『上流社会』
山高帽を被った紳士の像の輪郭線によって切り抜かれたかたちのなかに《雲の散在する空と波静かな海・砂浜=自然》と、相似形に重なるもう一方の中は《木の葉・緑=平和》の様相が描かれた作品である。
これらを称して『上流社会』と題している。
上流社会、下流(底辺)があっての上流である。社会の仕組み・階層は弱肉強食、下克上、これら戦乱を経た勝者の占める地位であり、弱者、貧民、社会を支える労働者あっての上流である。
組織のなかで支配者の立場を有する者の安楽・優雅・高慢・保持への執着・・・。
背景は混濁の紫色/ベタである。この彩色の意味するものは、高貴を含めた不安の象徴ではないか。心配・危惧・怖れ、決して明快な明るさを呈したものではない。
見るからに明るく平和な景色に包まれた上流社会の眩しい景色に、戦乱や混乱の影は微塵も感じられない。
背後の類型の中は緑の葉で埋め尽くされている。緑葉にのぞく細枝、緑・緑…緑、どこまでも緑で包まれている。豊潤・豊熟の暗示である。
しかし、砂浜は常に波の襲撃にさらされており、安定した盤石さに欠ける。
そして、一方の緑には木の根を張った大地、根幹がない。
『上流社会』に潜む脆さの要因は、静かに上流社会を脅かす。
マグリットの洞察である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
二人は顔を見合わせました。燈台守は、にやにや笑って、少し伸びあがるようにしながら、二人の横の窓の外をのぞきました。
☆普く図りごとには、信仰が現れる。
拷(責めて苦痛を与える)を倒(ひっくりかえす)題(テーマ)の趣(考え)である。
傷(悲しみ)を償(あがない)審(正しいかどうかを明らかにする)自(わたくし)の図りごとである。
往(人が死ぬ)の葬(死者を葬る)の我意である。
それに、めったに会えないような人物は、とかく人びとの想像のなかでいろんなちがった姿をとりやすいものです。たとえば、クラムは、こちらでモームスという名前の在村秘書を使っています。そうでうか。モームスをご存じなのですか。
☆クラム(氏族)とは、どうしたら会えるか、しばしば熱望しても、めったに会えない人物であり、死体は異なる姿の人間になってしまう。たとえばこちらのモームスは来世の秘密です。モームスをご存じなのですか。