女の子のような名前だが、この作者は男の子である。わざとこういうペンネームを付けたがる新人作家っている。まぁ、別にどうでもいいけど。文芸新人賞受賞作品だ。3・11以後を描く気鋭の新人作家、らしい。高橋源一郎がそう帯に書いている。だが、読んでいてこんなのを持ち上げるのはちょっとどうなのか、と思った。
正直言うとつまらない。なんだかわからない現実を突きつけられてわからないまま生き残るために戦う少女 . . . 本文を読む
一見すると、ハートウォーミングのように見える。『めぞん一刻』みたいなアパート、その管理人さんと住人たちのお話で、ここは賄い付きだ。管理人は女子高校生で、彼女の母親が男と駆け落ちしてしまったので、彼女がここの人たちの面倒を見ている。みんなの食事を用意して、お世話する。ここに住んでいる人は、たった3人。小学教師の30代女性、20歳の大学生男子、そして、一世を風靡した女流小説家(たぶん、30歳くらいか . . . 本文を読む
こういうタイプのエンタメ芝居は退屈なのであまり見ないのだが、これはとても丁寧に作られてあり、好感が持てた。5周年記念作品ということで、今回はいつも以上にこの集団の魅力を十二分に発揮したパフォーマンスを見せてくれたのではないか。目を楽しませる華麗なダンスと華やかな衣装、わかりやすくて単純なストーリー。パフォーマンスとしては申し分ない。あとこれに感動をプラスできれば、完璧だろう。
昔の新感線の芝 . . . 本文を読む
最初はとんでもないドタバタで見てられない、と思った。こういうテンションばかりが高くて劇団名通りの「からまわり」したような芝居って、見るのもしんどい。自分たちだけが楽しんで、まるでつまらないエンタメが一番たちが悪い。最初は嫌な予感がしたのだが、これは必ずしもそういう芝居ではない。ただ単純に、宇宙からやってきた謎の生命体ウギバZと、彼を捕まえるため地球にやってくる宇宙ポリス(スペース刑事)との戦い、 . . . 本文を読む
1年振りの妄想プロデュースである。なんともふざけたタイトルで、ちょっとした息抜き公演なのか、と思った。もちろん満を持しての超大作、というわけではない。なんと今回はカフェ公演(ジャン・トゥトゥクー ) なのである。
だが、ちゃんと第7回本公演と銘打たれてある。こういうカフェ公演は実験公演だとか、番外公演だとか銘打ってなんか力を抜いた感じる劇団が多い中、彼らはちゃんと「本公演」と謳う。その姿勢は . . . 本文を読む
岸田國土の短編戯曲から4本を取り上げ、それを現代のドラマとしてアレンジした東京芸大制作のオムニバス映画シリーズ第3弾。伊坂幸太郎、沢木耕太郎と続いて、今回、岸田國土を取り上げたのはなぜか。今なぜ、岸田國土でなければならないのか。それがこれではまるでわからない。これまでの2作ではそれなりに健闘してきたのに、今回のハードルは、若い学生にはあまりに高すぎた。
しかも、台本自体の時代背景はかなり重要 . . . 本文を読む
自分の性に対して自信を持てない3人の女たちを主人公にした物語。セックスに対してのこういう拘りって、わかるような、わからないような、ちょっと微妙。
主人公はフリーターをしている里帆という女の子。男の人とセックスしても感じないし、もちろん気持ちよくはない。どちらかというと不快。相手が好きな男であっても行為が喜びにはならないし、苦痛。自分は異常なのか、と思う。自分は本当は女ではなく、男なのではない . . . 本文を読む
CGアニメーションの硬いところ、あるいは、へんに柔らかいところ、それが嫌いだ。ここにはアニメに本来あったぬくもりがない。この作品もそうである。ピクサーのアニメに対してはそんなふうには思わないのだが、それ以外のアニメはなんか生理的に受け付けない。(『トイストーリー』シリーズなんかあんなに好きだし、『レミーのおいしいレストラン』も大好きなのに。)シンプルなお話(原作は有名な絵本である『泣いた赤おに』 . . . 本文を読む
オープニングはかなりおもしろい。一体何が起きるのか、予想もつかない。でも、肝心のドラマが本格的に動き出したところで、唐突に終わってしまう。この話で、170ページ程というのは、あまりに短かすぎた。
なんとも不思議な設定が荒唐無稽ではなく、かなりリアルなので、その不思議の国にいざなわれていく。そして、そこでヒロインはとんでもない化け物と出会う。リアルとファンタジーとが交わる空間を純文学の文体で描 . . . 本文を読む
桂望実の小説なのに、つまらない。恋愛検定なんていう曖昧な設定がダメだったのだろう。もっと方向性が明確になるような設定と、それによってドラマがしっかりと動いていくような作り方が必要なのだ。これって、伊坂幸太郎の『死神の精度』と同じパターンである。しかし、何もしない恋愛の神さまというのは、同じように何もしない死神以上にたちが悪い。神さま自体の設定は悪くはない。酒飲みだったり、上司の命令には逆らえない . . . 本文を読む
すさまじい暴力シーンのオンパレード。下関、小倉を舞台にして、高校をドロップアウトしたチンピラが、喧嘩に明け暮れ、街をブラブラしながら過ごす無為と紙一重の時間が描かれる。もちろんそんな彼の行くところ、暴力の嵐だ。なんとも殺伐とした映画である。グー・スーヨン監督の自伝的物語。主人公の名前はそのままで、グー(松田翔太)だ。ただし、時代背景は現代に設定される。そのせいでなんだかバランスの悪い映画になって . . . 本文を読む
『檸檬のころ』の岩田ユキ監督の待ちに待った最新作である。しかも、今回は恋愛コメディーだ。クラシックな青春映画だった前作から一転して、ドタバタ劇のようにも見えるこのコメディーを彼女がどんなふうに扱うのか、ちょっとドキドキした。
だが、映画は最後までまるではずまない。かなりたっても笑えないし、楽しめない。一見ちょっと変な感じの脱力系(三木聡のような)のようにも見える。だが、そこまでスタイリッシュ . . . 本文を読む
なんと震災ものである。まぁ、このタイトルを見れば、誰でもわかることだろう。先日のカラ/フル『発するチカラ』に続いてこれも第2期震災ものとでも呼ぶべき作品だ。第1期はまず、距離感がテーマになっていた。自分たちは当事者ではないという負い目のようなものがある。でも、自分たちが受けた衝撃を伝えたい。この震災で受けたショックは大きい。そのことを形にして伝えたい、という感じだった。だが、ここにきて、状況は少 . . . 本文を読む
産むという行為を通して、劇的に変わってしまう女性の「生」について、あらゆる局面から徹底的にみつめる。こんなにも厳しいドラマを見たことがない。そして、こんなにもそれが同時に愛おしい。男と女。たった2つしかない人間の「性」。それがその人の「生」にいかに影響を与え、その人生は出産によってどう変わっていくのか、をある母と娘を中心に据えて、母親の母親(映画は老いた彼女の介護の問題からスタートする)、娘の娘 . . . 本文を読む
東陽一監督の『酔いがさめたら、うちに帰ろう』と競作になった。あれが夫の側から描いた物語であるなら、これはもちろん妻の側から描いた物語だ。鴨志田穣と西原理恵子の夫婦の物語を2本の映画が分け合う。前者は浅野忠信と永作博美が主演し、こちらは小泉今日子と永瀬正敏が主演する。どちらも素晴らしい映画だった。こんな映画を作ってもらえて彼らは幸せだった、はずだ。
子どもたちがすばらしい。映画は甘い家族愛の物 . . . 本文を読む