陶芸教室風景:ポートピアホテル
江嵜企画代表・Ken
昨年暮れ、孫が作った焼き物が仕上がった。遅くなったが神戸に出る用事があるので自宅に届けたいと、陶芸家の田中和人さんから電話がはいった。よくよく聞いたら、その日午後2時からポートピアホテルで陶芸教室があると言うのである。田中さんの工場は二度ほど見せてもらったことはある。しかし、陶芸教室は初めてだ。好奇心を刺激されて、ホテルまでいただきにあがります、と言って電話を切った。
半年前、孫はそれは楽しそうに粘土をこねていた。あのときは土の塊程度に思っていた。ところが、「えりな」という彼女の名前入りで、立派な湯のみとして仕上げられていた。
田中先生は、ホテルが開いている陶芸教室の講師として教えている。小じんまりしたホテルの一コーナーにある教室に一人、二人と生徒さんが集まってきた。田中先生の他に助手の先生が二人いた。まず粘土を袋から出す。時間前に来ていたかなりお歳をめした男性が、楕円形の厚みのあるまな板のような盤に粘土を置き、たたき始めるところだった。
助手の女の先生は汚れよけの前垂れを胸から下げていた。ツ―ピ―スのガウンをつけた男性の助手が、先の老人に熱心に教えているところを、あらかじめお断りして、スケッチさせていただいた。定年後、なにもすることがないと、家に閉じこもって、ぶつぶつ言っている男性が多いと聞く。夢中になって粘土をこねておられる男性の姿を拝見すると元気が出る。
夏休みには親子セットの陶芸教室を毎年開いているそうだ。セット料金で8000円程度だが、作品を夏休みの宿題に出す子供もおり、結構人気ですよ、と田中先生が話していた。
田中先生は、焼きあがった作品をそれぞれ生徒に渡していた。作品だけを取りに来る人もおられた。「やあー、立派に焼いてもろて。ありがとうございます。」という当のご婦人の声が教室に弾んでいた。(了)