『宝石』
男の頭部と鳥の頭部が箱の蓋の上に乗り、対峙している。
男の頭部ほどの鳥の頭部…相当に巨大な鳥であり、飛行は困難と思われる。また鳥の頭部ほどの男の頭部というのも小さすぎて人類の領域を外してしまう。本来並置の不可能な二つの生態である。
しかも頭部だけという異様さ、下部の箱に身体が収まるとは考えにくい。
この二つの物体は物と言うのでなく、生きている、少なくともそういうイメージをもって描かれている。
木箱…これには(死)を意味する暗黙の約束がある。
霊界にどっぷり身をあずけた男と、大家族をもたらしたとされる鳩の巨大化された頭部も霊界(非存在/空想)に身をあずけている。(鳥は鷲でもいいかもしれない、成鳥が先か卵が先かという輪廻における発生の問題をも含めて)
男の眼差しには諦念の翳り、あるいは明察の沈黙がある。それに反し、鳥の眼差しには張りつめた緊張感と強力なエネルギーが感じられる。男に対し勝ち誇っているようにさえ見える。
この対峙する二つのものはいずれ木箱(霊界)に入って霧消するかもしれないし、残存するかもしれない。
男(イメージに対する思考)と鳥(伝説/空想)の対峙。
男は、霊界の木箱をまえに鳥に象徴されるイメージとの格闘に思いを馳せる。
物体の死滅とイメージの不滅について・・・。これこそがマグリットの創作の原点である隠された『宝石』だったと思われる。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
そこで二人は、きれいに髪をけづつて靴の泥を落としました。
二人はジ・トと読んで、字、図。
髪はハツと読んで、発。
靴はカと読んで、化。
泥はデイと読んで、泥。
落としましたはラクと読んで、絡。
☆字の図りごとは、発(明らかにする)化(教え導くこと)の泥(こだわり)の絡(すじみち)です。
とにかく、そうして荷物を運んでいるあいだも、バルナバスとわたしは、自分たちの心配ごとや計画について話をすることがやめられず、ときには夢中になって立ちどまってしまい、父に〈さあ、さあ!〉と声をかけられてやっと自分の仕事を思いだすしまつでした。
☆バルナバスとわたしは、この旅の間に棺が人目に付くことについて話をすることがやめられず、時には度々立ち止まってしまい、父に地獄だと叫ばれ、自分たちの責務を思い出すのでした。