息苦しいほどの雰囲気、ピリピリしたムード…。我が職場は、異様なほど厳格である。冗談はおろか、笑顔さえもない。これにはちょっとしたワケがあるのだが、ここは私が説明するのが最もふさわしいだろう。
それは、私が〈モノマネの天才〉であることによる。社長はもちろん、部長や課長、同僚に部下、お局様や若いOL、すべての人間をモデルにしたモノマネができる。それを知っているのは、この職場の、おそらく全員だと言っていい。
というのも、もちろんアフター5にであるが、とある場所―――秘密のバーとでも言っておこう―――でそのお披露目をやっているからだ。しかしそれは、複数の人間を相手にしてはいない。相手は必ず1人だ。そして、当人以外の人間のモノマネを披露してやる。
例えば部長のマネなら、ふんぞり返って「キミねーえ」という口癖などを、課長なら鼻をいじくるしぐさなどを、ある同僚ならなぜかお尻を振りながら歩く恰好を。そして、お局様なら「ちょっとー、この話知ってる?」というもったいぶった言い回しなどを。
見る方は大喜び、そして大爆笑。当然だ。私のマネは、デフォルメしながらもその特徴をほぼそっくりに再現しているのだから。中にはほとんど笑い死にするのではないか、というのさえいるくらいだ。
大笑いしたあとは、皆スッキリした顔で帰っていく。そしてそれはその時だけの話。職場では、周りの人間すべてを見ては、私のモノマネを思い出すので、内心おかしくてたまらないらしい。ただ、それをおくびに出すわけにはいかない。出せば、社長を含め、皆のことを笑っていることがバレてしまう。
そんなこんなで、私の職場は厳格そのもの。冗談なり、少しでも笑いが出れば、たちまち堰が切れたようになってしまうことは、全員が全員、それぞれに知っているのだ。
もう一つ、私自身が不機嫌な顔をしているせいもある。だってそうでしょう。私以外はすべて大笑いできるのに、私だけは、大笑いできるほどのモノマネを見ることができないのですから。とは言っても、全員がそれぞれに笑いを必死でこらえているという、この職場全体の秘密を知っているのは、私だけなんですけどね。それが唯一の楽しみってとこですか。
Copyright(c) shinob_2005
それは、私が〈モノマネの天才〉であることによる。社長はもちろん、部長や課長、同僚に部下、お局様や若いOL、すべての人間をモデルにしたモノマネができる。それを知っているのは、この職場の、おそらく全員だと言っていい。
というのも、もちろんアフター5にであるが、とある場所―――秘密のバーとでも言っておこう―――でそのお披露目をやっているからだ。しかしそれは、複数の人間を相手にしてはいない。相手は必ず1人だ。そして、当人以外の人間のモノマネを披露してやる。
例えば部長のマネなら、ふんぞり返って「キミねーえ」という口癖などを、課長なら鼻をいじくるしぐさなどを、ある同僚ならなぜかお尻を振りながら歩く恰好を。そして、お局様なら「ちょっとー、この話知ってる?」というもったいぶった言い回しなどを。
見る方は大喜び、そして大爆笑。当然だ。私のマネは、デフォルメしながらもその特徴をほぼそっくりに再現しているのだから。中にはほとんど笑い死にするのではないか、というのさえいるくらいだ。
大笑いしたあとは、皆スッキリした顔で帰っていく。そしてそれはその時だけの話。職場では、周りの人間すべてを見ては、私のモノマネを思い出すので、内心おかしくてたまらないらしい。ただ、それをおくびに出すわけにはいかない。出せば、社長を含め、皆のことを笑っていることがバレてしまう。
そんなこんなで、私の職場は厳格そのもの。冗談なり、少しでも笑いが出れば、たちまち堰が切れたようになってしまうことは、全員が全員、それぞれに知っているのだ。
もう一つ、私自身が不機嫌な顔をしているせいもある。だってそうでしょう。私以外はすべて大笑いできるのに、私だけは、大笑いできるほどのモノマネを見ることができないのですから。とは言っても、全員がそれぞれに笑いを必死でこらえているという、この職場全体の秘密を知っているのは、私だけなんですけどね。それが唯一の楽しみってとこですか。
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