなかなか劇場公開が難しい。公開されても単館で一瞬で消えて行く。なんだか惨い話だ。  それにしても最近の彼はなんでもありである。彼がこんなにも器用な人だったとは、知らなかった。僕は『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』を初めて見たときの . . . 本文を読む
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『ワイルド7』

2011-12-15 22:49:28 | 映画
 今頃、こんな懐かしいマンガを映画化するなんて、どういう企画意図があっての行為なのか、理解に苦しむ。でも、これはきっとめちゃくちゃ楽しい活劇になっているのではないか、と期待して見に行った。最新の技術で、ド派手で荒唐無稽なアクションのてんこ盛り、そんなお正月らしい作品になっているはずだ(った)。なのに、ここまで無残な映画になるなんて。  バイクアクションも、銃撃戦も、確かに頑張っている。日本映画の . . . 本文を読む
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