思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

「オウム」と「天皇現人神」との共通性

2012-01-01 | 恋知(哲学)


年明けの今日、元旦に、
「オウム真理教元幹部平田信容疑者(46)が16年以上にわたる逃亡の末、警視庁丸の内署に出頭して逮捕された」
というニュースが流れました。

そこで、『オウム真理教』の事件をわたしたち日本人の問題として真摯に受け止め、哲学的に普遍化して書いて見ます。


生きている人間を「神」とするイデオロギーは恐ろしい結果を招来します。
生身の人間を「絶対者」とする宗教は、悪=残酷を正当化し、それに反する者の排除を当然とする想念を生みます。

ナチスドイツによるユダヤ人の大量殺戮をはるかに上回る、中国人を中心としたアジア人の殺戮(はたまた沖縄では自国人までも殺害)を可能としたのが、「天皇陛下のため=国のため」という思想であったことは、誰もが知る歴史的事実です。本も多く出ていますが、NHKなどのTVで戦争体験者が語る生の声は、戦前の日本でいかに徹底した思想教育=天皇陛下万歳!が行われていたかを明らかにしています。道徳とは、天皇=生きた「神」を敬うことを中心とした「上下倫理」であり、それに反する思想は、赤=非国民=国賊=売国奴だというイデオロギーが支配していたわが日本。その中で石橋湛山のように非戦・反戦の主張を貫いた反骨の言論人が存在したことは奇跡的・感動的ですが、彼のようないくつかの例外を除き、大多数の日本人は、軍隊を皇軍(天皇の軍隊)と呼び、天皇という神がいる日本は神国であるという靖国思想(『靖国神社』が今日に至るも流布している思想=天皇教)に支配されていたわけです。

人類史的には古代専制国家時代の宗教思想であった「生きている人間を神として崇める」という遅れた思想がわが国では近代(明治時代)になって現れ、天皇神格化が起きたわけですが、それにより有無を言わせぬ急速な近代化=欧米化に成功したのは周知の事実です。このような禁じ手(天皇現人神という思想教育)により進められた近代化=欧米化は、日本人の考え方・生き方に大きな負債を残してしまいました。意味論なき事実学、何のためにを問わない根性主義、生きる意味を考えない受験主義の勉学、金・物・地位・肩書に囚われる生、外なる価値に支配され、内的世界の希薄な人生。テレビで毎日そうした価値意識を宣伝(洗脳)する現実。

明治政府がつくった「天皇教=靖国思想」が戦後の民主化で崩壊した後、「一人の人間としていかに生きるか」という哲学的思考のないわが国は、精神空白となりました。思想なき知、惰性のみで動く日々という不毛な精神風土が生まれたのです。生きるとは、外なる価値を追うことであり、「存在の魅力」ではなく「知歴財の所有」が価値であるという見方が支配的となりました。これでは人間としての幸福は不可能です。わたしの言う昆虫社会です。

そこに登場したのが、オウム真理教です。バブル期の狂乱の中で、生の意味と価値の空白を感じる若者は、日本が奇跡の欧米化を成し遂げた「禁じ手」(生きている人間の神格化)と同じ構造をもつ新宗教に救いを求めたのです。

生きる意味を考える習慣を持たない人、
子ども時代から順を踏んで実存的思考と公共的思考を育むことに無関心な教育、
こういう精神風土の中では、自ら生の意味と価値を見出すことができませんので、困った時には誰かに「答え」を出したもらうほかなくなります。安心できる権威者を見つけそれに依拠するほかなくなります。自分の心身を座標軸とすることに失敗しているので、権威者に従うほかないのです。

受験勉強の最優秀者がオウムに多数入信していた事実は、上記のような意味での精神空白を如実に示していますが、この問題は多くの日本人にとって「他人事」ではないはずです。生きている人間を神とするイデオロギー(オウム教や明治の天皇主義)も、「システムがあって個人がいない」(戦前から続く今の日本の現実、その象徴が現代の天皇制)という不毛も、ともに克服しなければならない事態です。

オウム関係者を死刑にしてもその問題は解決しません。
われわれ一人ひとりが自由と責任をもつ個人として生きる、悦びを広げつつ、豊かな人間味をもって生きる。私の人生は私が創造する。そのためには、自らを座標軸とする生=恋知としての哲学する生が必要だ、それがわたしの考えです。

2012年の年明けにあたり再確認のブログとなりましたが、読者のみなさまが充実した一年を過ごされることを希念したします。今年もぜひ共に!


1月1日  武田康弘
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2012年 迎春

2012-01-01 | その他
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