思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

「カルメン」の革命―サイモン・ラトル、恐るべし。

2012-08-23 | 趣味

今日(8月22日)、HMVで先行予約しておいた最新録音のビゼー『カルメン』(CD2枚組・EU輸入盤)全曲が届きました。イギリス人のラトルがベルリンフィルを用いてフランス人が一番敬愛するビゼーの代表作『カルメン』を演奏!なんとも珍妙な取り合わせ。下手物の『カルメン』かな、と興味半分で購入しました。

今日は定休日。メールやコメントへの返信などをしながら聞き始めましたが、最初は、「ずいぶん大人しいカルメンだな、やはりベルリンフィルではフランス音楽は無理だよな」と思いつつ、そのまま流していました。

暫くして、あれっ、これは、全く新しい解釈によるラトル版『カルメン』なのだな、じっくりと落ち着いて音楽の内容を聴き取ることができる。プリマドンナのためのカルメンではないし、歌手のためのカルメンでさえない。かつての名盤、カラスとプレートルの華やかで情熱的で湧き立つようなオペラではなく、明瞭な主張をもつ音楽劇で、時代に挑戦した天才ビゼーのイデーに焦点をあてた革新的な演奏かもしれないという気がしてきました。

さらに聴き進むと、これはとんでもない『カルメン』で、革命だな、と確信するようになりました。全体は有機的に一体で、2時間30分の物語は、主人公のカルメンのためにあるのではなく、普遍的な「人間の物語」になっているのです。うーーん、やはりラトルは凄い!と感心しながら聴き進めましたが、時間がないので一枚目で終わりとしました。

 夜遅くなり、再び聴きましたが、2枚目はさらに素晴らしく、もう完全に虜になりました。終曲の4幕を聴きながら、これは、「人間とは何か」を追求した音楽による「哲学物語」のようだ。しかも、哲学書のような晦渋とは無縁で、分かりやすく面白い。ラトルの明確な理念は、ベルリンフィルの名技もあり、実にスムースに気持ち良く展開し、何度も痺れるような快感におそわれます。演奏と同質のクリアで美しい録音も特筆ものです。

聴き終えての感動は、ベートーベンの交響曲にも劣りません。『カルメン』というオペラには、これほど普遍的で深いメッセージがあったのだ! 素晴らしい音楽体験をして興奮で眠れずにこれを書いています。凄い曲!凄い演奏!なかなか眠れそうにありません。

武田康弘

 

コメント
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