思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

安倍政権を支える自民党右派の「国体思想」とは、人権と民主制を壊す「戦前思想」です。

2014-06-24 | 社会思想

 

 国体思想とは、明治政府がつくった「近代天皇制」のイデオロギーのことですが、それは、従来の神道の教義を政府の力で変えた「政府神道=靖国思想」を基盤とします。皇室は神の系譜であり、天皇は現人神とする新宗教を全国民に徹底させ、その上で、「立憲的政治」を行うというものでした。

 靖国思想による政府作成の宗教と政治を一つにした「政教一致」ですが、この宗教は、仏教やキリスト教などの個人救済というレベルの宗教(創唱宗教)ではなく、政府権力を用いて全国民に強制するという宗教(国家宗教)で、それを基盤として近代社会の現実政治を行うというとても奇妙な思想でした。

 この思想と実践は、壊滅的敗北=無条件降伏という無残な結果を招いて歴史的に終焉しましたが、自由民権運動を弾圧することで明治の半ばに固まった天皇制保守主義は、個々人の対等性に基づく自由精神=シチズンシップの育成を阻害してきた為に、現代に至るも市民を主権者とする民主制が極めて不十分です。

 天皇現人神という「禁じ手」を用いて世界に例を見ない急速な近代化を成した日本は、その後遺症≒副作用で、主権在民(主権者の一般意思)に基づく健全な政治がつくれずに、未だに国家主義的発想で政治を行っています。

 戦前思想の根本的な反省=捉え返しの努力が足りないために、自民党を中心とした右派(国権派で戦前の支配階級の子孫)による戦前思想の復活(紀元節による建国記念日の制定、元号の法制化、国旗、国歌法の制定、社会契約論に基づく現行憲法の廃棄=天皇を元首とする新憲法案等に象徴される)が着々と進み、いまは、民主制とセットの人権思想までもが攻撃の対象となっています。 「欧米が生んだ人権思想は『個人』を中心とする闘争の論理であり、家族と共同体を破壊する悪である。日本人は人権という言葉に怯えずに、日本の常識に 戻るべきだ。」と主張する思想家(八木秀次 麗澤大学教授)が政府の教育改革の中心者となっています。国体思想は少し意匠を変えただけで何時の間にか復活してしまいました。

 個人の尊重ー個人の思想及び良心の自由に基づく民主政治をつくり、民主的倫理による人生を歩もうとする市民は、明治の保守主義者=国権派の政治家がつくった国体主義(個人である前に日本人であることを自覚して皇室を敬愛しなければならない)というとっくに歴史の審判が下った思想を葬らなければなりません。民主制と国体思想とは二律背反です。

 

武田康弘

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