植木鉢を少し動かしてやると、予期していなかったのであろう、狼狽した無数の丸虫やハサミ虫の姿を見ることが出来る。原油相場が急騰し、トウモロコシ、小麦、大豆の天井知らずの値上がりに、世界丸ごと打つ手なしの状態の人間様の姿とだぶってならない。
ジッタ会議後初めてとなる、週明けのNY原油先物〈8月限月〉のWTI(軽質油)相場は、サウジアラビアの増産とナイジエリアでの減産懸念を天秤かけたあと、バレル1.83ドル高、136.74ドルで取引を終了した。
ナイジエリア武装勢力による攻撃で、シエブロン製油所だけで日量35万バレルの生産が止まっている。サウジの増産がナイジエリア減産で相殺される。特にナイジエリア原油はガソリン用の良質原油だから、ナイジエリアというだけで米国人は敏感に反応する。
「生産国・消費国会合」で、サウジアラビアは5月の日量30万増に続き7月に20万を追加生産し、日量970万まで増やす用意があると表明した。2009年には、生産能力を日量1,250万に増やし、必要ならば1,500万まで増やす用意があるとまで発言した。
物の値段は基本的には需給が決める。お金は臆病な生き物である。買い手のない商品、先で値段が下がる商品には一切手を出さない。餌にありつけると思うから水鳥が集まるにすぎない。餌が取れないとなると断りなくマーケットを離れる。水鳥の性を責められない。
中国では石油が不足して油請いのトラックが列を作っている姿が日々放映されている。足元の米国では、ガソリン在庫は、6週連続で減少している。米国は、世界の原油消費、日量8500万バレルのうち2000万を米国が占めている。自分はガソリンをガブ飲みする。新規の精製設備を作らない。油田も開発しない。輸入もやめない。自業自得である。
「最近の原油高騰における投機マネーの役割」と題して、米下院エネルギー商業委員会で公聴会を始めた。大統領選挙戦向けのパフオーマンスだろう。証言に立った一人、Masters Capital ManagementのMichaelMasters氏は、立法化で、限界コスト65ドルから75ドル近くまで石油は値下がりすると証言したと今朝のWSJ紙は紹介している。
米国は、農業法を改正して、農家に補助金を出し、食料であるトウモロコシからエタノールへの転換を促進している。お蔭で十数年ブッシエル3ドルで低迷していたトウモロコシ相場が今15ドルである。同じ畑で競合する小麦、大豆相場が玉突き状態で高騰している。
米国は、返済不能の借り手にお金を貸して、サブプライムローン問題を引き起こした。放置すれば経済全体が破綻する事態に発展することを怖れた米国は、年5.25%金利を2.0%まで下げた。欧米間の金利差拡大、ドル下落、つれて原油相場が急騰した。
いずれも身から出た錆びである。今回のジッダ会議では、もっぱら原油高騰を投機マネーの仕業と位置づけたが、米国とサウジがあらかじめ用意したシナリで動いた可能性が強い。油断もスキもならない。
ところで日本はどうか。運転手のいないトラックが高速道路を走っている姿を想像すれば分かり易い。福田首相は、誰かの入れ智恵だろう、外人記者の前で消費税引き上げをぶち上げた。ところが、風向きがおかしいと気付きあっさり取り下げた。リーダー不在の国に住む国民は実に不幸である。植木鉢の下の丸虫やハサミ虫の姿を笑う資格はないだろう。〈了〉
ジッタ会議後初めてとなる、週明けのNY原油先物〈8月限月〉のWTI(軽質油)相場は、サウジアラビアの増産とナイジエリアでの減産懸念を天秤かけたあと、バレル1.83ドル高、136.74ドルで取引を終了した。
ナイジエリア武装勢力による攻撃で、シエブロン製油所だけで日量35万バレルの生産が止まっている。サウジの増産がナイジエリア減産で相殺される。特にナイジエリア原油はガソリン用の良質原油だから、ナイジエリアというだけで米国人は敏感に反応する。
「生産国・消費国会合」で、サウジアラビアは5月の日量30万増に続き7月に20万を追加生産し、日量970万まで増やす用意があると表明した。2009年には、生産能力を日量1,250万に増やし、必要ならば1,500万まで増やす用意があるとまで発言した。
物の値段は基本的には需給が決める。お金は臆病な生き物である。買い手のない商品、先で値段が下がる商品には一切手を出さない。餌にありつけると思うから水鳥が集まるにすぎない。餌が取れないとなると断りなくマーケットを離れる。水鳥の性を責められない。
中国では石油が不足して油請いのトラックが列を作っている姿が日々放映されている。足元の米国では、ガソリン在庫は、6週連続で減少している。米国は、世界の原油消費、日量8500万バレルのうち2000万を米国が占めている。自分はガソリンをガブ飲みする。新規の精製設備を作らない。油田も開発しない。輸入もやめない。自業自得である。
「最近の原油高騰における投機マネーの役割」と題して、米下院エネルギー商業委員会で公聴会を始めた。大統領選挙戦向けのパフオーマンスだろう。証言に立った一人、Masters Capital ManagementのMichaelMasters氏は、立法化で、限界コスト65ドルから75ドル近くまで石油は値下がりすると証言したと今朝のWSJ紙は紹介している。
米国は、農業法を改正して、農家に補助金を出し、食料であるトウモロコシからエタノールへの転換を促進している。お蔭で十数年ブッシエル3ドルで低迷していたトウモロコシ相場が今15ドルである。同じ畑で競合する小麦、大豆相場が玉突き状態で高騰している。
米国は、返済不能の借り手にお金を貸して、サブプライムローン問題を引き起こした。放置すれば経済全体が破綻する事態に発展することを怖れた米国は、年5.25%金利を2.0%まで下げた。欧米間の金利差拡大、ドル下落、つれて原油相場が急騰した。
いずれも身から出た錆びである。今回のジッダ会議では、もっぱら原油高騰を投機マネーの仕業と位置づけたが、米国とサウジがあらかじめ用意したシナリで動いた可能性が強い。油断もスキもならない。
ところで日本はどうか。運転手のいないトラックが高速道路を走っている姿を想像すれば分かり易い。福田首相は、誰かの入れ智恵だろう、外人記者の前で消費税引き上げをぶち上げた。ところが、風向きがおかしいと気付きあっさり取り下げた。リーダー不在の国に住む国民は実に不幸である。植木鉢の下の丸虫やハサミ虫の姿を笑う資格はないだろう。〈了〉