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映画・演劇のレビュー

濱野京子『はじまりは一冊の本』

2024-01-16 06:37:00 | その他
たまたま手にした本から自分の未来が開けることもある。しかもそれは本の内容からではなく、『本』自体からだ。主人公の彼は本を作るということに心惹かれる。小学校の先輩が作ったたった一冊の本。自分たちで製本して学校の図書館に寄贈した。原稿作成、イラストも。ワープロ入力、コピー、製本。オリジナルの一冊限りの貴重な本。彼はそこから次に印刷に興味を持つ。それが始まりだ。  友人はサッカー、姉はバスケ . . . 本文を読む
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町田そのこ『夜明けのはざま』

2024-01-15 14:30:00 | その他
今回もまた葬儀屋の話だ。友人が自殺する。彼女が葬儀を担当する。遺書にあったから。古い田舎にはまだまだ女性差別が当たり前のようにある。女というだけで不当な扱いを受ける。主人公の佐久間は葬儀屋で働くことに誇りを持っている。だけど恋人はそれを受け入れてくれない。体裁が悪いからやめて欲しいという。死体と関わる仕事だから。  彼女の話から始まり1話完結で5つの話が綴られる。その都度主人公は変わる . . . 本文を読む
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『葬送のカーネーション』

2024-01-15 12:19:00 | 映画
こんなにも無口な映画は滅多にないだろう。少女は話ができないのか、と思うくらいに無口。祖父と少女、ふたりは祖母の遺体を入れた棺を持って旅する。祖父母の暮らしていた国境の町を目指して。あり得ないことだがヒッチハイクで行こうとする。映画は何の説明もなく、淡々と進む。いや、話は進まない。ただひたすら旅を続けるだけでそこには話はない。棺を抱えてのヒッチハイクはあり得ない。だから仕方なく歩いていくけど、まさか . . . 本文を読む
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『カラオケ行こ!』

2024-01-14 22:19:00 | 映画
あり得ないです。ヤクザが中学生とふたりでカラオケに行く。中学生から歌を教わるために。ヤクザは必ずしも音痴ではなく、もうノリノリで歌うんですが、何故かその中坊を気に入ってほぼストーカー状態。毎日のようにカラオケ行こ、と誘って連れ込む。まぁ怪しいことはしないけど、かなり怖い。さらには仲間のヤーさんもたくさん連れてきてレッスンを受ける。少年は仕方なく彼らに歌唱指導をする。 これはたぶんコメディだろうけ . . . 本文を読む
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小手鞠るい『空と星と風の歌』

2024-01-14 19:47:36 | その他
こんな小説をちゃんと子供たちに届けたい。彼らがこの本を通していろんなことを考えるきっかけになるといい。『在日』に対する認識や知識をきちんと得る。そこからさらにはさまざまな差別について考える。小学校から中学生くらいまでをターゲットにしていると思うけど、大人の僕が読んでも身に沁みてくる。今は韓流ブーム以降、もう以前ほどは韓国に対する差別や偏見はなくなってきたみたいだが、まだまだこの国では根強い。北朝鮮 . . . 本文を読む
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『仮面ライダー ガッチヤード&ギーツ』

2024-01-14 18:33:00 | 映画
昨年ついに庵野版『仮面ライダー』が公開されたが、正直言ってあれには少しはぐらかされた気分だった。あんなにも期待したのがダメだったのか、残念な出来だった。オリジナルのTVシリーズをベースにしたのはいいけど新機軸がない。大人向けの『仮面ライダー』はこれまでもたくさん作られてきたけど、本命となる作品を待ち望んだ僕たちを失望させた。さて、これは定番である冬の『仮面ライダー』映画の新作である。「最強ケミー& . . . 本文を読む
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汐見夏衛『傷だらけの僕らは、それでもいつか光をみつける』

2024-01-14 07:33:00 | その他
長いタイトルがパターンになっている汐見夏衛の小説を初めて読む。昨日見た映画が気になって(気に入って)読んでみることにした。  読みながらなんだかもどかしい。なかなか話が進まないのだ。もう100ページまで読んでいるのにずっと虐められているばかり。陰湿な虐めで追い詰められていく。だが、それなのに、いつまで経っても話が進まないことが何故か心地よい気もする。お話で引っ張っていくのではなく、今こ . . . 本文を読む
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『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』

2024-01-13 20:31:00 | 映画
まさかの30億越えの大ヒットである。アニメではない実写映画で、こんな地味な映画にこんなにもたくさんの客が来るなんて夢にも思わなかった。しかも今も確実に動員記録を伸ばしている。僕が見た今日もよく人が入っていたし、大きな劇場で公開中。しかも若い女の子ばかり。僕の前にはなんと小学生の3人組が、子どもだけで来ていた。公開からもうひと月以上になるけど、大ヒットは続く。僕が今日これを見たのは、たまたまじゃない . . . 本文を読む
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近畿大学文芸学部舞台芸術専攻33期土橋組『柔らかく搖れる』

2024-01-13 14:27:00 | 演劇
これは難しい芝居だ。伝えたいことが伝わりにくい。敢えて伝わらないように描いている節すら感じさせる。小川家の父親が川で溺れて死ぬ。大雨の夜、泥酔して川に落ちた。あれから3年。三回忌の法事に集まった子どもたちのお話。それを冒頭の葬儀のシーンから見せるから死んだ父の葬儀かと錯覚するが、そうではない。従姉妹の夫の葬儀のようだ。まだ話が始まったばかりで人間関係もよくわからないし、お話の設定もわからないままい . . . 本文を読む
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谷川俊太郎、ブレイディみかこ『その世とこの世』

2024-01-13 06:30:00 | その他
谷川俊太郎はもう90歳になる。なのに元気で詩作や創作活動に挑んでいるみたいだ。この新刊を読んでいて、なんだか胸が熱くなる。作家だからといって生涯現役で活躍できる、というわけではない。認知症にもならず、頭も体も元気でいてね、と思ってもなかなかそうはいかないだろう。谷川さんは今車椅子生活をされているみたいだ。そんなことがこの本からわかる。   これは谷川俊太郎さんにブレイディみかこさんか . . . 本文を読む
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『夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く』

2024-01-13 06:11:00 | 映画
酒井麻衣監督作品。初めて彼女の映画を見たのだが、確信犯的で清々しい。とことん嘘くさいのに、それが嫌味ではない。もちろんこんな高校はないし、主人公のふたりも高2には見えないけど、構わない。きれいごとをきれいに描いて、何が悪いと居直るような映画だ。作り事を丁寧に作り上げたことが成功につながる。嘘が美しい。描写だけでなくお話も含めて。学校の屋上は学園ドラマの定番スポットだが、それを悪びれることなくここま . . . 本文を読む
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山本幸久『おでんオデッセイ』

2024-01-13 05:54:00 | その他
このバカなタイトルに惹かれて読むことにした。もちろん山本幸久だから安心して読める。 体調を崩して仕事を辞めて実家に戻ってきた30代になる女性、静香が主人公。東京の大手商社でバリバリ働いていた彼女が練り物屋の実家の援助で屋台のおでん屋を始める。そこでの常連たちとのやり取りがお話の中心を担う。パターンだが、さまざまな人たちがここにやって来ていくつものドラマが生まれる。そこで静香が彼らを見守り応援する . . . 本文を読む
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『幽遊白書』

2024-01-11 19:38:48 | 映画
一世を風靡した大ヒット漫画を今の時代だから可能な実写化作品として制作した映画化、ではなくNetflixによるドラマ化である。もちろん『ワンピース』に続く映画に負けない予算によって作られた大作だ。 全5話というスケールは映画よりは長いが連続ドラマとしては短いミニシリーズ。コンパクトにまとめられたお話は簡潔で見やすい。僕は原作マンガもアニメも見ていない。だからまるでお話は知らなかったけど、あまりにた . . . 本文を読む
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佐々涼子『夜明けを待つ』

2024-01-09 21:53:00 | その他
エッセイ&ルポルタージュによる1冊。このふたつを抱き合わせにするなんて珍しいパターン。ノンフィクションライターの佐々さんが自分のことを赤裸々に綴ったエッセイと短編ノンフィクションをまとめて1冊にした。かなり個人的な1冊である。 なぜ自分は書くのか。何を求めているのか。これまで生きてきたこと、これから向かうところ。今立つ場所を再確認するための1冊である。どのエピソードも胸に痛いが、無量とい . . . 本文を読む
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小泉綾子『無敵の犬の夜』

2024-01-09 07:12:00 | その他
昨年の文藝賞を獲った作品。凄いスピードで駆け抜けていく中学生の物語。イライラをどこにぶつけたらいいか、わからないまま暴走する。それを作者もまた全力疾走でラストまで一気に見せる。読ませる。しかもあのまさかの終わり方。こんなところで終わってしまうのか、と驚く。まだ何も始まってないやん、と思う。だけどこれはこれでいい。道半ばで立ち止まってしまう瞬間にエンドマークが出る。見事だ。 最近映画や小説を見てい . . . 本文を読む
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