ADとは、ラテン語で、アンノドミニ(Anno Domini)の略です。「主(イエス・キリスト)の年に」という、キリスト紀元と言う意味ですが、このキリスト紀元という暦は、10世紀ころから欧州で使われはじめ、15世紀以降に一般化したものです。なお、キリストの誕生は紀元前4年ないし5年ころと推定されますから、生誕年とは一致しません。
19世紀以降は、キリスト紀元ではなく、世界暦にするために、CE(Common Era=「共通紀元」)に変える動きが広まっています。紀元前は、Before Common Era(BCE)。
もともと、西暦と呼ばれる現在使用されている暦の基本はユリウス暦で、これは、BCE(紀元前)45年にローマ共和国のユリウス・カエサルが制定した「4年に一度閏年(うるうどし)を置く太陽暦」ですから、キリスト教とはまったく関係ありません。
ただし、1年を365、25日(365日と四分の一日)としていますので、より正確な1年=約365.2422日とはわすかなズレが出ます(1年間で11分強)。それをユリウスによる制定から1600年ほど経った1582年に修正し、400年間に100回の閏年を97回に減らしましたが、この「修正ユリウス暦」を「グレゴリオ暦」とまったく別の名前に変えました。
グレゴリオというローマ教皇の名によって誤差修正を行い、ユリウス暦をキリスト教会の暦であるかのよう見せるために名称を変えたのです。ユリウス暦はキリスト教とは無関係(キリスト生誕前)でしたが、ユリウス暦の修正とは言わずに、グレゴリオ暦という異なる名称にしたのは、ローマカトリック教会の詐術なのです。そういう事情で、現在の暦はグレゴリオ暦と呼ばれているのです。
なお、1年を12カ月に分けて365日とする太陽暦(一カ月を30日として最後の5日間は特別の祝日とした)は、BCE(紀元前)4000年以上の昔からエジプトで用いられていたもので、エジプト暦と呼ばれています。
火星2018年1月28日
白樺教育館21㎝反射望遠鏡で武田撮影
武田康弘