思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

見田宗介・竹田青嗣らの東大公開シンポの感想ー古林治

2008-11-17 | 日記
以下は、見田宗介さんの主催した公開シンポ(東大本郷)に出席した古林治さん(白樺教育館・副館長)の「白樺ML」メールです。


古林です。

昨日、竹田青嗣さんがパネリストの一人として参加する公開シンポジウム『軸の時代 l/軸の時代 ll ‐いかに未来を構想しうるか?‐』に参加してきました。
見田宗介さんが、未来を構想するために人間の歴史の中に現代をどのように位置づけるか、を提示し、各パネリストがその提示された考えに触発されて持論を展開するというものです。(ちなみに、見田さんの言う軸の時代llとは現代のことで、思想の課題
としては世界の「有限性」という真理を引受ける思想の枠組みと、社会のシステムを
構築することにある、ということです。)

今日は、そのご報告です。少し長くなるかもしれません。
(興味のある方は以下をお読みください。詳しくは次回の民知の会で。
 参考までに竹田青嗣さんのレジュメのみ添付します。パネリスト全員のレジュメが
 欲しい方は別途請求ください。直接PDFをお送りします。)


この公開シンポジウムは東大大学院の多分野交流演習の一環として行われるもので、当然ながら場所は東大でその関係者が参加者となります。多分、私のような一般人はほとんどいなかったろうと思います。30分前に本郷キャンパス法文2号館文学部1番大教室(200人程度?)に到着。でも半分はもう埋まってました。始まったときには立ち見もいて、この教室とは別にビデオカメラで別教室にも映し出されていました。別室も満杯!!

プログラムは以下の通り.
15:00 . 開会挨拶 立花政夫(東京大学文学部長)
15:05-16:05 基調報告 見田宗介(社会学/東京大学名誉教授)
16:15-18:30 全体討議
 (パネリスト) 加藤典洋(文芸評論家/早稲田大学)
 田口ランディ(作家)
 竹田青嗣(哲学/早稲田大学)
島薗進(宗教学/東京大学)
 (司会) 竹内整一(倫理学/東京大学)
18:30 閉会挨拶熊野純彦(「死生学」サブ・リーダー)


参加者の多くが(多分)専門家であったからかもしれません。さまざまな分野の人たちが
ざっくばらんに自身の意見を表明したゆえに、シンポジウム自体は大変好評だったよう
です。終了後、面白かったねぇ、という声がアチコチから聞こえました。
ただし、私には今一に思えました。

理由の一つは、基調報告の見田さんの講演が長引き、内容としては中途半端になり、その結果、各パネリストの講演時間も15‐20分と短くなってしまったことによります。
三田さんは3時間程度の講義が必要な内容を延々最初からはじめるものですから、1時間で半分も終らず、肝腎の部分は端折ることに。
話としては面白いんですけどねえ・・・・(高圧的な雰囲気はまったくなく、おそろしく博学で具体例を次から次へと出しながら早口で説明するのです。時に鋭さを伴いながら。
これなら学生たちから人気があるのも頷けます。)

もう一つの理由、こっちはかなり本質的な問題です。竹田青嗣さんを除くと各パネリストの思考の基盤が脆弱な故に、論自体に魅力、深さがありません。
特に加藤さんと島薗さんの思考の基盤はグラグラ。だから論が濁ってくるのです。
たとえば、『私利私欲と公共性の二元対立』(どっかで聞いたなあ、笑)などと言ってしまう加藤さん。【私】=【私利私欲】ではありません。意味と価値の上に生きる人間存在
(欲望存在)をどっかに置き忘れてしまってるように思います。(加藤さんは竹田青嗣さんに近い人のはずなのに・・・・)

島薗さんも同様です。基盤がない故に、『公共哲学や応用倫理、あるいは死生学の具体的な諸問題に即してこつこつと作業を積み重ねていく必要があるだろう。』(レジュメ参照)ということになるのでしょう。

それに比べると見田さんはずーっとまともです。ときどきちょいグラという程度で、え?というところもあるけれど、ところどころ鋭い論点が出てきたりします。
たとえば、こんな指摘もしていました。
『多くの人から批判されるだろうけれど、私は自由と平等と言ったとき、自由という理念を上位におかないとまずいと思ってます。平等を最初に持ってくると社会そのものの魅力が失せてしまうからです。』

田口さんは作家だけあって変な思想に染まっていない分、感覚的に鋭い指摘もしていました。

最後に竹田青嗣さんの話。
『近代社会の原理については、極めて有効なものと考えているが、軸の時代llでは資本主義の正当性を極めることが大事になる。2050年には(哲学的に言えば)世界は崩壊する。
今のままで行けば、財の奪い合いが始まり、最終的には核戦争が起こる。でもこれを避けることはできる。あなた方若い人たちが資本主義の正当性について明らかにすることだ。頑張って欲しい。欧米のものを追いかけるのではなく、自分で考えて欲しい。』
短い時間の説明なので、消化不良状態。実のところ、もっと話を聞きたいと思いました。

参加者は満足していたようですが、私としてはようやく対話的討論が始まる糸口が見えたところで終っているように感じました。
でも、これ以上突っ込むと困っちゃう人が出るかもね。それが【学】の限界かも、という気もしなくはありません。

以上でした。

古林治
コメント
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