フリージア
画・江嵜 健一郎
1週間前は、ちらほら咲きだったフリージアが私も忘れないでよと言わんばかりに一気に開花した。絵ごころを大いに刺激されてチューリップをバックにスケッチした。
フリージアが芽を出すのは11月と以外に早い。冬場はまるで身をかがめるようにおとなしくしている。3月に入るとエンジンがかかり爆発するように開花するからその分余計に魅力的だ。
ヤフーのブログでフリージアを調べた。英語の花言葉はinnocence(純潔)、friendshiip(友情)、trust(
信頼)といずれも言葉に不足はない。全般の花言葉は「あどけなさ」、「純潔」、「親愛の情」。色によって花言葉が異なる。ピンクは「多くの人に愛されてきました」とあった。
スケッチブックを膝に置いて夢中になって描いていたところ、珍しくおじさんが「きれいですなあ」とフエンスに顔を擦り付けそうにして声をかけて来た。ご婦人は気軽に声をかける。おじさんはめったにない。男はええかっこしいが多いが、こんなところにも男の本性が垣間見せると、勝手に思っている。
「日本画をかじってましてね。練習で花を描いてます。いつまで続けられるか分かりませんが」と決まり文句で相槌を打った。「ええ趣味持ってはって、よろしいなあ。わしらなんにもない」と、これもほぼ定番の答えが返ってきた。
この日は、おじさんの前に二人、おじさんが離れた後にもうひとり、皆さんご婦人だが声がかかった。花が取り持つご縁がありがたい。描いていると花が思わず身をせり出してくるように見えるから不思議である。花を描いているとつも元気をもらえる。
コロナ感染で3密を避けるようになって3年目を迎える。花はなんにも言わないけれど、思わず道行く一人のおじさんの気持ちをほころばせてくれたようだ。嬉しい一日となった。(了)