11月15日はボージョレ・ヌーヴォーの解禁日。などと覚えている人はもう少ない。1985年から11月の第三木曜が解禁に変わった。15日が解禁だったころに比べると品質も数段に良くなったと思う。当時は、ボージョレ・ヌーヴォーには鍋料理が合うなどと紹介していた。ようするに、ビール感覚で、味の濃い鍋料理が合う云ったのではないかと思う。しかも冷やして飲みましょうとか気軽にガブガフと飲みましょうなどと云っていた。よっぽど味わいに自信がなかった現れだ。
今のボージョレ・ヌーヴォーなら、魚のグリルなどにも良く合うと思う。魚料理を得意とするクアトロのメニュー向きかもしれない。また、ボージョレ・ヌーヴォーは作り方とブドウの性質からタンニンが少なく渋みがないので白ワインの感覚で飲めるし、赤ワインの果実味も味わえ、合わせる料理の幅は広がる。飛行機代が高いのが玉に瑕ではある。
ヨーロッパではもともとボージョレ・ヌーヴォーはクリスマス用のお酒でもあったようで、シャンパンよりもよっぽど庶民的で気が利いている気がする。日本でも、その頃には船に揺られてボージョレ・ヌーヴォーが届く。不思議と船酔いのワインは美味しいし、価格もとても安くなる。しかし、レストランでは値段が下がらないのが実情。もともと、利幅が薄いボージョレ・ヌーヴォーなので、クリスマスで調整するのかもしれない。その点、クアトロも怪しい。
売れる物を組み合わせれば成功するとは限らない。ラーメンとコーヒーの店は成功しないとか、カレー・スパゲッティやハンバーグ・スパゲッティはやらない方が良いとか、僕は昔に先輩から教えられた。今は、新しい発想で、こんなのがありというような組み合わせで成功している事例も多い。パスタの世界でも、なっとうのスパゲッティあたりから、発想はかなり自由になった。ウニのスパゲッティやカニのスパゲッティだのタラコのスパゲッティだの、今ではファミレスでも普通のメニューになっている。
さて、クアトロのシェフも新しい試みに挑戦しようとしている。イタリアンで鮨を出したいと云っている。クアトロ自慢の魚をすし飯で食べさせたいと考えている。メインではなく、前菜として出したいという。「イタリアンと鮨」ラーメンとコーヒーのような危険はあるかもしれない。どのように、イタリアンの中に鮨をなじませるのか、これからの工夫に注目してみてください。昔にもイタリアンに鮨を取り入れた店は実際あったのを知っています。しかし、めずらしさだけの発想だったようで、成功していないようだ。クアトロのシェフは魚を美味しく食べて貰うためという発想なので、クアトロの父も応援しております。まずは、明日の「ボージョレ・ヌーヴォー・カウントダウン」で試してみるそうです。そのうち、「お客さん、今日の魚はカルパッチョにしますか、握りにしますか」といった会話になるかもしれません。
余談ですが、今日は市場に北海道産の朝茹での毛ガニがあり、メスだけを選んで入手し限定6食での販売となりました。サイド・メニューにするか、常連のお客様にmixiを使ってご案内しようかと準備をしていたら、開店してすぐのお客様方にすぐ売れてしまいました。
ラングドック産のグリーンオリーブはたいへんに好評でした。残りも少なくなりました。イタリアのオリーブも収穫され、2006年産のオリーブから作られたエキストラ・ヴァージン・オリーブ・オイル「ノヴェッロ・オリーブ2006」が明日クアトロに入荷予定。イタリアでは、ワインの新酒・ノヴェッロとこの新油と書いたらいいのでしょうか、ノヴッロ・オリーブで新しい収穫のお祝いをするとか。オリーブ・オイルの効能はここで改めて書くまでもありませんが、抗酸化作用が特に注目されています。とにかく、普通の油とは分子の構造が違って体に良い油ということ。クアトロでのオリーブ・オイルの消費は大変な量ですが、オリーブ・オイルでは太らないですから、常連のお客様警戒しなくても良いですよ。
地中海地方では、オリーブの栽培がさかんです。ワイン同様、オリーブ・オイルは地中海地方の食文化の大きな柱となっているようです。オリーブは乾燥したところで育ち、岩盤をも貫く根の強さがこの地方に向いているようです。トスカーナでも、昔からワインの木とオリーブの木は一緒に植えられています。多くのワイン・メーカーはオリーブ・オイルも作っています。ワイン同様というか、ワイン以上に歴史があり、工夫がなされ、文化として定着しているオリーブ・オイル。新油「ノヴェッロ・オリーブ2006」をクアトロで、新酒とともに楽しんでみませんか。
まずは、水曜深夜の「ボージョレ・ヌーヴォー・カウントダウン」の集まりで試してみます。(こちら、まだ若干席があります。興味のある方、お問い合わせください。)
今朝は風も強く寒かったが、昼には温度も上がり暖かい。こういった一日の温度差がブドウなどの果実には良いという。
樹木にも知性があるという話がある。草花に話しかけると、反応があるという。あまり試したことはないが、あり得そうな気もする。一日の温度差が大きいと果実が甘くなるのも、暖かいうちに、太陽の恵みを糖として蓄えようと考える知性かもしれない。(もちろん、温度差が大きいと糖が増すメカニズムは解明されており、知性とは関係ないと云ってしまえばお終いですが)
川沿いの丘陵地帯や盆地は一日の温度差が大きく、ブドウの栽培に適しているわけだ。丘陵地帯や盆地の斜面が北向きか、南向きかで、また善し悪しが決まる。日本にも、その程度で適した土地は多いが、どうしてもワイン造りに適したブドウが出来ない。日本は湿度が一年中高いのが原因だという。この湿度のために、カビが生えやすくブドウに適さないし、ブドウの実からも水分を吸って水っぽい果実になってしまう。生食のブドウならみずみずしく甘ければ良いのだが、ワインにすると濃縮味が出ない。
また、一番の問題は食文化にあるかもしれない。ワインを飲むという文化がないからと云っては味もそっけもないが、ブドウは生食という習慣があるため、ブドウは生食用に作った方が生産者は収入になる。そこが、大きな問題のようだ。720ミリのワインを作るのに1キロのブドウが必要。同じ1キロのブドウを作ったら生食で売った方が利益が上がるという。
以前、長野県で原産地呼称法が始まった時に出かけたことがあるが、まだまだ日本のワインは難しそうだ。特に、低価格で良いワインというのは、生産者の方の負担が大きすぎると思った。日本のワインの場合は、ある程度の値段を出さないと美味しいものに出会えないようだ。
寒いだの、暑いだの、坂道はきらいだなどと云っているクアトロの父は、ワイン造りには適していないが、安くて美味しいワインを探すのは、得意だ。
先日、お客様が子供を自転車に乗せてクアトロに来店。途中、お子さんのお気に入りの靴の片方を落としてしまった。もう、日も暮れて探しても見つからなかった。お子さんは、一歳半。保育園で自分の靴を探すことがやっと出来るようになったのにと、お母さんの落胆は大きかった。翌日、クアトロの休日にうちの奥さんは、小学生たちに聞き込み調査をして、その片方の靴を発見。たいしたものだ。もちろん、そのお母さんも大喜びで、お礼のお菓子までいただいてしまった。その方のブログによると、クアトロ夫婦が探してくれたとなっていたが、その時僕は、昼から飲んだくれて昼寝していました。お礼のお菓子だけはしっかりいただいてしまい、申し訳ない次第です。
大事なものは、人によって違います。同じようになくした運動靴がお話の縦筋になっているのが、イラン映画「運動靴と赤い金魚」。古くはなるが、イタリア映画の名作「自転車泥棒」と匹敵する名作だと思う。素人の俳優を使い、イランの市民の生活を見事に描いている。登場する兄妹の物語は涙を誘う。
運動靴事件で、思い出した映画でした。