1-1-4『無題』
仰向けになり膝を立てた裸の少女、膝の上には巨大化した蝉が乗っており、両者の口から出る空気(振動)はつながっている。共鳴しているというべきか。
それとなく少女の手がそれを拒否しているようにも見えるし、優しく手を差し伸べているようにも見える。
暴力的な空気感はなく、ごく自然に和んでいる風である。エロスだろうか・・・あり得ないような不自然極まる景は、あまりにも自然体である。
一寸の虫にも五分の魂という、地上の生物の呼吸(CO₂あるいはO₂)の排出、その循環が地上の生息を促している。
ささやかな一生命体の呼吸(振動)は他のあらゆる生命体との呼吸と共鳴し、地上を揺らしているが、静かすぎるほどの共鳴である。生命の華やぎは空中に深遠静謐に漂いその息遣いはどこかですべて共鳴し合っているに違いない。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館