予備知識としての回内と回外
図のように肘関節を90度屈曲し、手の平が上を向くように回旋する運動を前腕の回外、手の平が下を向くように回旋する運動を前腕の回内と言います。
前腕の回外に関わる代表的な筋肉として上腕二頭筋、回外筋、前腕の回内に関わる代表的な筋肉として円回内筋、方形回内筋などがあります。
※寝た状態で写真のように手の平を天井に向けるのが、腕全体の回外といいます。
今回の臨床実践塾は、“できる鍼灸師になる”というのがテーマでしたので、できる鍼灸師と思われている方々の理由の紹介、できる鍼灸師になるためのブランディング方法、「診断から導き出す治療の方法」として、問診、脈診、脊椎診、六臓診(検証診)などの診断結果から、その治療法を選ぶかということをお話しました。
実技では、モデル2人に出てもらい、JAA(関節調整鍼)で使う脊椎診の練習方法を解説しました。
その次には、誰に、何を、どのツボを使って、どのようにして治療し、どのようにして治療効果を証明していくかという実技も行いました。
実技用のマットを3枚準備してありましたので、参加者の皆さん全員にパパパッと代わりばんこに仰臥位になってもらい、手の平がどこを向いているのかを見ました。
つまり、回内、回外を診たわけですが、全員が終わってから仰臥位になってもらった説明をしました。
該当する方が4~5人いましたが、その中からわかりやすいと思われた2人を選び、仰臥になってもらいます。
脈診とか六臓診とか脊椎診などの他の診断は一切せずに、「腕が回内ぎみ」という状態だけの診断です。
最初の方は、膻中辺りを参加者の方に押圧してもらい、膻中に痛みのあることを確認してもらいました。
腕が回内ぎみになるということは、内側下側の経絡や筋肉に
経筋腱収縮牽引 が起っていると考えます。
そうすると、腕の内側下側には、「厥陰心包経」と「少陰心経」の経絡が流れていますので、「厥陰心包経(心筋)」や「少陰心経(心臓全体)」に異変が起っていると考えることができます。
年齢からして、まだ心臓が弱っているとは考えにくいし、回内の角度からしても心臓ではないと判断しまし、心包経が原因だと思いました。
回内の角度が強い場合は、心経の経絡流注の位置を見てもわかるように、強い経筋腱収縮牽引が起るからです。(上の写真を参照)
腕に回内が起っていると、バンザイの格好をした時に腕が挙げにくいものです。
そこで、心包経を整えるために、右肝査穴を指で押しました。
かなり痛そうでした。(^_^;)
なぜ肝査穴を押したかといいますと、木(肝・胆)は筋肉や腱を主っているからで、肝胆経が弱いと、心包三焦経も弱くなっているからです。
もう一人の方は、バンザイが上手くできない状態でしたので、指では刺激が弱いと思いましたので、鍼を使うことを承諾してもらいました。
5番鍼で右肝査穴に刺鍼して、ちょっと捻鍼を加え、立ちあがってもらってからバンザイをしてもらいましたら、会場から「おおーっ!」とか「ええーっ」という声が聞こえました。スッとバンザイができたからです。
初めての参加者が驚くのはいつものことですが、前から参加している方々まで、「エエーッ!」という顔していたことには、私のほうが驚きました。
前々から参加している方々なら、このブログでもある程度は解説しているので、多分知っていると思っていたからです。
今回の臨床実践塾のビデオも、DVDにして販売させて頂きますので、編集ができるまで少々お待ちください。