わたしの一番好きなピアノ曲は、ベートーヴェンの「ディアベッリの主題による変奏曲」です。
50分を超える曲ですが、これを聴いていると、耳も身体も心も頭も大満足で、嬉しさが溢れます。
ディアベリに開眼したのは、ちょうど19年前の2000年秋です。
それまでの体験、大昔(笑)のLP、バックハウスのものは少しも面白くなく、リヒテルのライブ演奏(CD)もピンと来なくて、ディアベッリってこんなもの?と思っていましたが、
それが2000年の秋、ポリーニの新譜を聴いて、ハマったのです。(クリック)いや~~なんて面白いのだろう!
その後で、ルイスの豪快で動的でかつ濃やかな名演をCDを聴き、ますます好きになり、ついに今月1日、銀座王子ホールで超絶のライブを聴き、もう言葉もない。CDの名演をより濃やかに、かつスケールを大きくし、強靭にした演奏で、圧倒的なピアニズムに呆然! これは、ルイスが小学生の頃、学校から借りてきたLP=ベートーヴェンの交響曲4番の出だしの部分をお母さんに聞かせ、「どお、いいでしょ。」と言い、お母さんの返事が通り一遍なので、「違うよ、カッコいいんだってば!」と言った、そのエピソードを想い起こさせる演奏です。いつまでも少年の純粋さをもつルイスの外連味(けれんみ)のないピアノは、ベートーヴェンの強靭な市民精神そのものです。エネルギーが充填され、元気と勇気が湧いてくる!
それに対して、昨年春、所沢ミューズでバッハのパルティータ全曲(なんと一回で6曲全部)を聴いて仰天した天才・コンスタンチン・リフシッツが、一昨年の日本公演で弾いたディアベッリは、まったく異なる演奏で、ベートーヴェンの精神の宇宙を現わす名演。深い奥行きで、豊かな感情が立体化した余裕の演奏で、まさに天才のなせる業。
3つのディアベッリは、三者三様で、全然似たところがない。みなにお礼を言おう。静的で構造がよく分かるのはポリーニ、深々とした豊かな精神性はリフシッツ、強靭でパワフルなのはルイスでドキドキする。
来年は、ベートーヴェンの生誕250年!!(祝祝祝) ベートーヴェンはほんとに素晴らしい。評する言葉もない。「わたしの音楽の意味を見抜き得た者は、どのような人生の悲惨からも免れるだろう」「わたしの音楽の啓示は、あらゆる哲学を上回る」ーーこの自負がたまらない~~~(笑・ホントウ)。いや、音楽そのものが圧倒的に見事なのですが(念のため)。
今月1日、ポール・ルイスの超絶のディアベッリの演奏会の後で、ルイスと談笑するわたし(銀座王子ホールで)
ポリーニ ルイス リフシッツ