吉川ニ郎フラメンコギターの調べ
江嵜企画代表・Ken
吉川二郎さんのフラメンコギターの演奏会があるが、時間が許せばいかがですか、と昨年5月、森田りえ子パリ展バスツアーで、たまたまご一緒し、それがきっかけで家内ともども懇意にしていただいているご婦人Yさんからメールが入り、楽しみにして家族と出かけた。
会場は大阪南港にあるハイアット・リ―ジエントホテル内のチャペルである。JR大阪駅から30分おきに出ている無料バスで、幸い渋滞もなく、30分たらずで現地に着いた。
吉川二郎さんはフラメンコギターの巨匠マ二ュエル・カーノ氏に師事した。98年に発刊されたフラメンコ大百科事典に日本を代表するフラメンコギタリストであること、兵庫県川西市の市民文化賞を受賞しておられることも、恥ずかしながらこの日初めて知った次第である。
今回の演奏会は、M・カ―ノ没後20周年ということもあり、ホテルのチャペルで厳粛な雰囲気の中で吉川さんの独奏からはじまった。演奏会の様子をいつものようにスケッチした。
第二部は、85年から吉川氏に師事、スペインでM・カ―ノにレッスンを受けた野口久子さんとの2重奏共演だった。演奏のあと場所を移しての懇親会では、がらりと変わった和やかな雰囲気の中でのお二人の演奏を堪能した。
第一部の独奏は、フラメンコの歌い手カンタオ―ルのドゥエンデ・クランタから始まった。ドゥエンテとはフラメンコの世界で、演者の魂が乗り移った時に出る歌だと解説にあった。
吉川氏の新作という「モハカ―ルの水売り娘」という茫洋とした中にも心地よいリズムが特に気にいった。モハカ―ルは町の名前である。レコンキスタ運動によってカトリック教徒が征服した時、住民は全て従うことを条件にイスラムの生活を許された丘の名で、それほど遠くない昔、頭に水がめを載せた水売り娘がいたと聞くとロマンが一層かきたてられる。
「鐘のコンサート」という曲もよかった。古都グラナダにはたくさんの教会がある。教会の鐘が一斉に鳴ると、まるで鐘がコンサートをしているようだったと吉川さんは話した。
ユーモアを交えながら、穏やかに話す吉川さんの語りがまたいい。音楽と一体になった、魅力的な氏の語りの秘密について、機会があれば、ご本人に改めて聞いてみたいと思う次第である。
吉川さんは神戸でもしばしば演奏会を開いておられると聞いた。今は日本画に没頭しており時間が取れない。ギターの誘惑にとりつかれそうで正直怖い。(了)