『真理の探究』
開口部からは海と空/水平線が見える。室内には巨大化した魚が直立している。
真理とは何だったろう。嘘のないこと、永遠不滅の真実・・・では魚が直立している図などは真っ先に否定されるものであって、自然の理を著しく外している。
有り得ない光景を指して『真理の探究』という。
そういうことなのだろうか・・・。つまり《真理は有り得ない》という結論を提示しているのかもしれない。
人、あるいは信仰の基本は『真理の探究』であって、神そのものが真理なのではないかという解答もある。
この作品において、不滅と思われる真理は、海と空の境界があるという地球物理の真理である。しかし、そのことですら・・・本当に不滅なのかといえば、超未来における地球の存在そのものが疑われる。
真理と思われる情景ですら懐疑に揺れることがある。
魚が巨大化し直立するなど考えられないということは、大いなる捏造であって虚偽である。
(逆も真なり)と言うが、この場合はもちろん当てはまるものではない。
この突飛な現象を描いて『真理の探究』と名づく。
日夜真理の探究に明け暮れているが、真理そのものが曖昧であり、探求の範疇からはみ出してしまう。マグリットはついにこの形をもって『真理の探究』の不確定さを明示したのではないか。
(写真は国立新美術館『マウリッと』展・図録より)
すすきがなくなったために、向ふの野原から、ぱっとあかりが射して来ました。
☆講(はなし)は夜に現れる。赦(罪や過ちを許す)記である。
そのあんたがお城から帰ってくると、幸福のあまり泣きながらわたしと抱き合うどころか、わたしの顔を見るなり、すべての力がなくなったみたいで、あらゆることを疑いだす。あんたのこころを惹くのは、靴つくりの仕事だけで、わたしたちの未来を保障してくれるはずの手紙も、うっちゃらかしたままにしておくのね。
☆そのあなたの終末(死)から来るという運命がかわいそうで、泣きながらわたしを見るなり死ぬことを忘れ、あらゆることを疑い出す。あなたを動かすのは(罪に対する)責任だけでわたし達の未来を保障してくれるはずの手紙(書き物)もそのままにしているんです。