ある大手合繊メーカーの大阪での株主総会
江嵜企画代表・Ken
ある大手合繊メーカーの株主総会がウエスティンホテル大阪で開かれるというので出かけた。はやり風邪のようにと言えば叱られそうだが、このところ東京へ東京へと、大阪での株主総会が次々姿を消していく。そういう意味では関西在住の株主にとっては、当社などは貴重な存在であるかもしれない。
本社ビルから総会会場を大阪商工会議所に移したあとしばらく続けていたが今回はなぜか場所が違う。チヤーターバスをピストン運転で会場に出し株主を運んでいた。
着くなりいつものようにスケッチを初めた。はじめ、まばらだった入りも開会直前にはほぼ満席になったからまずはよしとしなければなるまい。
当社は総会前に業績悪化を理由に既に減配を発表していた。型どおり会社側のプレゼンテーションが終わり恒例の株主との質疑応答を特に注目した。
質問は15件ほどあったが、その中には同一の株主が3回時間を置いて質問した。本体の株価が値下がりしたことも頭にくるが、それ以上に株式交換で手持ちの株価が大幅値下がりしたことが我慢ならぬと、言葉選ばず会社の方針に手当たり次第噛み付いていた。
「損は自己責任だからある程度止むを得ない」と冷静に受けとめる株主もいた。ただ、当社が3年まえ掲げた中期経営計画と乖離がひどい。最終的にはどういう風につじつまを合わせるのかと聞いた。
担当役員が①急速かつ大幅な環境変化があった。精一杯の努力はしたが、コストアップのスピードが余りに速く追いつけなかった。申し訳ないと詫びた。売り値をアップさせながら目標を達成すようがんばっていきたいと話を結んだ。
ある株主は、市況悪化で減配と言うが、自社株買いをなぜやらないのかと聞いた。担当役員は、①設備投資へお金を投入して株主価値を高めたい、②現金が190億しかない。自社株買いとなると借金になるから出来ない。経営体質を強化する方が優先順位が高いと答えた。
減配なら株主優待をやればいい。なぜやらないのかとの質問があった。これについては、配当で株主に還元することが原則である。インターネットで10%割引を始めた。これも株主優待として理解して欲しいと答えた。
総会をとおして、真面目に答えようとする当社の姿勢は確かに伝わった。しかし、その実現性となるとはなはだ心もとない。注力4市場に加えて、これからは水の時代だ。だから、水処理事業にも踏み出すと胸を張った。説明はそのとおりだが、後々発のハンデは、覆うべくもないだろう。生半可な努力では命がけで鎬を削るライバルメーカーとの競争に果たして生き残れるのだろうか。
故意か偶然か、6月20日付けの読売新聞朝刊の関西版10ページの「株式案内」欄での株主の投書に対する回答で、「持ち株は保有継続を薦める」と出ていた。
株価は社長さんの通信簿である。本日総会で正式に承認された新社長さんの腕の見せ所であろう。期待している。(了)