
秋のお彼岸に作るのが「お萩」で、春には「牡丹餅」と呼ばれるのは、一般にもよく知られていることですが、なぜお彼岸にお萩を食べるようになったかというと、『あずきの赤色には、災難が身に降りかからないようにするおまじないの効果があると信じられていて、古くから邪気を払う食べ物としての信仰が、先祖の供養と結びついたと言われています‥‥《お萩とぼた餅の歴史》』
幼い頃ある朝目覚めると、母親が小豆を炊く何とも言えない豊かな香りが家中に漂っています。何か美味しいものが食べられるに違いないとわくわくして起きていくと、大鍋の上に広げた木綿布巾で炊いた小豆汁を濾していくところでした。その濾し汁をとろ火で煮詰めていくとこし餡になるのですが、焦げ付かさないように杓文字でゆっくり掻きまぜる役目を僕は言い渡されます。ザラメ糖を入れて艶良く仕上げる間際に、指先で味見をするのがとても楽しみでした。
こし餡はお萩にしたり、羊羹にしたり、ぜんざいになったり、外郎やお餅の餡になりました。手作りの餡は小豆の風味が程よく感じられて、多くのお袋の味とともに、僕の甘味(スウィーツ)の基準となっているのかも知れません。
【追記】9月25日には中秋の名月に因んで、「月見団子」が限定販売されていました。