新鋭作家3人展
画・江嵜 健一郎
10月最初の猪熊佳子日本画教室が2日(土)開かれた。非常事態宣言解除初日だったが、朝早かったせいもあり難波や日本橋周辺の人出はさして変わらなかった。次の画題未定ですと猪熊先生お話ししたところ、色紙を3枚教室まで用意下さり、その中からカトレアの絵を選んだ。
今年は文字通りグロリアスではじまりグロリアスで終わる1年だった。本画としては久しぶりの花の絵だったが、来年も是非、花を描きたい気持ちを目覚めさせてくれたいいきっかけとなった。カトリアはむつかしい花よと猪熊先生に言われたが、自分が描きたいと思う絵を描くのが一番だと勝手に思っている。
教室の友達が[再興第106回院展]の切符を用意してくれたことと[新鋭作家3人展]が大丸京都店で開かれていると知り、日本画教室を中座して京都へ向かった。
新鋭作家3人とは飯田穂香、中山千秋、山羽春季と画廊ESCAPE KYOTOの案内はがきに出ていた。お目当て日本画家の山羽春季さんの絵を見ることである。
日本画家、山羽春季さんは猪熊佳子先生のお嬢さんである。猪熊佳子日本画教室でかれこれ10数年昔に六甲森林公園で写生授業があり、当時まだ小学校4年の彼女が参加しておられた。その時のことをご本人に話したらよく覚えていますと答えられた。
躍動感溢れる彼女の画風は母校の京都精華大学での個展やその他の作品展を拝見して強く印象に残っていた。この日は彼女の会場当番日だったことも幸いして次々訪れる山羽春季ファンの存在は気になったが立ち話ながらしばし話を聞くことができ幸いだった。
妖精という言葉が開口一番出て来た。画面いっぱいに飛び跳ねて展開される人は何をあらわしているのですかとの問いに出て来た答えだった。「浅田真央さんのスケートをイメージして描きました」という一言も印象に残った。添付した「この歌は」4号の絵にそれが見事に出ている。山羽春季画伯の絵を見ていると音楽がどこからともなく聞こえてくる。正に銀盤で踊るフィギャースケーターの姿そのものである。
日本舞踊もスケッチすると話した。本日展示の絵に花が添えられていますねと尋ねたら、先日北陸で個展を開いたとき学んだと話してくれた。母上の猪熊佳子画伯は森の絵の画家とも呼ばれる。森の精霊の話を良くされる。画風は親子で違うと思うが、山羽春季画伯の妖精が乱舞する姿を見ていると魂レベルではお二人はつながっているのかもしれない。
「ユーチューブをよく見ます。アメリカの作家、ヘンリー・ダーガー(1892~1973)やイギリスの作家、シシリー・メアリ・バーカー(1895~1973)の絵をよく見ています」と話された。門外漢の身、馴染みのない名前だった。書き間違うといけないからと、彼女に自筆で書いてもらい帰宅してヤフーのブログで検索した。2人の作家とも今話題沸騰の作家であることを恥ずかしながら初めて知った次第である。
「アンゼルセンの童話」「不思議の国のアリス」はじめ童話は子供のころからよく読んだと話してくれた。「グリム童話など欧米の童話には妖精が出てきますね」と物知り顔に話したら、そうですねと応じてくれた。しっかりと人の目を見て話を聞き、真剣に答えてくれる姿勢に感心した。
「お父さんとお母さんの恵まれた遺伝子が1プラス1=2ではない。3にも5にも大きく成長されるに違いない。少女時代から蓄積された素養と経験が今まさに爆発してますね。」と話したら「ありがとうございます」と笑顔で受けてくれた。期待の日本画家の一人の将来が楽しみでならない。(了)
「この歌は」