思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

「government」が「政治」!?いつまで続く「意図的」?な誤訳

2008-11-09 | 日記
オバマ氏は、
リンカーンの演説(・・・and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.)から「government of the people, by the people, for the people」を引用しましたが、これをNHKでは、あいかわらず「人民の人民による人民のための【政治】」と訳していました。

従来、日本の教科者も官府もみな、governmentを「政治」と訳してきましたが、これは明らかな誤訳です。「政治」は、言うまでもなくpoliticsで、governmentは、政府(行政府)を指します。

どうしてこのような初歩的な誤訳がいつまでも続くのか?

リンカーンは、大統領として演説したのです。大統領とは、立法府ではなく行政府のトップです。民主主義の下では「政府」とは、主権者である人民のものであり、人民のために人民によってつくられるのだ、そういう「政府」を地上からなくしてはならないー彼は、人民主権による民主主義国の行政府トップとしてそのように「政府」を規定したのです。

that government of the people(人々の政府)、それは、, by the people, for the people(人々により、人々のために)、という読みが文脈上一番ふつうで「正しい」読みでしょう。(なお、文章全体を「人々を統治する政府」と読むこともできますが、たとえそう読んだとしても、主権者が人民である限り、人民が人民自身を統治するというのは、民主主義の原則であり、意味内容は同じです。)

少し細かい話になりましたが、

上記のような内容をもつリンカーンの言葉を、【政治】と訳してしまうと、彼の思想は焦点を結ばず、意味が拡散してしまうのです。これは酷い誤訳だと言わざるをえません。
【政治】という「広い言葉」を用いると、「主権者の意思に従い民主主義の政治を実現するために働くのが政府なのだ」という意味(=政府というものの存在規定)があいまいになってしまいますが、これは文部省官僚や文教族の思惑による意図的な誤訳なのでしょうか?

もしそうならば、「犯罪」ですよ。


武田康弘
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする